エメラルドの帯留め
5月の貴石
エメラルド
緑柱石ベリルの一種
Be3Al2Si6O18
そうアクアマリンやヘリオドールなどと同じ種類
「あっ!」
風が心地よい青空の下。いきなりの躓きです。
ぽちゃん。
「あー!」
躓いただけでも恥ずかしいのに、大切な帯留めがお池にはまってさぁ大変!
着物の裾をまくって足を出す勇気は、と考えていたら隣にいた男性が裸足になり探してくれました。
「も、申し訳ありません!」
「足が濡れただけで、問題ないですよ。これ、汚れちゃいましたね。庭師が使う水場があるはずですから、行きましょう」
「はい」
私は今日、和装のお洒落をしてきました。男性はスーツでピシッと決めていました。
私たちはお見合いをしている途中なのです。
「若い2人は中庭散策でもしてきなさい」
噂に聞く2人きりにするための常套文句。
おばさま方は、スイーツバイキングに行ってるそうで。
苦しい帯外して、そっちに行きたいわ。
そう思っていましたが。
水道から水が出ると、彼は足を洗うより先に帯留めを洗ってくださいました。
汗っかきの私は持っていたミニタオルの1枚を手にし、受け取りました。
それから彼は自分の足を流していました。
私は、もう1枚のタオルを差し出しましたが、ご自分のハンカチで拭いて
「ハンカチ持って来ててよかったよ」
そう、微笑みを浮かべます。
ちょっとキュンとくるのはチョロいのでしょうか。
後日「お付き合いしましょう」と、あちらのおばさまからご連絡をいただき、私もおばさまにそう伝えていたので、縁が繋がったということでしょう。
お付き合いにあたり、正直に自分のマイナス部分を彼に話しました。
わがままな事、家事が不得意な事、言葉遣いも猫をかぶっていた事。
彼は、「女性ってそういうものじゃないの?」と首を傾げていました。
彼の中の女性像が、ちょっとオカシイ気もしますが、お掃除は任せようと思いました。
彼は、『よく出来た』というと人間味が薄れますが、
デートの待ち合わせに遅れて行った時も、スマホがあると時間忘れてるねと言ってくれて。
仕事で会えなくなった時も、暇な友人誘うから大丈夫だから頑張ってって言ってくれて。
ご飯屋さんに行く時も、お酒の飲めない私に付き合ってくれて。
そんなに気を使ってばっかりで、疲れてしまったらどうするのでしょうか。
なにか魂胆があるんじゃないかと疑ったりしてしまいました。
あちらのおばさまに聞いたら、彼の母親が私みたいな性格らしくて。
慣れてるんだそうです。
首尾よくデートを重ね、晴れの日を迎えることと相成りまして。
「ねぇ、白無垢にエメラルドって目立ち過ぎない?」
「いいじゃない。僕らの思い出なんだから」
「今日は自分が主役のつもりで意気込んでたんだけどなぁ」
2人で顔を見合って笑う。
「どっちも大切にするよ」
顔が赤くなっちゃっいました。
「こんな私だけど、エメラルドに負けないように輝けるように頑張るからね」