夕暮れ過ぎて
姫路駅でタクシーから降りる。さっきの、男、なんだったんだ。もう、怖いよ。まさに珍道中だ。電話。吉本さんから。
『陽子、大丈夫か』
『い、今、駅です』
『駅のどこや』
『北口ってところです』
『わかった。俺と我聞もすぐ行くわ』
北口にはバス乗り場。姫路の移動は、電車バス。お城を背景にした人間関係。悩みの相談、校長先生。姫路はなんだか、謎だらけ。ひーひーっふ。このこいけるんちゃうん。勘違いもほどほどにせいよ。
「陽子さんの絵は走っています」
師匠の言葉通りだな。缶コーヒーを飲もう。自販機にてカフェオレ。まだ、蒸し暑い。ここからも姫路城が、よく見える。大きいな。そうこうすると、吉本さんと我聞が、スーツケースを三つ、抱えて、立っていた。
「いきなりでびっくりしましたよ。さっきの痴漢ですか」
「ようわからん」
「陽子さん、ほっときましょう。僕も一応、元警察官ですし」
「わ、わかった」
再び、タクシーに乗る、私達。行先は、『網干シティホテル』。今日の宿だ。西へと走っていくタクシー。運転手さんはこう、言った。
「姫路、言うたら、そうやな。書写山、いう山がある。そこ、行きなはったら」
「ああ、書写山な。円教寺のある、山やな」
「そうそう、映画のロケもやってはるよ」
すごいな、姫路。網干に到着。精算を済ます、吉本さん。
「おおきに」
「こちらこそ」
早速、チェックイン。シングル喫煙三人。それにしても、吉本さんも我聞も煙草好きだな。早速、喫煙所で、くたくたになっている。私は受付のお姉さんに話してみる。
「姫路って、どこか絵になる場所ありますか」
「そうでございますね。ううん、書写山円教寺、名古山、お城、手柄山、セントラルパークといった、ところでしょうか」
「へえ」
私はこのお姉さんと笑顔で話す。さっきのことは忘れよう。二階に、お好み焼き屋さんがあるんだな。行ってみよう。




