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空のアニマ  作者: 海産キクラゲ
13/18

魂の新たな命

白い病院の廊下を通り、着いたのは広い広い空間。

私を迎えたのは最初の講義の時の人とその奥に並ぶベッドだった。

白いシーツがかけられているが、その隙間から灰色の無機質な冷たい光が垣間見えていた。


その上に横になっている人々。


「あ、11544さま!遅いですよ〜」


どうやら私待ちだったようだ。

さささっと案内されるままに私もベッドに横になる。

仰向けになった私と一瞬だけ目を合わせるとその人は一拍置き、説明を始めた。


「えー皆さんようこそ!ここが試験会場、すなわち転生場所となります!えー時間がなかなかギリギリですのでパリパリ話を進めますね」


パリパリ話を進めるなんて初めて聞いた。

語感だけで表現する人はあんまり好きじゃないな。


「えーっと」、とパラパラと手に持っている資料をめくると、その人は説明を再開する。


「えー最初の説明でも申し上げた通り、皆さま方魂は裁判を受ける事はありません。ここはその後の転生を行う場所です。まずは皆さまが横になられているベッドに付属しているヘルメットを装着してください」


離陸前のキャビンアテンダントの様に機械の機器の使い方をし始める。

カチャカチャと鉄同士が擦れ合う音が白い部屋に響いた。


「…装着されましたか?では、これからそれを起動します。仕組みとしては、皆さまの転生先のデータをそれぞれに入力、そこからは……まぁ、知らなくてもいいでしょう」


言うが早いか鉄の帽子の内部から光が溢れてくる。

青色に、赤色に、紫色に。様々に放つ光を変えるそれは私の頭をすっぽりと包み、いやがおうにも心を震わせた。


「もう皆さま方の転生先は決まっておりますので、後は転生するだけです。でもその前に一つ」


ゴソゴソと視界の向こうで何かをまさぐる音がした。


「これからお配りいたします、これの匂いを嗅いでください」


カサッと何かが胸の上に乗せられる。

それによって起こった少しの風と共に、フワッと甘い香りが鼻をくすぐった。

……花、のようだ。


「ご安心ください。麻薬とかそんなもんじゃないので!グググッと!さぁ!」


……酒かよ……

私はそれを指でつまみ、鼻に近付ける。

そして思いっ切り、息を吸い込んだ。

その途端、甘さが頭を包む。

そのとろける様な香りの中に飛び込むように、私の意識は消えて行くのを感じた。



ーーーあれ。

なに、ここ。

なんでこんな…

あれ、うで…が、なんか、うごかせない。……ベルト…?あし、も……。

どこ、ここ。ここでなにしてるの。なんで、こんな


「では!転生を開始します!皆さま!よい人生を!!」


聞き覚えのないはつらつとした声が視界の外から響いてきて、私は光に包まれた。



ーーー黒。

さっきの一瞬の光とは全くの対照にあるその暗さに、不安はピークに達した。

その中で必死に何かを動かす。

自分の意思で動くそれらは、この場所がとても狭い事を教えてくれた。

出たい。

ここから出たい。

頭の中はそれで染められた。

前についている二つの何かを動かして、後ろの二つを動かして、この暗闇からの出口を探す。

ムニムニとした感触で囲まれたこの空間からのそれは、どうやっても見つからなかった。


突如、どこかからうねりがやってきた。

それに耐えられずその勢いになすがままになる。

暗闇の中、どこに進んでいるかもわからずに振り回される。

うねり、うねり、止み、またうねる。


混乱と動揺に塗りたくられた頭の中の色を塗り替えるように、目の前を白が包む。


『おめでとうございます!産まれましたよー!』

『お母さん!男の子ですよ!』


意味のわからない『音』が、響く。

驚いて、それに対抗するように鳴いた。


「オギャア!!オギャア!!オギャア!!」


初めて聞いたその大きな音が、自分の出したものだと気付くのには少し時間がかかった。


この日、新たな命が産まれた。

過去編終了です。

意外に長くなりましたお疲れ様でした

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