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槍とカチューシャ  作者: カーネーション


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第86話『暗闇』

 本当に目が覚めたのか、確信が持てない。瞼を開けている自覚はあるのに、暗闇ばかりが広がっている。わずかな明かりを求めて周りを見回してみるけれど、どう見ても暗闇でしかない。窓はなく、どこかの地下室のようだ。


 慣れてきた目にうっすらと部屋のりんかくが浮かんできた。壁ぞいに置かれた棚には、かたちの揃わない薬瓶がずらっと並んでいた。もともとは人を監禁する場所ではなく、こういうのを貯蔵する部屋なのかもしれない。


 リーゼロッテ様は最後に、旦那様を殺さなくてはと言っていた。もしその話が本当なら、いつまでもこんなところでぼーっとしているわけにはいかない。リーゼロッテ様の計画を誰かに伝えないと。


 その思いで、わたしは床に手をついて立ち上がろうとした。しかし、急に腰を上げたからか、立ちくらみに襲われる。


 倒れないようにと壁を支えにして前に進むと、上がり階段に行き当たった。きっと、その先は入り口へと繋がっている。今は暗闇で塞がっているけれど、絶対にそうだと思う。


 わたしは少しだけしっかりとしてきた足取りで、階段を1段ずつ上った。最後まで上りきったところで、塞がった入り口を見つけた。両腕で押してみる。しかし、岩を押しているようにびくともしない。拳を叩きつけながら「だ、誰か! リーゼロッテ様!」と叫んだ。


 入り口の先に誰かいてくれたら、声が届いたらと思い、何度も叫んだ。同時に叩きつけた手がじんじんと痛むくらいぶつけたけれど、叫び声は届かない。


 自分が押し黙ると、静まり返る地下室だけが答えだった。このまま放っておいたら、リーゼロッテ様は犯罪者になってしまうのに何もできない。後戻りできなくなる前に止めなくてはならないと思っても、この部屋から出ることができない。


「バカだ、わたし」


 あれだけ近くにいたのに止められなかった。彼女の思いを知ることに時間がかかってしまった。家族を無くし、唯一、自分を認めてくれた人を亡くしたとき、どれだけの孤独が襲っただろう。そして、憎しみが全身を覆い尽くすまで時間はかからなかっただろうと想像できた。


 リーゼロッテ様を止めるにはどうしたら、良かったのだろう?


 お嬢様付きの使用人にならなければ、今日、リーゼロッテ様に突撃しなければ、そもそもわたしが使用人にならなければ、なんて考えても、仕方ないことだ。そうわかっていても、考えずにはいられない。


「そうだ、エイダ」


 エイダがここを見つけてくれたらと一瞬考えて、無理だと思った。リーゼロッテ様に会うとも言えなかった。もしこのまま誰にも見つからなかったら、わたしはリーゼロッテ様を救えないばかりか、自分の命も失う。


 神様とか信じたこともなかったけれど、両手を合わせてから指を組んだ。


 叶えるのが難しいのは知っている。だけど、今のわたしには、祈ることしかできなかった。

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