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私の物語はこれからですが!?

作者: ラバイア

気づいたら巻き込まれ異世界トリップしてました。


魔王に脅かされてる世界を救う為、異世界から勇者を召喚するというスタンダードなセオリーのもと、その勇者と一緒に巻き込まれて召喚されました。


さらにいうと紆余曲折、山あり谷あり色々とありましたが魔王も無事に討伐完了して勇者は異世界で運命の人と深い絆で結ばれて幸せにくらしましたとさ。






「これで終わりってそんな事許さなーい!!!」




少女が1人、森の中の静かな湖畔のほとりで叫んでいた。



「このストーリーは終わってないの!!てか絵本じゃないから終わりがあるわけないの!私の人生はまだまだ続くのよ?!」



少女の手には勇者の英雄譚が描かれている絵本があった。

一息つくと本を閉じて表紙に視線を落とす。

表紙には勇者と仲間の絵が描かれている。勇者、王子、騎士、聖女、そして黒づくめの魔法使いの姿だ。



そしてこの絵本を手に取っている黒髪の少女こそが、絵本の表紙に描かれている魔法使いであった。



少女はひときわ大きなため息をつくと両手足を投げ出して草むらに寝そべる。


「はぁ…私だって幸せになりたい………というかドキドキしたい、トキメキが欲しい。」


召喚された時はそれはびっくりしたなんて生半可な表現じゃなくいつになったら夢から覚めるのかなんて現実逃避して、初めて魔物に襲われた時になってやっと現実だと認識する事ができた。



恐怖で声さえ出せずにいると、勇者がその身を挺してかばってくれて、それからも何かある度にヒーローみたいに助けてくれるからやっぱ勇者で主人公補正めちゃめちゃきいてんなと思った。


