転生させるお仕事 ~どうした? お前なんで顔赤いんだ?~
野々村俊介は夜寝る前に祈ることがある。
神様、どうかボクをこのつまらない世界から開放して下さい。
ぶっちゃけ異世界に行きたいです。
異世界で俺ツエーして女の子に「どうした? お前なんで顔赤いんだ?」って言いたいです。
神様……おねがいしま…す。
ボクを異世界に…。
『その願い叶えてしんぜよお』
「げ! なんかオッサンの声がした!」
なんか頭に直接声がしたので、思わず思った事を口に出してしまった。
『オッサン…だと? せっかく人が願いを叶えてやろうと思ったのに、もう帰っていいですかね?』
「か、神様! ほ、本物ですか!? スミマセン! 神様イケボです!」
あまりの出来事に頭混乱しながら謝罪する。
それと、とりあえずイケボと言っとけば間違いないはずだ。
『はっはっは、まあいいだろう。では数秒後に異世界に転生させてやる』
「え、ええ!? ちょそんないきなり。待って下さい心の準備が」
あまりにも唐突すぎる展開に、これは夢かもしれないと思いつつ、でもガチだったらかなりヤベエなと冷や汗を垂らす俊介。
『いいや待てん、こっちも暇じゃないんだ。とっとと転生させて次行きたい』
あかん! なんかヤベエ神様かもしれない。
「いや、あの、転生先ってどんなとこですか?」
転生したいと願ってはいたが、そこは自分にとって理想的な世界で、理想的な自分になっていなければ意味がない。
そこはしっかり聞いて要望を受け入れてくれないと、場合によっては転生を全力で断らなければならない。
このヤバそうな神様はちゃんと聞いてくれるだろうか? かなり不安だ。
『しらん、サイコロで決める』
やっぱりヤベエ神様だった! これはアカン。
「あ、やっぱいいです。今の世界で。おやすみなさい」
顔を引きつらせつつ、神、いや邪神との会話を打ち切って、とっとと寝ようとしたところ――
『コラ、何言ってんだこの野郎。お前がキャンセルしたらノルマ達成出来ないだろ? 諦めろ」
さらりとヤバイ発言を続ける邪神。
「え、ちょ、待って、ノルマって何!? それになんかサイコロ振ってる音がする!!」
カルマで転生されるならともかく、ノルマで転生されてはたまらない。
しかもこの邪神、明らかにサイコロ振ってやがる!
『いちいち説明するのも面倒だ。ハハ、お前2だったぞ』
こいつやっぱり勝手にサイコロ振ってやがった!!
「や、やめろバカ! 2って何だよ! 点数低いじゃん!」
『心配するな、お前は犬みたいな生き物になった。飼い主はそこそこブサイクなグェヴォペペンパだ』
「ちょ、何言ってんのアンタ! 犬!? 何とかペペンパって何!?」
訳の分からん生物の、しかもペットみたいな立場で転生なんてあんまりだ!
『心配するな。サービスとしてチート能力を授けよう』
「え!? チートですか!?」
まさかの邪神…いや神様からの救いの言葉に、少しだけ明るい希望が見え――
『お前の鳴き声を「どうした? お前なんで顔赤いんだ?」にしてやった』
――なかった。
「そっちかよ! クッソどうでもいいわ!! そんな事より地球なのか? それとも地球の理念に沿った場所なのか!?」
チートにもなってない事をチートだと言い張るクソ邪神に、一番気になる事を聞く。
地球に似ているところならまだマシだ。
『よし身体的チート能力を追加した。2千個のケツと、8万個ある目からそれぞれ火が出るぞ。これでマイナス2万4千度の絶対零度を軽く超える極寒の大地も快適だ』
明らかに地球の理念とはかけ離れたとこに転生させる気だコイツ!
しかも犬にも似てねえ! 話も通じねえ!
ヤバイヤバイ! とにかくヤバイ!
「待って待って待って下さい! お金ならいくらでも出しますからあ!」
もはや時間がない! ハイペースで自分の運命が決められていく恐怖。
この邪神を何とか説得して、せめて地球に似た異世界に転生してもらうよう訴える。
「ブサイクでも雑魚でも何でもいいので、とにかく可愛い女の子がいる世界がいいです!」
『心配するな、お前の世界で可愛いなんて概念は存在しない。あるのは血と肉と狂気と殺戮! 毎日の日課は捕食だ。ピキーン』
とんでもない事を当たり前のように言う邪神。
「地獄かよ!」
冗談ではない! これを地獄と呼ばず何と言う!?
こんな蠱毒な世界に落ちるのはまっぴら御免!
『朗報だ。さっきお前の全財産で課金し、カードを引いたら当たりが出た』
「何やってんだテメエ!! さっきのピキーンはその音か!」
もはや邪神の暴走を止めることは不可能!
だがしかし、今は金よりも、奴は「朗報」と言った!
当たりとやらのカードが何なのか気になるところ。
「当たりって何だ!? まさか地球みたいなとこで、ちゃんと人間として転生が出来るのか?」
『違う、単に私がハマっている課金ゲームの話だ』
「死ねよお前! マジで!」
こいつ人の全財産で何してくれてんだ!?
ゲームに課金だと!?
こっちは運命をサイコロで決められて、今まさに運命が死ぬ思いで足掻いているのに!
『お前のおかげだ。もう一つチートを授けよう。299万本ある足の臭いを柔軟剤の香りにしてやろう』
「一体何なんだその生命体は!! お願いだからもうヤメテーー!」
もはや悲鳴しか出ない!
柔軟剤の香りになったところで、その世界で喜ぶやつなんか一人もいない!
今の世界でも柔軟剤の香りは賛否両論なのに!!
俊介はそれでも必死に、悪夢のような現状を打開しようと頑張る。
「せ、せめて誰か一人、可愛い女の子を一緒に連れ…ああ!? 今なんかボタン押した音がした! 何何!? 今度は何し―」
『願いは叶えてやった、ではサラバだ』
まだ会話の途中だったのに、どこかで聞いたことのある神龍みたいな台詞を聞きながら、ボクの意識は遠のき、ケツから火が出る犬っぽい足から柔軟剤の臭いがする謎の生命体に転生させられた。
「どうした? お前なんで顔赤いんだ?」




