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44.脇役高校生は写真を撮る撮られるらりるれろ

らりるれろ

前作のデートはクソ短いしクソつまらなかったから頑張ってます(長いです)

 バスを降りた俺たちは、入場ゲートのほうに歩いていく。チケットは涼風が持っているから人が並んでいるチケット販売に並ばなくていい。


「チケットをお出しください」


「二人です。お願いします」


「はい。カップルチケットですね。では、こちらのテープについているバーコードをゲートで読み取らせてから腕などの見える位置に巻き付けておいてくださいね」


「わ、分かりました」


 水族館でカップル用チケットとはどういう意味か分からなかったが、多分このテープに意味があるのだろう。カップルチケットにしても男女別に一枚ずつ買っても値段に差は一切ないのだから、何かしらの出来事は起きそうだ。


 俺たちの前に受付をしていた人は黄色だったのに対して、俺たちのは二人とも赤だ。夢の国の誕生日特典みたいな扱いをされるのかもしれない。


 確かに、俺じゃなく適当な男子を誘っていたとしたら確実に勘違いされてしまうだろう。


「というか、懸賞で当たったからって気になってる男子を誘えばよかったんじゃ……」


「え? 今何か言った? それより早く見に行こ! 人がほとんどいないうちに写真を撮りたいからさ!」


「分かったから引っ張るなよ! ……今思ったんだが、涼風と明華どっちの名前で呼べばいいんだ?」


 今まではずっと涼風と呼んでいたが、それは涼風の本名を知っている人たちの中だったからだった。しかし、今日は誰が聞いているか分からない状態が続く。


 気がつかない人もいるかもしれないが、俺たちのことを気がつかれたときに本名で呼び合っていたらまずいのではないかと思う。


「私はどっちでもいいよ? 普段からこの格好だし、調べれば名前も出てくるからね。それより、静哉がどうしたいかだよね」


「確かにそうか……。うーん、じゃあ静哉でいいかなぁ。でももし誰かに話しかけられたら光生に切り替えてくれるか? 俺もその時は明華って呼ぶからさ」


「おっけー! それより早く行こうよ! 人が来る前にさ!」


 今度こそ手を引っ張られながら水槽の前に移動する。一番最初に目に入ってきたのは巨大な水槽。この水族館のパンフレットでもメインになっているもので、国内最大級で小さい生態系をイメージしているらしい。


「でっかいなぁ……。おっ! あっちからサメが来てるぞ!」


「本当だ! って下からエイも来てるよ! あはははは! 変な顔みたい!」


「ふっふっふ。涼風よ知っているかね? お腹にある顔のようなものは実は鼻で、本当の目は背中にあるんだぞ?」


「ええ!? どうみても顔じゃん! 目じゃん! 口じゃん! え待って。口はどれ?」


 涼風が気になるようで俺に聞いてきた。魚については前に少しだけ調べたから雑学程度なら分かる。どこでも使う事がないと思っていた知識がこんなところで役に立つとは思っていなかった。


「口は口っぽく見えるやつでいいんだぞ。その下にある切れ目みたいなものがエラだな」


「へえ! せっかくだから一緒に写真に撮って!」「いいぞ。お、丁度魚群も来たから撮るぞ! 涼風に合わせないで魚に合わせて写真を撮るからずっと笑顔でいろよ!」


「えええ! はいっ! いいよ!」


 何枚も連続で撮っていく。どんどん後ろの景色が変わって行くせいで撮り飽きない。撮りまくっていたら涼風がこっちに歩いてきた。


「静哉も撮ってあげるよ! はいはいはい、良いからそっち行って!」


「うーん、あ! 今来たサメと一緒に撮ってくれ!」


「おっけ! 撮るよ! 連続で撮るからずっと笑顔でね!」


 そんな風に交互に撮っては変な顔だの目が瞑ってるだの言いあっていたら、近くで待機していたスタッフさんに話しかけられた。


「もしよろしければお撮りしましょうか? 見たところカップル様のようですし」


「あ、お願いします! って、カカ、カップルですか!?」


「違うのですか? そちらのテープの色はカップルチケットでしたので……」


 涼風があわあわし始めてしまった。ここは俺が助け船を出すべきだろう。


「懸賞か何かでカップルチケットが当たったらしくて、変に勘違いされないように俺が一緒に来たんです。だからカップルチケットで入ったんですけど、実はただの友達なんです」


「あ、そうだったのですか?」


 本当なのかと店スタッフさんに聞かれたが、俺が助け船を出したことで涼風も冷静になることができたようで、普通に返事をしていた。


「そうです。はい。ええ、その通りですね!」


「あらあら……でもせっかくだし、二人で撮りませんか?」


「うーん、俺はどっちでもいいけどどうする?」


「せっかくだから撮りたい……かな?」


「よし。じゃあスタッフさんお願いします」


「はーい。任せてくださいね!」


 俺たちは水槽の前に並ぶ。一緒に撮影することなんてしょっちゅうあることだから、ぶつかるんじゃないかという距離感で並んでいる。


「撮りますねー! 人間はー!?」


「「……?」」


「そこは哺乳類ですよ! 写真のかけ声はいの段で終わるんですよ!」


 分かるかぁ!と叫びたくなったが、その言葉を必死に飲み込んだ。


「さあ気を取り直して! 人間はー!?」


「「ほ、哺乳類!」」


「アザラシはー?」


「「哺乳類!?」」


「はい次クジラはー?」


「「哺乳類!」」


「良いよ良いよ! イルカはー!?」


「「哺乳類!」」


「はい最後に! ペンギンは!?」


「「哺乳類!」」


「ペンギンは鳥類でしたー!」


 ふむ、確かによくペンギンのことを飛べない鳥だっていうし、鳥類か……。


「って、その流れで鳥類出すなよ! 完全に哺乳類の流れだったじゃん! 完全に引っかけじゃん!」


「ほほう、光生さんって面白い人だったんですね」


「そうなんですよ。意外とノリが良くてって……知ってるんですか?」


 涼風がそういうと、当たり前だと言わんばかりの顔で言い返してきた。知られていて俺も少し驚いた。


「当然ですよ! 同じ県で活躍しているんですからね! あ、もちろん明華さんのことも知ってますよ!」


「明華はSNSもしてるからな。俺まで知られているとは意外だったな」


「何言ってんの。さっきSNSに登録したじゃない」


「登録したんですか!? 支援飛ばしておきますね! 水族館のアカウントで!」


「いや自分のでしろよ!」


 光生さん面白いとか言いながら笑っているが、突っ込ませているのはスタッフさんのほうだと言いたい。


 というか、最近は俺のツッコミキャラ化が進んでいる気がする……。


「と、こんな話をしている場合じゃありませんでした! あと十分で午前のイルカショーが始まります! イルカのことも色々知ることができるのでぜひ行ってくださいね!」


「もうそんな時間だったか。よし、移動しよう」


「そうだね。スタッフさんありがとうございました!」


 礼を言って立ち去ろうとした時、最後にとスタッフさんが言ってきた。


「ショーでは前に座っていると参加者募集に選ばれやすいのでぜひ前にいてくださいね! あ、でも前にいると水がかかるので注意してください!」

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