69.水着選んだ
「とりあえず、次は私が明梨ちゃんの水着を選びますね! どんなものが良いとかはありますか?」
「うぅ……ビキニは小ささが目立つしワンピースだと身長的に合わなそう……。だけどワンピースタイプなら胸は分かりにくくなるし、でも多分変なんだよね……。ねぇどうすればいい!?」
「と、とりあえず適当に何個か選んできますね!」
「頼むよ本当に!」
明梨ちゃんの要望に応えられるかはわかりませんが、良いものを探すことができるように最大限努力したいと思います。
でも、明梨ちゃんは明るい性格だし柄ありのものも似合うと思います。それに、言ってしまうと胸が小さい方が可愛いデザインは多いのです。
そう考えると探せば満足しそうなものを見つけることができるのではないでしょうか。
「ワンピース型は嫌みたいでしたし、オフショルダーのものを探しましょうか……。それに、ひらひらがついているだけでもかなりおしゃれですし……」
結局オフショルダーとひらひらが多く着いているものを選んで持っていくことにしました。どれか一つは気にいるのではないかと思い五種類ほど選びます。
明梨ちゃんのところに戻ると、良いものを見つけることができなかったのか何も持たずに待っていました。
「明梨ちゃん、持ってきましたよ」
「おー! ……全部にフリフリが着いてるんだね……」
「ひらひらですよ。これなら明梨ちゃんの魅力が最大限に発揮されます」
「……確かに、これなら隠れて目立たないね……。つまり胸とかいうコンプレックスを隠すことで私の魅力が最大になるというんだね!?」
胸の話になった途端、明梨ちゃんは自意識過剰だったり深読みを始めたりします。これは明梨ちゃんの悪い癖だと思います。
「確かにひらひらがあると胸が隠れるかもしれませんが、そんな意図で持ってきたのではありませんよ。これは、明梨ちゃんの明るい性格と活発に動いたときに良い感じになるのではないかと思って持ってきただけです」
「そ、そうなの?」
「そうです。……というか、私はそういう感じの水着が似合わないんですから、結構うらやましいんですよ? それに、胸がないと困る事なんてほとんどないじゃないですか」
「うぐっ……確かにそうだけど……」
「分かったのなら試着してきてください」
明梨ちゃんは試着室に入っていきました。確か去年も同じようなやり取りをしたような覚えがあります。
……そういえば明梨ちゃんは去年の水着を着ないのでしょうか? 私は着れなくなってしまいましたが、明梨ちゃんは余ゆ……これ以上は言ってはいけない気がします。
明梨ちゃんは着替え終わって更衣室のカーテンを開きました。
「どうかな? 自分で見ると似合ってるのかどうかあまり分からないね」
「すごく似合ってますよ! 可愛いです!」
「そう? とりあえず次の水着に変えてみるね!」
……そうして五種類の水着を着てもらったわけですが、結局のところ一番最初の水着が一番似合っていました。多分、明梨ちゃんも自分でこれが一番合うと考えて一番最初に着たのでしょう。
これと決めたものをもって二人でレジに並びます。平日ですし、人はほとんどおらずあっという間に会計を終わらせることができました。
「いやぁ、良い買い物したね!」
「そうですね。これで撮影が無くてもプールに行くという目的ができましたね」
「撮影はあるから! 少なくとも私はあるって信じてるよ! 麗華は楽しみじゃないの!?」
そう言われてしまうと、楽しみなのかどうかはっきりと答えることができませんが、プールに行こうと思って偶然撮影をしているところを目撃してしまったらしょうがないとは思っています。
偶然見かけてしまうのですから仕方がないことなのです。不可抗力というものです。抗うことが不可能な力で不可抗力です。
「明梨ちゃんはいつもデマに踊らされているので、撮影があるということはわずかにだけ信じています。なので、見ることができたら御の字みたいな軽い気持ちで行きたいと思っていますよ」
「まっ、期待してなかったらその分ショックも大きいからね! だからこそプールというご褒美を付けておいたのだよ……ふっふっふっ……」
「……水着選び一つであんなに不機嫌になっていたのですからご褒美と言えるのでしょうか……」
「あれ? 今麗華何か言った?」
ぼそっと言ったつもりが少し聞こえてしまっていたようです。言ってしまえと私の心が訴えますが、理性がそれをしっかりと止めてくれました。
「いえ、何も言っていませんよ」
「ふーん。聞き間違いか」
「そ、そうですよ。とりあえず、そろそろ帰りませんか?」
「そうだね! じゃあ、私は少しお菓子を買う予定だからまた明後日ね!」
「はい、ではまた明後日ですね。お先失礼します」
そう言って私は明梨ちゃんと別れます。手荷物は水着と文房具のみで、何の不自由もなく帰ることができます。モールから家までは約三十分かかりますが、まだ全然明るい時間だから危険を気にしなくてもいいでしょう。
……荷物というと、自然と荷物を持ってくれた日裏くんのことが浮かび上がっていてしまいました。自然と荷物を持ってくれて、ところどころに出てくる紳士な行動を思い出してしまいます。
多分、明後日日裏くんが神代光生として仕事をしているところを見るかもしれないから浮かび上がってきたのでしょう。
ちらりと感想欄を見たところ、たけのこが優勢のように思えましたね。まぁ、当然でしょう。たけのこ派には気品が溢れているのです。対して、きのこ派はどちらかというと野生児、モンスターですね。
さて、私がそう主張する根拠を示しましょう。根拠は大事です、とても大事。
きのこの山とたけのこの里、一体どこに大きな違いがあるのかと聞かれれば、答えは形になるでしょう。その形の中でも、私が注目してほしいのはチョコレートがある部分です。
きのこの里は、その形状から見ずに袋に手を突っ込んでもうまくきのこの傘以外の部分を持つことができるでしょう。見ずに食べることができる、汚れにくいと主張するのでしょう。しかし、これはただの野蛮人だ。
だが、たけのこの里はどうだろうか? チョコがついていない部分はおよそ5ミリ程しかないだろう。つまり、適当に手を突っ込んで食べたらチョコレートがついてしまう可能性ははっきり言って大だ。超大だろう。これならきのこの方が良いではないか。そう思うかもしれない。
しかし、もしも見て食べていたとしたらどうなるか、結論から言ってしまうとたけのこの里に気品が溢れてしまう。
きのこの場合は鷲掴みだろう。だが、たけのこの里ならば指先で掴むようにチョコがない部分をつまみ上げて食します。
気品に溢れすぎている……。
ちょっとたけのこの里の立場に立って話すぎましたね。一方的なひいきになってしまいました。申し訳ありませんでした。
お詫びとして、目玉焼きを作らせていただきました。醤油、かけておきましたね?




