№17 遊園地にいこう
でいと。
むすくれる康治の左腕にホラン、右腕に莉子そして、背中を押すのがシャロット。
でぃすいず連行である。
「どこに連れて行くんだよ」
引きずられながら、彼は言う。
「ずっと引きこもりばっかして、そんなんだからネクラなのよ」
莉子は康治へ顔を近づける。
「ネクラじゃない、ヲタク」
彼はそっぽを向いて、わずかばかりのプライドを見せた。
「一緒じゃ!」
「まあまあ」
2人を宥めるホラン。
「ゆうえんちという遊び場に行くんだぞ」
シャロットは莉子から聞かされたデートの場所を伝える。
「遊園地?なんで?」
「でえとだ。でえとだぞ」
シャロットは繰り返す。
ズルズル。
女子たちに引きずられながら、康治は渋い顔をした。
(俺、絶叫系苦手なんだよな・・・って、何この状況?)
いまだに困惑が解けない康治であった。
沖福アップルランドは県下唯一の遊園地である。
アトラクションの多さはさることながら、フォトスポットの恋人たちの丘でツーショット写真を撮ると永遠に結ばれるという伝説があった。
最もそれは遊園地が仕掛けた集客の用の策だったのだが。
「デートだっ、デートっ!」と莉子。
「おーっ」右手をあげるホラン。
「でいと」慣れない言葉を言うシャロット。
「はあ」思わず溜息をつく康治。
「さてと」莉子は遊園地のパンフを広げ、マップを見る。
「・・・あのさ」
康治がおずおずと尋ねる。
「はい」
3人は同時に言うと、一斉に彼を見る。
美少女たちの注目に、彼は思わず固まりそうになるのを堪え、
「なんで俺なの」
「好きだから」(莉子)
「好きです」(ホラン)
「好き」(シャロット)
「だから理由を・・・」
「康治!愛に理由などいるのか?」
シャロットは真っすぐな瞳で彼を見る。
「おおう」
莉子とホランは感心する。
「・・・・・・」
「まっ、せっかく可愛い女の子が言っているんだからさっ!乗らない手はないでしょ」
莉子はウィンクした。
「さっ、いくぞ」
シャロットは背中を押す。
「いきましょう!」
ホランは手を引く。
「という訳で、まずはこれね」
莉子はコーヒーカップを指さす。
(これくらいなら)
康治は頷いた。
「きゃはははははははっ!」
シャロットがハイテンションとなり、激しくハンドルを回転させる。
コーヒーカップが恐るべきスピードで回りだす。
「うー!」
必死に耐える康治。
「ちょっ、シャロットさん!」
ホランは遠心力で飛ばされそうになるのを必死でバーに掴まる。
「シャロット緩めて・・・強すぎるっ!」
莉子の三半規管がぐるぐるしだした。
「げろげろげろ~」
クリープにも似た3人の白い吐瀉物が放物線を描いた。
おひさ~のげろげろ~。