しかも言うことが「巻き込んじゃって、しかも怖い思いさせてごめんね」ってハグされた時には惚れたと思った。



これは異世界トリップした先で素敵な人と恋に落ちるパターンかなと気持ちが少し浮き足立ちそうだが、現実は思ったより都合よくいかなかった。


何故なら。



「こんな所にいたの??探したよ?」


勇者と初めて出会った日を思い出した所で当の本人が視界に入ってきた。


「…びっくりした」


「どれだけぼーっとしてたの?本当に大丈夫?それとも何かあった?」


勇者はショートヘアの日に焼けた茶髪をさらさらとなびかせなから、愛嬌のある笑顔でこちらの様子を伺っている。


「アキラと初めてあった時の事を思い出してた」


「あー…キョーカと初めてあった日か、懐かしいね」


勇者の名前は日高アキラ。

アキラも同じようにキョーカと初めて出会った日に思いを馳せた。


しばらく2人して水面を見つめていた。



「…アキラ、何か用があって来たんでしょ?」


「あ、そうそう!はい、これ。」


綺麗な便箋に、蝋にはこの国の王家の刻印が押されている。


「ま…まさか!!」


「そのまさか、結婚式の招待状だよ。」


なんてことない風でアキラがウインクをとばしてくる。


「もう・・・そんな時期が来ちゃったんだね」


しみじみとボヤいて、聞かずともわかるこの結婚式の主役のアキラをもう一度見た。


「そんなにまじまじと見ないでくれる?私もビックリしてるよ!」


スレンダーな体躯に、身軽な動きが得意なアキラの為に誂えた鎧。腰には細身の剣を携えている。

男性にしては細身に見えるかもしれない、だがそれであっているのだ。



「まさか私が王子と結婚する事になるなんてさー!」


実は勇者ことアキラは女性だった。


「まさか自分が恋愛できるなんて思わなかったし、こうやって結婚する事になるなんて思わなかった!あっはっはっはっ!!」


大変豪快で男気のあるアキラはそんじょそこらの男性より本当に格好よかった。


女じゃなかったら惚れてたなんてよく思った。


「ねぇ〜…そんな黙って見てないで、何か喋ってよ〜」


キョーカの沈黙に耐えかねて、アキラはちょっと恥ずかしそうに頬を赤くしている。


「いや〜アキラが王子といい雰囲気なのは知ってたけど、展開早くない?旅から帰ってきて半年しか経ってないよ?」


「だよね!?早いよね??だけどさぁ…アレクの押しが強くて…なんか…嫌いじゃないし、てかむしろそりゃ好きだけど、迫られると拒めないっていうか…」


「ようは押しに負けたのね」


「うぅ」


敗北の声をあげながらアキラはどんどん顔を真っ赤にしていった。


そして根掘り葉掘り色々聞き出し、ひと時会話を楽しんだ。


「それでさ、このあとミレイの所にも招待状を持って行こうと思っててさ、一緒に来てくれない?」


「ミレイの所になら一人でもいけるでしょ?」


「いやーそれがどうにも教会が苦手で・・・その何か粗相しそうでしょ?私」


聖女であるミレイとは仲良しなのだが、何せ教会が堅苦しいことこのうえない場所である。

アキラは悪く言えば大雑把な所が多々あるので、こちらの世界に来てからのマナーを覚えるのが苦手である。以前、教会に遊びに行き大神官様に呼び止められ規律のなんたるかをお説教をされたのがこたえたらしい。


「・・・一緒に行ってもいいけど」


キョーコが一緒に行くことで別の問題が生じるわけだが、まぁいいかと楽観的に深く考えないようにした。




ーーーーーーー



「やっほー!遊びにきたよ~!」


「来る途中でお菓子も買ってきたよ」


「アキラちゃん!キョーコちゃん!会えてうれしい!」


白金に輝く髪がふわりと舞い、花が綻ぶように微笑む超絶かわいい聖女様はふたりをまとめて抱きしめた。


「今度からは来る前に教えてね??二人のためにおいしいお菓子を用意したいの」


「急でごめんね、早くミレイに会いたくって」


「アキラは早く自慢したくてしょうがなかったんだよね」


「チガイマス」


そういってアキラはミレイに結婚式の招待状を手渡した。


中身を確認したミレイはそれはもう嬉しさで満ち溢れ、どこからともなく花びらが舞い落ちてくる聖女の奇跡を起こす。


「めっちゃ降ってる、花びらめっちゃ降ってる」


「だってー!嬉しくってー!!」


花びらは話が終わるまでふりやむことなく、ミレイによりまた根掘り葉掘り話を聞かれアキラは顔を真っ赤にするのだった。


「それとね、ふたりに報告があって・・・私、セルゲイと結婚するの!」


「ですよねー!知ってた!」


聖女のミレイと騎士のセルゲイが良い雰囲気なのは知っていた。

良い雰囲気通り越してもう君たち付き合ってるでしょ?と言わんばかりの雰囲気を醸し出していたので遅かれ早かれこうなることは分かっていたが、それでもつっこまずにはいられなかった。


