置き去りのダイアモンド
4月の貴石。
ダイアモンド。
金剛石。
C
宝石の王様と言ってもいいくらいの王道石。
もっとも硬いとされあちこちで重宝している石。
でも悲しいかな炭素。
カラット、カラー、クオリティ、カット
それらが良質でないとファンシーカラーとか言ってお手頃なものになってしまう。
「誕生日おめでとう」
「わぁ、ありがとう」
付き合ってから初めての誕生日プレゼント。
期待しないほうがおかしい。
彼から渡された箱は小さく軽いものだった。
はやる胸を抑えて、丁寧にリボンと包装紙をはずす。
箱の中に箱。
青いビロードの『パカッ』と開くアレだった。
震える手で中身を確認する。
プチ・ペンダント。小さなダイアモンドのヘッド。
よーく見ると、ハートの形の輝きが見える。
「4月って誕生石がダイアモンドって店の人に言われて、頑張ってみたんだ」
彼が照れ臭そうに言う。
その顔が怒りを倍増させた。
ダイアモンドに罪はない。
宝石としてのダイアモンドには。
わかってる。
私だって、「嬉しい」と心から言うつもりだった。
プレゼントの値段とか可愛らしさだとか、そんなのは気にしてなかったのに。
なのに何故。
私の雰囲気が変わっても、彼の顔には笑顔が張り付いたままだった。
これが彼にとって私の最後の台詞になるだろう。
「私たち付き合って半年だけど、結構長い知り合いよね。あなたが私の事を気にしてないって事がよくわかったわ。なに言ってるかわからない? 私がデートの時にすらアクセサリーつけてないの気づいてなかったんでしょ。つける事ができないのよ! 金属アレルギーでね!!」
そして机には、ダイアモンドが置き去りになっていた。