第十話 「吾輩はアリクイではない、アルマジロである」
吾輩はアリクイではない、アルマジロである。
何故、このような回りくどい言い方をするのかというと、「吾輩はアルマジロである」としてしまったならば、まるっきりパクリだと批判されてしまうからである。
故に「吾輩はアリクイではない」という緩衝材を挟むことによって、その批判を回避しようというわけである。
自分で言うのもなんだが、アルマジロにしては賢い頭を持っていると自負している。
普通のアルマジロは盗作による世間の批判など気にはしない。
特に、ムツオビアルマジロの連中なんかはそうだろう。
アイツらは基本何も考えていないからな。
人間からは大人しくてペットにしやすいとチヤホヤされているが、それは誤解だ。
ただただ、ぼーっとしているだけだ。
だから、その証拠にアイツらはたった五〇センチの壁も越えることができないし、他の連中が寝ているのにも関わらず昼間でも動きまわってしまうのだ。
多分「気がついたら昼間になっていた!」という感じなのであろう。
まったく、名前に同じアルマジロを背負っているだけでも恥ずかしい。
それに第一、アイツらは丸くならないじゃないか。
まあ、それはアイツらに限ったことではないが。
一つ、知らない人間が多いようだから言っておくが、全てのアルマジロが丸くなるわけではない。
今「えっ、嘘」と思った方は、もう一度アルマジロ初等教育からやり直しなさい。
アルマジロのアの字からルの字まで、ある程度教えてくれますから。
もっと専門的に勉強したい方は、大学にでも進学して学んで下さい。
話が逸れたが、つまり私が言いたいのは、アルマジロと名乗っていいのはしっかりと丸くなることができる、私たち“ミツオビアルマジロ”とマタコミツオビアルマジロだけではなかろうか、ということだ。
他の奴らは、せいぜいアルマジロもどき、いや、何か堅い奴、とでも呼べばいいのではなかろうか。
私はそう思う。
だが、どの世界にも、勿論、アルマジロ世界にも例外はある。
オオアルマジロ。
アイツらだけは、例外だ。
アイツらだけは、アルマジロを名乗ることを許可してもいいと思う。
なんせ、大きい奴で一メートルになる奴もいると聞く。
体重は約二〇キロ。
それと、もう一つ驚異的なのが爪の長さだ。
第三の指の爪は、長い奴で二〇センチにもなるらしい。
これは、もうアルマジロを名乗ることを認めなければ嘘ですわ。
「花は桜木、アルマジロはオオアルマジロ」と、ことわざにもあるくらいですから、オオアルマジロは別格の存在として扱っても、異論はないはず。
皆さんもそう思うでしょ?
と、聞くと必ずこう聞き返す人がいるのですよ。
「いや、そんなことわざ聞いたことがないよ」と。
それは、あなたの勉強不足だと、私は声を大にして言いたい。
きちんと『広辞苑』にも載っています。
最早、一般常識ですよ。
知らなかった方は、これを機に覚えて頂きたい。
あ、一つ確認しておきますけど、このことわざが載っているのは、全アルマジロ連盟が刊行しているものだけですよ。
念のため、悪しからず。
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さて、長くなってしまったが前書きはこれくらいにして、本題の「アルマジロ社会のあるべき未来の姿」について語らせてもらおう。
人間社会同様、現在アルマジロ社会も様々な問題を抱えている。
その一つ一つにスポットを当てて、私が思う解決法、そして未来のあり方について意見を述べていくのである。
まずは、アルマジロ社会が抱える第一の問題、「アルマジロの全部が全部、丸くなると思われ過ぎている」問題についてだが……
え、もう紙面がない?
――第一回「アルマジロ社会のあるべき未来の姿」
(続きは『マジマジアルマジロ』次号で)