56.脇役高校生は音楽ゲームをする(ドラム洗濯機)
雅人の先導でクレーンゲームのコーナーを抜けて、ドラムの達人など有名ゲームが置いてあるコーナーへとやってきた。
だが、雅人はドラムの達人も超えてその先にあるゲームの前で止まった。
「なんだこれ、洗濯機?」
「み、見てください……。後ろにATMもありますよ! ……あれ? よく見たらATMではないみたいですね」
「ATMと洗濯機じゃない! これは……」
「あ! 音ゲーじゃん! 動画サイトとかテレビで時々紹介されてるよね!」
雅人の説明を遮って一ノ瀬さんが教えてくれた。音ゲー、音楽ゲームか。どうやらこれは、ドラムの達人などと同じようなゲームらしい。
確かにATMに向かって手を振ったりしている人がって……動きが気持ち悪すぎないか……?滝のようにノーツが流れてきたと思ったらそれを人にはできなさそうな動きでさばいている……。
え、なんでここに来たの?もしかしてあれをやるのか?無理じゃね?
「静哉、やるのはこっちだぞ」
「……洗濯機か」
「面白そう!」
「私、ドラムの達人もしたことないのですが……」
「大丈夫大丈夫! これなら四人でできるからさ! それに有名な曲も色々入ってるから大丈夫だと思う!」
確かに、プレイランキングというものが今流れているが、結構有名になった映画の曲や俺の好きなアニメの曲まで色々と載っている。
ランキングの上位はオリジナルの曲で埋まっているみたいだが、確かに四人でもできるみたいだしやってみてもいいかもしれない。
「みんなもするならするけど、俺一人は嫌だぞ?」
「安心しろ。俺はするからな!」
「私もやってみたい!」
「わ、私もしてみたいです……」
「じゃあみんなでやるか! ま、端から曲選んでいくってことで俺が左端な」
左から雅人、俺、江橋さん、一ノ瀬さんの順番で筐体の前に並ぶ。どうやら一人でプレイすると百円で三曲だけど、二人以上でプレイすると四曲できるらしい。
まずは百円を入れてチュートリアルをしてみる。
画面の真ん中から流れてくるリングを画面タップかボタンを押すことでタイミングよく取るようだ。タップ、ホールド、スライドの三種類がメインみたいで、チュートリアルはすごく簡単だった。
「よし! じゃあ一曲目は……これなら知ってるんじゃないか?」
「あー。君の名前は。の主題歌か。俺は知ってるぞ」
「私も見に行っていませんが曲なら……」
「私は知ってるよ! 映画も見たしね! で、これってどの難易度を選べばいいの?」
「うーん……イージーだとさっきのチュートリアルみたいな感じになるからベーシックかな?」
そう言われてベーシックを選択する。……雅人はマスター?というものを選んでいた。
「ん? お前その難易度で大丈夫なのか?」
「ま、俺は経験者だからな」
そういえば、ゲストではなく自分のデータを持っているようだったしもしかしたらやりこんでいるのかもしれない。
「白木さん。このスピードというのは変えた方が良いのですか?」
「うーん、遅すぎるとやりにくいし中級者用って書いてあるやつがいいかもしれない」
「んじゃ俺も変更っと」
「みんな準備完了したかー? じゃあ始めるぞ?」
そして曲が始まると同時にノーツが流れてくる。チュートリアルを少しだけ難しくしただけのような難易度で、個人的にはあまり難しいと感じるようなところが無かった。
しかし、まず高難易度をやっているであろう左側の雅人の動きがうるさい。音がうるさいのではなく、動きがうるさいのだ。
ちらっと見てみると、ノーツが来ていない時も一定間隔でボタンを叩いており、リズムを取ってミスをしないようにしたりいつの間にか手に手袋をはめていたりとまるで、一人だけやっているゲームが違うように見える。
そして対照的なのが右側にいる江橋さん。無意識なのか分からないが、え?とかあれ?とか色々な声が聞こえてくる。
あと、微妙に叩くタイミングがずれているようで、叩いたときに二重丸が出ずに丸になることがほとんどだった。
そして、サビの時に上下交互にノーツが来た時、完全にどう叩いていいか分からなくなっていて手が空中を彷徨っていた。
ちなみに、それを見ていた俺もめちゃくちゃミスった。
「うわあ……ええ……。うわぁ……」
「なんだよその反応は……」
「いや、別に? なんで一番難易度が高いのに一番順位が高いのかって思っただけだし?」
「私は二位を取れたから満足! 日裏くんはミスと二重丸の両極端だね! 麗華……はイージーを選択しようか……」
「楽しいけれど難しいです……」
そう。結果は最高難易度を選んだはずの雅人が一位だったのだ。これを見て、俺は雅人を絶対に一位から引きずりおろしてやろうと考えて曲を選択した。
「うわっ! おま、これマスターの難易度高いじゃんか……」
「もちろん、マスターをやるよな?」
「くっ、しょうがない……」
「私はイージーにしました。準備オッケーです」
「私も準備オッケー!」
全員の準備を確認できたところで、曲をスタートさせるためにボタンに手をかける。
「じゃあスタートするぞ? ほいっておい! 何してんだよ!」
「へっ! アドバンスで苦しめ!」
雅人は、俺がスタートボタンを押そうとした瞬間に俺の難易度を上げたのだ。それに気がつかず俺は曲をスタートさせてしまった。
選んだ曲はヴォーカロイドの曲だが、今では違う名前で有名になった人が作った曲だったから意外と全員が知っていた。
まぁ、始めたての俺が真ん中の難易度をできるはずもなく……。
「あぁ……四位だ……」
「や、やりました! 三位です!」
「よ、良かったね」
「まぁどんまい」
「誰のせいだ誰の……」
次に選ぶ江橋さんが選択したのは先ほどと同じような映画の有名な曲。そして一ノ瀬さんが選んだのは意外にもアニメ系の曲だった。
その二回は集中してやったため、俺は見事二位になることができた。アドバンスをしたおかげで目が慣れたということも大きな理由の一つだと思う。
その時の順位は一ノ瀬さんも抜いて俺が二位になることができた。江橋さんは……言わないでおこう。
「どうせ私はリズム音痴なんですよ……」
「ほ、ほら! 麗華! 次はプリクラでもいこっ? ねっ!」
「……日裏くんいえ、全員で撮るなら許します……」
「ほら! 二人とも行くよ! 白木くんのせいでこうなったんだから強制参加! 日裏くんも連帯責任!」
「プリクラとか初めてとるんだが……」
「良いから来る!」
ということで、クレーンゲームが終わって音楽ゲームをした後はプリクラを撮りに行くようだ。




