84.ノリノリになって書きすぎた。
買い物で江橋さんとばったり会ってからは特に何か事件が起きることもなく、県でも最大級の祭りの日を迎えた。
この祭りには、夏休みに入る前から江橋さんや雅人たちと行こうという約束をしていた祭りで、約束通り皆で回ることになっている。
そして現在の時刻は午後五時前。美咲と祭りに行くために準備をしているところだった。
「お兄ちゃんどう? 似合ってる?」
「おう。似合ってるぞ。だけど、どうせすぐ着替えることになるんじゃないのか?」
「ふふん。短期間でも女の子はおしゃれするもんなんだよ! だから、言われる前にちゃんと麗華さんの服装も褒めてよね!」
「そういうもんか」
「そういうもん!」
美咲はいつの間にか江橋さんと連絡先を交換していたようで、俺が言う前に今日の祭りで一緒に回る約束を取り付けていたのだ。
数日前に、メッセージで祭りをどうするかという連絡を入れたら美咲が来ることを当たり前のように言われてかなり驚いた。
まぁ、そのメッセージで美咲が参加することをお願いしようと思っていたから手間が省けたようなものなのだが。
「で、結局今からどこに向かえばいいんだ?」
「えっと、祭りの会場の近くなんだけど……この呉服屋さん分かる?」
そう言って見せられたスマートフォンに書かれていた店は、見覚えのある名前だった。まぁ、入ったことは無いのだが、場所だけは知っているという感じの店だ。
「ここなら多分分かるから行くか」
「本当!? さっすがお兄ちゃん! 頼りになるぅ!」
「ここには丁度今、俺と涼風のポスターが貼られているからな。ま、どっちにしろスマホのナビがあれば大体たどり着けるぞ」
「……ってことは貸し着物って……」
「俺がポスターをしてるってことだな……」
そう、待ち合わせにしている店は、この前の撮影で俺と涼風がポスターの写真として使われた店だった。
メッセージで話した結果、結局全員が着物を着るということになったのだが、俺も美咲も今着ることができる着物を持っていなかったし、もちろん雅人も持っていなかった。
だからせっかくだから全員で着物を借りようという話になったのだ。
撮影に使われた場所だったり、自分の写真が使われた店の場所は一応把握するようにしているため、美咲の質問に対する答えは分かるだが普通なら呉服屋の場所を覚えている人など女子でもほとんどいないだろう。
まさか自分のポスターが貼ってあるところに向かうとは思っていなかったし、俺がそういう自分の写真が使われたポスターの店を把握している理由はその近くに行かないようにするためだから、店に自分から行くというのは微妙な気分だ。
「じゃあ早く行こっ! 早くしないと祭りが始まる前に着替え終わらなくなっちゃう!」
「だな。じゃ、ぼちぼち向かうか」
「ふふん、着物女子としてモテてナンパされちゃったりして!? ねえお兄ちゃん! もし私がナンパされちゃったらどうする!?」
「……冗談でも辞めてくれ……。最近ナンパで色々あったんだ。それに、お前みたいなちんちくりんは誰も相手にしないから安心しろ」
「むむ……そのナンパであった内容も気になるけど、ちんちくりんとは失礼なっ!」
「はっ、ちんちくりんって言われたくなかったら……いや、なんでもない」
誰かのようになれと言おうと思った瞬間、パッと江橋さんと涼風が脳裏に浮かんできた。そのせいでつい言葉を止めてしまった。
すると、美咲が何やらニヤッとした顔になって言ってきた。
「言われたくなかったら何かなぁ? もしかして、誰かの姿がパッと浮かんだのかな? 麗華さん? それとも明華さんかな!? いでっ!」
「うるさい。早く行くぞ」
「ちぇー」
後ろでうるさい美咲を無視して待ち合わせ場所へと向かう。予約もしたらしいし、遅れるわけにはいかないだろう。
俺一人なら多分30分前には到着しただろうけど、美咲と一緒だからいい感じの時間にたどり着くことができるはずだ。
