97.独白
遅くなりましたことをここで深くお詫びいたします。
美咲の質問に、俺は質問で返す。
「美咲にとっての神代光生ってどんなイメージ?」
「ええと、誰にでも優しくて、積極的に他人を守ってくれる人……?」
パッと考え付くとしたらそんなもんだろう。
実際、ネットなどでエゴサしてみても同じような情報が出てくる。街中で偶然出会い話しかけてきたファンへのサービスも、神代光生は断ったことがない。
そもそも神代光生の格好で出歩くことが滅多にないということはこの際置いておくが、握手や一緒に写真を撮る程度ならイエスマンだ。
……サインを求められたことがあるが、サイン自体存在しないため断ざるを得なかったことは例外とする。
「じゃあ、美咲にとっての俺……は聞いたから、客観的に、つまり周りから見た俺のイメージって分かるか?」
「えっと、髪を整えてない時だから、頭が良くて真面目……とかかな?」
「全然違う」
「えっ、じゃあ読書好き?」
「残念ながらハズレだ」
美咲は、まだ客観的になりきれていない。
確かに俺は頭がいいと言われる部類の成績だけど、その点数や順位などの成績を知っているのは雅人のみだった。
もう一つの読書好き、こちらは朝俺が常に本を読んでいるということを見ていればそんなイメージが付くかもしれない。だけど、そのイメージを持っているのはその他の人たちから更に一握りのみで、ほとんどの人は興味すら持っていな——かっただろう。
イメージを持つにはまず知らなければ始まらない。
名前からイメージをするみたいな人も居るけれど、基本的には名前だけ知っていてもイメージなんて持たれない。
イメージを持つのは何故か。
知り合いだから?
目立つから?
有名だから?
その通りだろう。この中のどれか一つでも当てはまっていれば、イメージは持たれる。
神代光生は、目立つし、有名だ。
なら、俺は? 日裏静哉は一体どうだ?
「俺は、つい最近までクラスメイトのほとんどに名前すら憶えられていなかった。クラスで一番早く学校に来て、一番遅く帰っていく。だから頭が良いことも本が好きなことも、ほとんど誰も知らなかった」
今はもう、麗華さんと関わるようになったから名前程度なら知られているかもしれない。
「だから、ずるいかもしれないけど、俺という人間の、日裏静哉のイメージは——無い。存在しないんだ」
「……それ、に、何が関係あるの? 例え他の人が知らなくても、お兄ちゃんが優しい人だっていう事実は変わらない、よね?」
「いや、変わる。俺は、日裏静哉は、優しくないから。例え目の前で困っている誰かがいても、手を差し伸べることは無いから」
「なんで、どうして? お兄ちゃんは、迷子の私を探し出してくれたよ?」
「それは美咲が家族だから。もし友達でも何でもない人、例えば街で小さい子が迷子になっていたとしても、俺は助けないと思う」
知り合いなら。例えば雅人なら、例えば美咲なら、例えば麗華さんなら俺も手を差し伸べるだろう。
自分で言うが、俺は自分の懐に入れた相手にはとことん甘い人間だ。
数か月前には考えられなかった今の状況。
雅人が当たり前のようにいて、一ノ瀬さんと当たり前のように会話して、麗華さんが積極的に関わろうとしてきて——麗華さんに告白された。
この状況がいつから当たり前になったのか、いや、どこから始まったのかと聞かれれば、きっかけは神代光生が麗華さんを助けたことだろう。
ナンパにしつこく絡まれていた麗華さんを、偶然聞きつけた神代光生が助けた。これが無ければ一ノ瀬さんは勿論のこと、麗華さんとなんて関わることはなかったはずだ。
片やクラスの端っこに存在する認識外のモブと、片やクラスどころか学年一の美少女の高嶺の花。改めて考えてみても関わる可能性なんて微塵も存在しなかった。
もちろん、今の状況は楽しいし、文句を付ける気なんて一切ない。
だけど、「たられば」を考えても仕方がないことだけど、もしもの可能性。
もしもの可能性だけど、もしも麗華さんのナンパに気がついたのが神代光生ではなかったら——
「もしも麗華さんのナンパに駆け付けたのが日裏静哉だったら、俺は麗華さんを助けなかった。いや、それどころか駆けつけもしなかったと思う」
「なん、で?」
心底不思議そうに、そして信じられないといった表情で美咲は呟く。
「それが俺だからだ。神代光生ではなく、日裏静哉だからだよ」
「……ない……」
「何?」
「さっきから何言ってるのか分からない! 日裏静哉とか神代光生とか! どっちもお兄ちゃんでしょ! 名前が違うだけで同一人物でしょ!? お兄ちゃんと神代光生の時で何が違うの! 美咲には分からないよ! 美咲にとってはどっちでも同じ優しいお兄ちゃんだもん……」
「ああ、美咲だったら日裏静哉も神代光生も関係なく守るし優しくする。だから美咲にはあまり違いが分からないかもしれない」
「全然分からない……」
「でも、俺にとっては違うんだ。だって、俺にとって神代光生というものは
————理想の自分だから」
最近とても忙しくて書く時間がありませんでした。防振り一気見面白かった……。
時間を捻出して書き上げましたが、最後の一文を書きたくて、第一話を書きました。オタ恋面白い……。
真面目な話、先週パソコンがフリーズして投稿できなかっただけです。はい。
評価方法変わりましたね! 皆さま、是非もう少しだけスクロールしていただいて、星五を! 星五をお押しくださいっ!!! 幼馴染ざまぁには負けてられないんすよ!!
ティナも風神雷神も新フェス限も当たらなかった私めにお恵みを……!
高評価お願いしますっ!