そこからは今度はミレイが根掘り葉掘り聞かれる番になり、キョーコは胸の奥に小さな違和感を覚えていた。





「それじゃあそろそろ帰るね」


「また今度ね」


「うん!また会いましょう」


ミレイの部屋を出て、教会の玄関まで案内される。


すれ違う神官達が勇者であるアキラにキラキラとした目を向け、その隣の私に気付くとサッと目をそらし、ひそひそと話をするのだ。


「あれが・・・黒の魔法使い・・・」


彼らが言わんとしているのは「邪道な黒魔法」という意味だ。

つまりこの世界において黒魔法は危険視されている。

それを知らなかった私は異世界にやってきて少々浮かれてしまっていた。

「黒魔法かっこいいじゃん!」というそれだけで、黒魔法を習得してしまったのである。


ここまで白い眼で見られる事がわかっていたら、私だって少しは考えたと思う、多分。


後悔しても遅いわけで、もうどうにもならない。

私の存在は「黒づくめの魔法使いキョーコ」で大衆に記憶されてしまったのである。


「邪悪」で「危険」な私は本来であれば「聖なる教会」に足を踏み入れる事さえできないのだが、そこは「聖女ミレイ」のお力でなんとかしてもらった。


それでもスムーズに教会に入る事は難しく、教会に入る際には毎度、門番との戦いなのだ。


「気味が悪い・・・」


「・・・放っておいて大丈夫なのか」


「あの禍々しい色・・・」


「目を合わせると呪われるとか」


そして教会に入ってからもすれ違う神官達の態度と言ったら、それでも聖職者かと言いたくなる。


もちろんアキラには聞かせられないので、防音の魔法で外野の声はシャットアウトした。


そして教会から出たあとはアキラと別れて家に帰ってきたのだった。




魔王討伐の報酬として多額の金品をいただいている。

そしてついでに森の中に小さすぎず大きすぎないカントリーなお家を王様におねだりしたのだ。


夢にまで見たファンタジーなお家に私は胸を躍らせた。

素敵!良い!!ファンタジー!

小鳥のさえずりで目を覚まし、森を散策し木の実や薬草を集める。

たまに街に降りてきて、石畳の街を散策し買い物を楽しむ。


そして暖炉でスープを作り、ふかふかのベッドで眠るのだ。毎日。







毎日?繰り返すの?毎日?一人で???


