消えてしまえば
部屋に戻り、独り。服を脱ぐ。さっき、吉本さんにもらった、煙草に火をつけ、あくびする。最高な旅なのに、どこか、寂しい感じ。我聞も、
「今日は楽しかったです」
とにっこり、笑ってくれたのに。テレビも見る気になれない。全裸。バスタブでシャワーを浴びる。虚しさ100パーセント。あと味の悪い私。画家で本当にいいのであろうか。いいに決まってる。デッサン。描き続け、疲れ果て。でも、師匠の笑顔。アトリエか。本当に感謝しなくちゃならない人たちは息をする、すべての人。この世でもあの世でも。歯を磨く。バスタブを写真に撮る。自殺はしないよ。だけど、だけど。この世の中が全て、嘘ででっちあげで馬鹿らしいのなら消えてしまえば。そんなこと言えないよ。言葉が頭の中を右往左往。下着を身に着ける。ベッドで横になる。消えてしまえば、という小説を子供のころ、よく、読んだってけな。誰が書いたか忘れたけれど。眠りに就く。今日はおやすみなさい。
朝まで寝ていた私。合格不合格。そんなことはどうだっていい。生きること。ただ、最後まで生きること。そんな気がするんだ。偽善者は、必ず葬られる。ナルシストは人の不幸を望む。そういう人って、たまにいるよな。よし、今日もデッサン、撮影だ。三人、力を合わせて、生きていこう。そうすれば、本当の画家になれる。ナカイクレパスさんに今年はレベルを大胆に上げた作品を出品しよう。頑張ってる。私たち人間全員。動物も食物も植物も。皆、動いている。消えてしまえばなんて言えないよ。私は二人の男に電話をかけて。




