凍る月
冷たい目、冷たい手、冷たい声
氷のやうに凍てつく貴方は きっと
骨の髄迄 冷ややかなのだ
そう 思っていたのだ
冷たくて、冷たくて、冷たい
氷のやうに凍てつく貴方の世界
雪降り止まぬ一面の銀世界
骨の髄迄 冷え切る程の
此処が貴方の心象世界
いつからか 夢に視始めた此処を
いつだって 好きだとは思えなかった
いつにしろ 孤独な場所だったうえ
いつ見ても 貴方は背を向けていた
いつ来ても 貴方は空の凍る月を見ていた
冷たくて、冷たいのに、寂しがり
氷のやうでも貴方は きっと
凍る月程 強くはないのだ
凍る月程 独りに慣れていないのだ
冷たくて、冷たいから、独りきり
氷のやうな貴方は きっと
その冷たさを人に移したくはないのだ
だから貴方は独りきりなのだ
凍る月には成りきれぬくせして
(独りが嫌な寂しがりのくせして)
凍る月のやうに成りたがる
(独りでも平気だと冷たさを持て余す)
気づいてしまったのだ
骨の髄迄 冷ややかなのだと
思ったままでいれば良かったのに
気づいてしまったのだ
その冷たさ その孤独さ その脆さ
貴方の夢に視る銀世界の意味
貴方が夢で視る雪景色の理由
気づいてしまったのだ
気づかなければ良かった
気づいてしまったのだ
凍る月程 凍る月迄
嗚呼、貴方の孤独が
凍てついて 凍てついて 凍てついて
いつか私も独りになる