「お、俺たちが一番乗りか」
「そうみたい? でも、ここなら分かりやすいしすぐにみんな来るでしょ!」
「まぁな……って、言ってる傍から一人来たみたいだぞ」
奥からちらっと見えたのは、ワックスでいつもより若干キメた髪型になっている雅人の姿だった。
「おひさ、静哉。んで……お? こっちが例の妹ちゃんか! うちの姉と違って可愛いな!」
「こんにちは、お兄ちゃんの唯一の男友達さん! セクハラです!」
美咲が雅人に指を指しながら言う。周りに人がいないからふざけているのだろう。しかし、雅人の方は意外と焦っているように見える。
「ちょっ!? 褒めただけじゃん!?」
「ねっとりと嘗め回すような視線で見た後に私の胸を見て残念なものを見る視線に変えました! 訴えます!」
「いやいやいや! 見てないから! ただの自虐ネタじゃん!」
実際は美咲のことを雅人はちらっと見た程度だったが、面白そうだから乗ることにした。今日集まるメンバーは美咲だけ歳が違うため、これで美咲が打ち解けてくれれば大いに結構ということで。
「いや、今のはセクハラだな。損害賠償として屋台で一品驕るべき」
「それお前が言う!?」
「俺は美咲の兄だからな」
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな!?」
そういう意味以外に何かあるのだろうか? あれ? 美咲もうなずいているように見える。
「私は綿あめを希望します!」
「しょうがない。特別に奢ろうじゃないか」
「じゃあ俺はケバブで」
「お前には奢らねぇよ!」
「……こんにちは……?」
「あ、麗華さんこんにちは! 一ノ瀬さん初めまして!」
そんなことを言いあっていたら江橋さんと一ノ瀬さんが近くに来ていたことに気がつかなかった。
謎のやり取りをしていたせいで若干引き気味に江橋さんが話しかけてきていた。そして一ノ瀬さんも同じように話しかけてきた。
「相変わらず仲が良いね……。それで、こっちが美咲ちゃんかな? 初めまして」
「まぁな! いやぁ、静哉の妹なだけあってノリが突然だけど面白いわ!」
「ありがとうございます! 私は日裏美咲と言います! あ、名前で呼ばないでください。私に惚れられたら困るので。あ、でも名字だとお兄ちゃんを呼んだのか分からなくなったので呼ばないでください」
「俺にどうしろと!?」
名前呼びしただけで惚れるは新しい。名前で呼ばれて惚れるちょろい男は創作の中で見かけたような気もするが、呼んで惚れるは初めて聞いた。
「美咲、雅人が絡みやすくてからかいやすいのは分かるが、惚れられる心配は無いから安心しろ。雅人は……超が着くほどシスコンだ」
「……そうなのですか?」
「そうなの? 初耳!」
え? みたいな表情で江橋さんと一ノ瀬さんが雅人を見る。まぁ、そんな話を聞いたこともないし適当に言ったわけで……。
「違うからね!? 誰があんな年上ゴリラを好きになるか!」
「えっ……ということは年下が好きということですか?」
「え、やっぱり私ですか!?」
「ちげえよ! あーもうめんどくせぇ!」
美咲が上手く打ち解けることができたのを確認したのは良いが、そろそろ予約していた時間に迫っている。
「くだらない話してないで着替えようぜ。祭りもぼちぼち始まってるだろうからな」
「くだらないって……誰のせいだよ誰の……」
「もちろん雅人だろ」
「お前だよ!」
12月ということで、毎日更新が終わる可能性があります。
12月は何かと忙しいですし、適当に書いてこれ以上(( クオリティを落としたくないので、更新が途切れても文句を言わないでください!
毎日更新なんて誰も言ってないんや!!!!! むしろ約3ヶ月間毎日更新していたことを褒めてくれてもええんやでっ!!!!!!
ということで、この祭り編が終わったら毎日更新は終わります。
祭り編まではヴィジョン(巻き舌)が見えてるからかけるんです!




