定例会議
一つの魂が眠りについた頃、また一つの人影がせわしなく建物の廊下を歩いていた。
白く反射するそこに同化するような色の服。
そのスカート状になっている下半身の布と短くまとめられた青色の髪が肩の動きに合わせて左右に揺れる。
切れ長の目は凛とした雰囲気を漂わせ、同じように細く伸ばされた眉は逆八の字に食いしばられていた。
廊下の突き当たりに設置されている扉の前に立つと、一拍間を開け、ドアノブを回す。
「遅れた。申し訳ない」
室内には楕円形の長い机と、その輪郭に沿うようにずらりと設置された椅子。
その上には同じ数の人が腰掛けていた。
その視線達が、入ってきた彼女に向けられた。
「いやー今丁度始めようとしてたところですよー」
「申し訳ない。仕事が片付かなくてな」
「先輩は前から仕事請け負いすぎですよー」
「先輩は止めてくれと言ったろ。もうお前の方が役職は上なんだ」
「いやいやそんなーうふふー。先輩とは比べ物になりませんよー」
のんびりと間延びした声との会話はどこからか飛んできた咳払いによって止められる。
青髪は空いている席に座り、部屋の奥にあるホワイトボードを見る。
静寂がその場を支配したと見るやいなや、一人が席を立った。
「では、定例会議を始める。各々今期の報告をしてくれ」
大柄の男がホワイトボードの前に立ち指示をすると、また一つ席を立つ音がする。
その人影は資料を持ち、口を開いた。
「B地区から。今期は『地獄道』行きがニ名と極端に少なく、またこれに反感を抱いた魂が暴動を起こしましたが、これを鎮圧。阿鼻地獄行きとしました」
「被害はどの程度だ」
「ガラス一枚に、四名ほどの負傷者を出しました」
「わかった。ありがとう……次」
「はいー」
報告を終えた者が席に座ると、代わってまた一人が席を立った。
「今回C地区はー。えーっと……あ、『天道』入りが五十名と異常に多く、また『地獄道』入りが三名となりましたー。あと……11544番がニ百回連続で『人間道』入りを達成しましたー」
「そうか、なかなか優秀だな」
「ですが、大きな課題としてー、魂が一名自我を取り戻しつつありますー」
「…なんだと?何番だ」
「えーっと……確認します」
「あー今はいい。わかった、ありがとう」
「はーい。すいませーん」
ゆるゆると伸ばされた声は止み、座る。
報告はその後も続いた。
やがて全ての報告が終わった事を見計らうと、前に立つ男は咳払いをする。
「……報告ありがとう。では、全体の課題として、『地獄道』行きが極端に少なくなっていることが挙げられるな。バランスが心配だ」
「司会殿」
「…なんだ」
「特務員を選考するのはいかがか」
「特務員か……また頼る事になってしまうが…」
男は腕を組み唸りながら考える。
少しして、男は顔を上げると口を開いた。
「…仕方ない。そうするか」
「だったら司会さんー」
「…お前ら好き勝手呼び過ぎだ。司会が入ってればいいと思うな」
「司会先輩ー」
「私お前と部署違うだろ」
「司会にゃんー」
「…もういい、なんだ」
「特務員だったらーウチの11544番ちゃん使ってくださいよー。成績優秀ですよー」
「連続人間道か」
「はいー。最近退屈してるみたいですしー」
男は顎に手を添え、また頭で思考を巡らす。
「…まぁ成績的には文句ないが……。じゃあ次の結果発表の時そいつをここに呼び出しといてくれ」
「了解でーす」
「それではこれで今期の会議は終了とする。お疲れ様。解散!」
その号令と共にわらわらと席を立つと、ゆらゆら肩を揺らしながら部屋を出ていった。
「…どういうつもりだ?」
「えー?」
廊下の途中で青髪が間延び声に話しかける。
「お前が特務員に他人を推薦するなんて珍しい。街に雪でも降るか?」
「もーなんでですかー。……まぁ変わった経歴の子ですしー。やらせてみるのも一興かなとー」
「…それはわかって言ってるのか?」
「何のことですかー?」
「…まぁ、いい」
伸びた声に巻かれるように青髪が揺れる。
白い輝きの中でその青髪は、風にそよぐ一輪の花のように、揺れていた。
文にまとまりがありませんねごめんなさい




