花火師イノベーション
ガイダンスを終えた私達は誘導されるままに外へ出る。
外には歩道、車道、歩道に植えられた木。
歩道に沿うように建てられているのは服屋、レストラン、コンビニ、本屋にレンタルビデオ屋などなどなどなど。
現代のよくある町並みと全く相違がない。
丸っきり全璧に完全無欠に現世のそれだった。
そこに解き放たれた私達は、その風景に少し安心感を覚えながらも不安を残している複雑な心境の中、番号が書いてある紙に一緒に記されていた地図を見ながら、自宅を目指した。
その道中、さっき質問した同志と話した。
いい奴だったよ。やっぱり冴えないけど。
白く光る建物の間を右へ左へ斜めへ。
全てが同じように光を反射するそれらが私を迷わせるのは蝶の羽を毟るより簡単なことだった。
ふ……
迷ってないよ。
あれだよ、真理ってやつだよ。考えてたんだよ。
これからの事とかね、将来設計をだね……。
いや、これは別に変な事じゃないよ。
逆にみんなね、こういうのを考えないとね人間ダメになるよ。
私達は確かに今を生きる若者であり、瞬間瞬間を花火の如く輝きを散らすのはとても大事だ。その結果これからの国をつくるなんて事もありうる。
そう、瞬間が未来をつくるのだ。
たった一瞬の瞬きが、閃きが、未来を医療を化学をその国の全てを発展させる可能性を秘めているのだ。
若者の『瞬間』にはそんな力がある。
…まぁ、私、死んでるけどね。
一拍置いて
さぁ、迷った。どうする。
いつの間にかあれ程周りにいた大量の同志達は夢想の如く消え去り、ここにいるのは私だけ。
白い空間に残された若者思考の死者。
その心境は例えるのなら発射される前にたおれてしまった発射筒の如し。いや違うかな。
とりあえず言いたい事は
寂しい。
転生うんぬんの前にホームレスに転職しそう。
出来る事なら花火師になりたいです。
「あの…」
ホームレス花火師の一瞬のキラメキに思いを馳せていると、声がかかった。
おさげで黒髪の、眼鏡の女の子。
白とは対照的な濡れるような黒髪はよく映えた。
「は、はい」
「どうか、されましたか…?」
「あ、その…」
「あ、もしかして…初めての方…ですか?」
「は、はい…」
「迷っちゃいました?自宅の場所…わかりますか?」
「お恥ずかしながら……」
笑顔でおずおずと問いかけてくるその子を前に、私は顔をうつむけ否定を表わす。
「じゃあ…ご案内、しましょうか?」
「し、していただけるんですか!?」
「あ、はい!一応あたし…ここ長いので!」
私の声に応えるように張り切って答えるその子の厚意をありがたく受け取る事にした。
地図を見せればわかるという事で、紙を見せた。
どうやらとんでもない方向に進んでいたらしい。体の芯まで恥ずかしさで満ちていく。
例えるのなら…そう…
倒れた発射筒から放たれた花火が自分の尻で炸裂した花火師のようだ。
……うん、違うな、これ。
夏の花火が懐かしいです




