表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍とカチューシャ  作者: カーネーション


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/121

第82話『昼のお茶会』

 お嬢様は外でお茶を楽しまれるのが好きだ。長い間、ベッドで寝られていたから、窓越しではない外のものに直接触れられるのが新鮮らしい。


 庭にあるテーブルセットの椅子に腰を落ち着かせると、お嬢様は口元に笑みを浮かべた。ガレーナのハーブティをお出しすると、「いい香り」と心地良さそうなお顔をしていただける。それだけでこちらは微笑ましい気分になる。


 使用人としては呼ばれるまでテーブルのかたわらに待機だ。私語は厳禁なのだけれど、お嬢様は「ねえ、マキ」と声をかけてきた。


「何でしょう?」


「マキは異世界から来たのよね?」


 お嬢様からの質問を受けて、答えに詰まってしまう。意外と自分の口から異世界から来たなんて言うのは、恥ずかしかったりするのだ。お嬢様の瞳から少し視線をそらして、「ええ」と呟くように答えた。


「淋しくないの? ご両親は心配されていないのかしら?」


「こちらではやることもいっぱいありますし、淋しさを感じている暇はないです。それに両親は……亡くなったのでいません」


 この話をすると気まずい空気になるから嫌なのだけれど、案の定、お嬢様は眉を寄せた。


「余計なこと聞いちゃったわね。ごめんなさい」


「そんな、謝らないでください」


 両親の話をすると、大体みんな反応は同じだ。申し訳なさそうに謝ってきたり、いらない気づかいを受けたりする。その点で、あの団長さんだけは違ったなと思う。


 ――「俺はお前を妻にすることを諦めない」


 どれだけ突き放しても、あの固く強い腕がわたしを抱き締めてきた。緑色の瞳がとらえて離さなかった。「妻にする」と言って聞かなかった。熊のように図体のでかい駄々っ子だった。


「マキ?」


「し、失礼しました」


 少しぼーっとしてしまった。お嬢様は小首を傾げて、いぶかしげにされている。


「あ、そうそう。エイダから聞いたのだけれど、大切な人に会うんですって?」


「……ええ、そうです」


 平然と答えるように努力した。でも、心のなかではエイダに怒りをぶつけた。何で、使用人ふぜいがお嬢様にこんな話をしないとならないのか。


「うらやましい。わたし、恋とかしたことないから。お手紙のやりとりとかやってみたいわ」


 夢見るお嬢様に水を差してしまいそうで、「恋ではありません」と否定するのはやめておいた。どうせなら、このままお嬢様の話にシフトして行きたい。


「お嬢様は近いうちに、社交へと出られます。出会いがたくさんございますよ」


 お嬢様はご自身が可愛らしいことに気づいていないから、きっと、驚かれるはずだ。


「出会いね。ふふふ」


「どうされました?」


 思い出したかのように口元を押さえながら、お嬢様が笑い始めた。


「わたしとマキの出会いも不思議な感じだったわね。ぶつかって、あの時、痛かったわ」


「も、申し訳ありません」


「いいの。あの出会いがあったから、リーゼロッテがあなたを寄越してくれたのだもの」


 そうだった。あの出会いがなければ今頃、お嬢様はお体を悪くして、こうして外に出かけられることもなかっただろう。


「リーゼロッテがマキとエイダをお付きにしたいと言い出さなかったら、こんな結末にはならなかったわ」


 話に引っ掛かりがあった。


「えっ? お嬢様がぜひ、お付きの使用人にしてほしいとおっしゃったのでは?」


「まさか、そうは思ってもわたしには権利はないわ。人事はリーゼロッテの役割だし」


 お嬢様が嘘をつかれるとは思わない。ということはリーゼロッテ様が嘘をついたことになる。しかし、何であの場であんな嘘をついたのだろう。浮かんだ違和感はなかなか振り払われない。そんなとき、お嬢様はオーバーリアクションに手を叩いて何かを思い出された。


「あ、でも、わたし、それより少し前に、リーゼロッテに言ったの。あなたに言ったことと同じこと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