アクアマリンのアイランド
3月の貴石。
アクアマリン。
Be3Al2Si6O18
ベリルの一種。
水色の可愛い石。
とは限らないそうで、同じ成分の石が色々あるらしい。
しかも。
誕生石自体、ブラッドストーンっていう名前が怖い石っていう話も。
「キミの好きなブルースターを買ってきたよ。ここに飾っておくね」
広くはない窓辺の一角に花瓶を置いた。
「まだ咲き始めね。開くのが楽しみだわ」
彼女はじっくり花を見たかったので、ベッドをリクライニングしてもらい、視線を合わせた。
「キミは青色が好きだから」
「あら、青が特別好きってわけじゃないわよ? 赤だって黄色だって、白も黒も好きよ」
「そうかなぁ。キミが喜ぶものって大体、青なんだから。そのブレスレットだって青じゃないか。薄い緑も入ってそうだけど」
クスクス笑う。彼女の目尻のシワがグッと深まる。
「このブレスレット買う時、あなたってば『そんなのでいいのかい?』なんて言ったじゃない」
微笑みを浮かべて手首でシャランと音を鳴らした。
小さなアクアマリンが連なった、とても可愛らしいアクセ。
「そうだったかい?」
「そうよ。あの島の海の色と一緒で思い出になるからって納得したんじゃなかったの?」
「キミは昔のことをよく覚えてるね」
「あなたはいつもそうね。これだから男の人って」
呆れ顔になり、手首を頰に当てた。
懐かしむように緩やかに。
「私に子供が産まれたら、コレもらってくれるかしら?」
「ああ。きっと喜ぶよ」
「男の子だったら、どうしましょう」
「その子の子、孫にあげればいいよ」
「まぁ、素敵ね」
とっても幸せな時間を過ごしているんだろう。
微笑ましい。
そんな日々が続いた今、小さな諸島は梨穂子の手にある。
「おばあちゃん、本当におじいちゃんのこと好きだったのね。最後までお父さんのことおじいちゃんって思ってたね」
「そうだな。幸せなことじゃないかな」
「うん。次の世界でも一緒になれるといいね」
梨穂子は、手首を掲げ、空にかざした。