18.活発少女は作戦を立てる
「あの、別に日裏さんに変なことをするつもりじゃなくて、神代光生に助けられたからお礼を言いたくて探してるだけなんです!」
ふーん…さらっと言ったけれど光生様に会ったんだ。しかも助けられたんだ。へぇ…。一体何があったのか聞きださなければ…。
「助けられたって何があったのかなー? 教えて欲しいなー?」
「えっと……誰にも言いませんか?」
「言わない言わない!」
「本当の本当に秘密ですよ?」
「もちろん秘密にするよ! 親友なんだから言いふらしたりするわけないじゃん!」
やばい、麗華がするチラチラと見ながら秘密ですよ?の破壊力が高すぎる…。今まででこんな麗華は1回も見たことがないよ……一体何をやったんだ、光生様は…。
「それで、一体何があったのかな?」
「三日前の夕方、切らしてしまったインクを買うために買い物に行ったのです」
「うんうん、今のところ何の変哲も無いね」
「買うところまでは順調だったのですが、帰り道に少しチャラチャラした格好の男性三人に絡まれてしまって…」
「うわぁ……麗華は可愛いんだからつい声をかけちゃったんじゃないのかな?」
「それ自体は時々あるので良いのですけれど、暗くなってしまったからかチャラチャラした方々が中々引いてくれなくて、周りの方にも避けられてしまい…」
時々あるから良いんだ…。絶対焦りすぎて言い間違えているよ。うんうん、つい粘っちゃったのかな?その不良は?
多分麗華が敬語でなおかつあまり強く言わないから引かなかったんじゃないかな?
でも、次の展開は読めたね!
「そこで光生様が助けてくれたんでしょ! 羨ましいよ麗華!」
「は、はい。持っていたものを渡して、知り合いのフリをして助けてくれたのです」
「へー、そんな経験は初めてだったからついつい気になっちゃったわけなのね! やっぱりかっこいいよね! 惚れちゃった? 惚れちゃったんだよね?」
「いや……そんなことはないと思うの……ですけれど……多分ファンになってしまいました…」
そうだよね!ピンチを救ってもらったら好きになっちゃうって…え、え?ファンなの?ファンになってしまったとおっしゃいました?
「麗華って初恋いつ?」
「まだですが…」
ふーん。そういうこと…。これは……まさかまさか?そういうことだよね!ついにあの麗華に!?でも……あれ?
「あれ? でも何で日裏くんが出てきたの?」
「そう! 聞いてください明梨ちゃん!」
「はい!聞いてるよ!」
「光生さんは私の名前を知っていたのです!」
それは麗華がナンパから助けられたときのことを言っているのかな?
「自己紹介したわけじゃなくて?」
「はい! 最初にお待たせ麗華さんって言っていて、別れる時は江橋さんと呼ばれたのでフルネームで知っていたのです!」
最初に助ける時は親しさを出すために名前呼び、他の時は名字って紳士か!いや、神だった!
「ふむふむ……それでどこから繋がるの?」
今の状態だとただ名前を知られていたから実は知り合いだった?くらいにしか考えられないよね?
「あの、同じだったのです!」
「同じ? 何が?」
「持っていたバッグと声と……買っていた弁当が…」
「……え?」
「一昨日一緒に帰ってみたら会話した感じ同一人物でしたし、絶対日裏くんが光生さんだと思うんです!」
あー、やっぱり聞き間違えではなく麗華は一昨日は日裏くんと一緒に帰っていた……ってえええ!?
日裏くんが光生様?それはないよね?だって、さすがにねぇ?たしかに光生様は同い年で高校不明だけど……ええ?
「いやいやいや、勘違いじゃないの?!」
「やっぱりそうなのでしょうか? でも、光生さんなのかは関係なしに少しだけ日裏さんが気になります…」
「ん? 光生様だと思って近づいてみたけれど、そうじゃなくても気になると?」
「はい……日裏くんには下心がないと言いますか、すごく自然に話せるんです。…明梨ちゃんみたいに…」
あれー?これ光生様じゃなかったとしても日裏くんを好きってことじゃないの?私レベルとはあやつやりおるな!
でも、多分まだ麗華は自分の気持ちに気付いていないよね?
もしも、もしも日裏くんが光生様だったのなら応援するべきか……うん!そうだよね!麗華が初めて抱いた感情だもん!応援しなきゃ!
「とりあえず本っていう接点があるんだからさ!関わりはあるんだからナイスだよ!」
「そうですよね!」
「何か困ったことがあったら相談してね!もし麗華を困らせたらビシッと言ってやるんだから!」
「相談は心強いですが、大丈夫でしょうか…。その、日裏さんに私が近づきすぎても迷惑じゃないでしょうか…?」
「うーん、一昨日何回も神代光生ですかって聞いたのはダメだったと思うけど麗華に話しかけられて迷惑な人なんていないよ!」
「一昨日はその……探し出す!って意気込んでいた矢先に見つけてしまい、確信はしていたのですがどうしても確証を得たくて何度も聞いてしまいました…」
「とりあえず、本当に日裏くんが光生様なのかは知らないけれど、事情があるのかもしれないし光生様としてじゃなくて日裏くんとして接してみたらいいと思うわよ」
心配そうな顔をしている麗華もやっぱり可愛い…。日裏くんより光生様のほうが今のところ有利みたいだけど、もしも本当に日裏くんが光生様なら光生様がすきだけど日裏くんは好きではないなんて言う状況は許されない。
だから、もう関わらないということは諦めて、まずは麗華に日裏くんを意識してもらおう。
麗華に自分で行動させたら暴走する気しかしないから……私がキューピッドになってやろうじゃないの!
「ならまずは光生様の雑誌を貸すから見てみなよ!」
「一昨日買いました」
「はや!」