「だから私の人生はこれからだって!!!!」



胸の奥の小さな違和感、それは孤独だ、寂しさだ。


「やだやだやだ!!!一人が好きなわけじゃない!!私だって・・・私だって・・・!」


『黒づくめの魔法使いキョーコ』の名前はもちろん街でも有名だった。

街に行っても、すれ違う人々の眼差しは冷たかった。

はっきりと悪意を向けられた事はないが、好意をむけられた事もない。


「・・・私だって・・・・欲しい」


小さな呟きの切なる願いは部屋の暗がりに溶けて消えた。

呟きを飲み込んだ部屋の隅の小さな暗がりは、まるでこれから先の自分の未来のように思えて、勢いよくベッドから飛び出し外に走り出た。


「従順なる黒き僕よ」


真っ黒な暗闇の中、少女の言霊が紡がれていく。

炎が地面を走り、陣を描き火花がぱちぱちと爆ぜる音がする。


「我が願いに答えたまえ」


幾重にも重なる文様は美しく、聖なる儀式にすら思える。


「裏切らず、欺かず、我が命尽きる時までその身を尽くせ」


願いの内容は傲慢にも聞こえるが、その声は泣いていた。


「我が願いに、応えたまえ!!!!」


魔方陣の火は大きく燃え上がり、火の蝶になり霧散した。


そして目の前には何も残らなかった。





期待する心を捨てようと思った時、耳元で囁く声がした。


「貴女のお願いを聞いてあげるのに、対価が足りません」


「!!」


振り返ると、艶美に笑う男がそこにいた。

漆黒の髪に、金色の目が怪しく光っている。

美しい指先でキョーコの頬を撫で、親指の腹で唇をなぞった。


「ですが、時間を持て余して暇でしたので、貴女の命尽きる時までこの身を尽くしましょう」


「・・・・・・あ、あの、その」


もじもじと頬を赤らめる少女は「悪魔」の目にはいつもの光景にしか映らない。誰もが「悪魔」に魅了にされるのだ。当然の反応なのである。


「私の心を読まないで」


「え?」


悪魔にはこの契約はすぐに終わりそうだなと考えていた矢先だった。


「読めるでしょ?人の心」


「・・・えぇ、もちろん」


「私の過去も覗き見ないで」


「あ、はい」


「そして今からアンタは私の恋人よ!」


「・・・はい」


「あ、やっぱりまずは出会いが大切よね……」


「出会い……?」


「そう!いきなりアンタみたいな怪しい存在が突然現れても、友人になんて紹介したらいいのかわからないのよね。」


「……ふむ、そうですね」


「使い魔ってことにしようかなって思ったんだけど、使い魔と恋愛……悪くは無いけどなんだかより自分の魔女要素が増えるのは良くない気がするわ」


「魔女要素……」


「なので、冒険者ってことにしましょ。」


「冒険者ですか……」


悪魔は目の前の少女をまじまじと見つめた。


「そう!明日街にやってきて、そこで私に一目惚れするの!それからアンタはこの街に滞在するようになって、私を口説くようになるの!いいわ!とてもいい!!」


悲痛な声で悪魔を召喚した寂しげな少女はどこにもいなかった。


「てなわけで明日からよろしくね!じゃ!」


少女は最後まで悪魔を家に迎え入れることはなく、残された悪魔は怪しげな微笑みを浮かべたまま姿を消した。
























悪魔と契約を交わした魔法使いは魔女になり、人よりも長い歳月を送ることになった。



そして傍らにはいつも悪魔が寄り添った。



長い長い年月の果て、魔女にも最後の日が近づいた。



美しく年老いた魔女はベッドに寝そべり、その片手を悪魔が優しく握りしめていた。



悪魔の美貌は召喚した時から変わることなく、温かな眼差しで魔女を見つめる。



「やっと私も逝くことが出来るのね」


「……寂しいよ」


「ふふふ、悪魔と契約して本当に魔女になるなんて誤算だったわ」


「気づいた時の君の絶望した顔はなかなかよかったよ」


「こんなに長く生きるつもりなんてなかったもの」


「望めばもっと若く美しいまま生きられるよ?」


「もう十分に生きたわ。満足よ。」


悪魔の手からするりと逃げると、その手で悪魔の頬を撫でた。


「今までありがとう。貴方が来てくれて本当に嬉しかった。まさかの子供まで授かる事ができて本当に幸せだったわ、悪魔の子だけど。」


魔女は愛しい双子の我が子を思い出しくすりと笑った。


「それじゃあそろそろ本当にさよならね。私の悪魔さん……愛してるわ……」


魔女は自身の死期を悟り、静かに目を閉じた。

そして二度と開くことはなかった。





悪魔は冷たくなっていく魔女の頬を撫でた。


「初めて愛してると言ってくれたね」


魔女は最後の時まで悪魔に愛を告げなかった。

悪魔が「愛してる」と囁けば魔女は悲しげに微笑み「知ってるわ」と答えた。


そして最後に愛を呟いたかと思えば、返答も聞かずに永遠の眠りについてしまった。


魔女は悪魔が囁く愛を最後まで「偽り」と信じて疑わなかった。



それなのに悪魔の子を妊娠した時は、発狂する事なく嬉しそうに悪魔に尋ねてきた。


『 アンタと私の子って人間なの!?悪魔なの?!』


『 残念ながら悪魔だよ』


『 悪魔なのね!それもアリだわ!はやく会いたいなぁ』


悪魔の期待していた反応ではなかった。

嬉しそうに自身の腹をなですさる魔女の眼差しは愛に溢れていた。


魔女の思いつきに振り回された楽しいひと時だった。



目で愛を囁くくせに、最後まで愛を告げてくれない魔女はまさに悪魔だと思えてならなかった。



椅子から立ち上がり、魔女の瞼に唇にキスを落とし悪魔の囁きをした。



「さぁ、お目覚めの時間ですよ」



まつ毛を震わせて魔女は静かに目を開けた。



「……ちょっと、どういうこと??」


開口一番に文句を言う魔女の姿は、悪魔と出会った時の少女の姿になっていた。


少女の指先にキスをした悪魔は、今まで見せたことのない凶悪な笑みを浮かべた。



「簡単に逝けると思いましたか?」



魔女の黒髪にキスをすると、それはそれは楽しげな表情で悪魔は告げた。



「契約者の魂は僕のモノだ。ずっと一緒だよ。永遠に愛してる。」



魔女は今までに見せたことのない顔で幸せそうに微笑んだ。


悪魔との契約って魅力てきだなと思い、妄想を膨らました結果です。ここまでお付き合い頂きまして誠にありがとうございます。同じ性癖の方に思いが伝われば嬉しいです。

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