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96/99

96.公園で

  カエルの合唱が聞こえてくる農道を歩き、墓の前で手を合わせる。電信柱なんて存在してなくて、月明かりのみに照らされた少し幻想的な雰囲気の中、俺は佇む。

 何を祈って良いのかも分からないまま居ると、隣に誰かが来た気配がした。見なくても分かる。美咲だ。


 思いつく事もなく、無難に平和に過ごせますようになんてことを祈ってから、今の状況こそが平和とかけ離れてるな、なんて自嘲をしてみる。


 顔を上げてみると俺より早くお参りを終えた美咲がこっちを向いて立っていた。目が合って、美咲がふっと笑うと、釣られて俺も口角が上がる。


「ねぇお兄ちゃん。少し話していかない?」


☆★☆


 ずっと墓の前にいるわけにもいかず、俺たちは最寄りの公園まで移動してきた。


「覚えてる? この場所」


「あぁ。美咲がいつも隠れてた場所だろ?」


「ここで少し、話していかない?」

 

「いいよ」

 

 美咲は母さんに怒られたり友達と喧嘩したり、嫌なことがあるといつもこの公園のブランコを一人で漕いでいた。

 今でこそお調子者のようなキャラだが、昔の美咲は、意地っ張りで気が強い癖にいざ言い争って一人になると自分の行いを反省するという、何というか生き方が下手な女の子だった。


「うん。私この場所好きだったんだぁ。一人になれるけど、最後にはお兄ちゃんが迎えに来てくれるって分かってたからね」

 

「それは……美咲がいなかったらここしか候補がなかったからな。逆にここにいなかった時は本当に焦ったけどな」

 

 一度だけ、美咲がこの公園にいない時があったのだ。

 まぁ原因は忘れたけど、俺と喧嘩したから俺に見つからない場所に行こうとして———美咲は迷子になった。

 ちょうど今と同じくらい季節だったから暗くなるのは遅かったけど、田舎には農道みたいな月明かりしかない真っ暗な場所もたくさんあるし、隠れる場所なんて無数にあった。


 最初は俺と喧嘩したんだからって無視してたんだけど、いつまで経っても帰ってこないから心配になって探しに行くことにした。


 美咲は小学生になりたてで俺もまだ小学三年生。自分の足で行ける距離は限られているとはわかっていたけど、どれだけ探しても見つからなくて途方に暮れることになった。


 最終的に美咲を見つけたのは、もう辺りが真っ暗になった後で、農道を超えた先にある小さな公園で一人ブランコを漕いでいた。


 その時の表情は泣き出す寸前のような限界で、見つけたら怒ろうとか色々考えていたのにただ一言心配したとしか出てこなかった。


 美咲は見つけてもらえた事で泣きながら俺にしがみついていた。

 俺も喧嘩してごめんと言いながらギュッと抱きしめてしばらく過ごしていた。

 

 しばらくして、道が分かる俺先導で、美咲と一緒に家まで歩いて帰ると、遅くなった俺たちを待っていたのはカンカンに起こった母さんで、俺と美咲は二人で仲良く怒られることになった。

 

「でも、それからお兄ちゃんと喧嘩してないよね?」

 

「確かに、あれから美咲は素直になったというか、いや、ほんとに喧嘩した覚えないぞ?」

 

 小さな言い争い程度はあったかもしれないけれど、俺の記憶にある限りは日を跨ぐ以上喧嘩した記憶がない。そう考えると、俺と美咲は約十年間喧嘩せずに過ごしているということになる。

 こういうのもなんだけど、どうしてだろう。

 

「元々喧嘩する原因が私のわがままみたいなことだったからね。迷子の私を探し出してくれた時にお兄ちゃんが更に大好きになったから喧嘩しなくなったんだと思うよ」

 

「……大好きとかお前よくそんな簡単に言えるな……」

 

「え? お兄ちゃんも私のこと大好きでしょ? あ! もちろん恋愛的な意味じゃないからね!」

 

「いや、それは分かってるし、お前のこともまぁ……嫌いじゃないけどさ」

 

「あははっ! お兄ちゃん照れてる!」

 

「ばッ! 照れてねぇよ!」

 

 しかしまぁ、美咲のことは家族として大事だし大好きだと思う。

 気兼ねなく相談できるし、美咲自身凄くいい子だし、彼氏ができたという話を聞かないのが不思議なくらいだ。……実際は相談する前に気がつかれてるし彼氏ができたと聞いたら相手の素性とかを調査しそうだけど。

 

「……でもね、一番の理由は多分、お兄ちゃんが優しいからだよ」

 

「……俺が優しい?」

 

「そうでしょ? 昔だとあんな遅くまで探してくれたり。最近だと勉強を教えてくれるって言ったり、服を買ってくれたりするじゃん」

 

 美咲は俺と目を合わせながら言う。

 

「それはまぁ、俺にとって唯一の妹だし、優しくなくても服くらい買ってやるよ」

 

「ううん。お兄ちゃんお姉ちゃんがいる友達は一緒に出かけることすら珍しいって言ってたし、お兄ちゃんもよく言ってるけど服って高いんだよ?」

 

「そうなのか? まぁ服は高いってのは分かるけど、小遣いじゃなくて俺が自分で稼いでるお陰で余裕があるからだろ」

 

 同年代の人よりも圧倒的に稼いでいるという自負はあるし、読書くらいしか趣味がない俺には金の使い道がほとんどない。だから周りと比べたら多くても普通程度だと……思う。

 

「そうやって認めないところは強情だね」

 

「いや、事実だしな……」

 

「じゃあこれは? 周りの人が見てみぬふりをする中女の子を不良から助けたり、仕事後に安全なところまでいつも見送ってあげたり。これは優しいんじゃないの?」

 

 確かにその行動は一般的に親切だったり優しかったりする人に当てはまるのかもしれない。だけど、そういう行動には一つの共通点があるんだ。

 

「俺がそういう行動をとるときはな、神代光生の時だけなんだよ」

 

「……どういうこと?」

いや18時56分。ぎりぎり!!!!!


こういう二人で語るシーンが書きたかった(けど上手く書けてるか分からない)

一緒に怒られたって書きたかったのに最初、泣き疲れて眠った美咲をおぶっていったと書いて消しました。


来週の話は個人的に重要な話になる予定です! 予定です!! 予定でーーーーーーす!

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