№16 康治を確保せよ
確保っ!
GW・・・若人たちが心躍らせる黄金週間。
初々しい恋人たちはデートを計画実行へと移す、心トキメク黄金週間。
・・・も、我等が彼女たちは康治と何の進展もないまま最終日を迎えた。
(このままでは・・・)
業を煮やした莉子により、本日康治捕獲作戦が遂行されたのであった。
康治の自宅前で張り込みを開始する3人。
パーカーのフードを目深に被り、ホランはアンパンをかじる。
「出てきませんね~」
「奴め。今日も家に篭るつもりか」
莉子はスナックゴールドをかじると、砂糖がぽろぽろとこぼれる。
「おっとっと・・・シャロット、動きはある?」
彼女はアイフォンから電話をかける。
隣の家の屋根から、二階の康治の部屋をのぞくシャロットは、アップルウォッチ(鏑木父から借りパク)を口元に近づける。
「フガ、フガ、フガ~」
「あんた、銀チョコ食べてしまいなさいよ」
莉子がツッコむ。
「ふぁふぁった(分かった)」
ごっくん。
喉元を通る音が莉子に聞える。
「こちら、シャロット動きはなし・・・さっきからずっと熱心に何か見ている」
「きっと魔法少女のアニメね・・・どうせ、何度もヘビロテしてるんでしょ」
莉子は苦々し気に呟いた。
「どうしましよう」
ちらり、ホランは時計を見る。
やがて、午前9時を過ぎようとしていた。
「う~ん」
莉子は思案に耽る。
「おい、動きがあったぞ」
シャロットの声に皆の緊張が走る。
「じゃ、シャロット。康治の動きの報告をお願い」
「ラジャ・・・えーっと、寝台の方に行って、ごそごそと・・・紙をとりだしたぞ・・・なんか凛々しい顔してるな、康治のやつ」
「やっべ、自主規制のヤツだ!康治の右手が動く前に確保してっ!このままじゃ、BANBANBANされるわよっ!」
「強行突破か?」
「オフコース」
「らじゃ!」
シャロットは屋根を駆け跳んだ。
とっておきのDVDをセットすると康治は布団にもぐり、顔をだしテレビ画面を凝視しスタンバイを開始する。
(・・・さーてと)
布団の中でズボンを脱ごうとした瞬間、ベランダで物音がした。
「何事っ!」
ガラガラガラっ。
窓が開かれる。
「なっ!」
彼の目の前には仁王立ちをするシャロット。
「なっ、なんなんなのーっ!」
「確保だっ!康治。」
こうして、康治の至福のひとときは打ち破られたのだった。
連行っ!