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槍とカチューシャ  作者: カーネーション


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第81話『大切な人』

 お嬢様が出かけられるようになってから、わたしとエイダの身なりも小綺麗にしないといけなくなった。


 下級使用人のときは週一だったお風呂が、お嬢様付きの使用人になってからは2日に1度になっている。


 綺麗になることはいいけれど、お風呂に入るまでの準備が大変だったりする。


 とりあえず、エイダと協力して、暖炉の前のバスタブにお湯を入れる。海外の映画では、四つ足のバスタブがよく出てくるけれど、ガレーナでも足がついていた。


 そんなおしゃれなバスタブに繰り返しお湯を入れて、どうにか、お風呂ができあがる。


 エイダと一緒に向かい合って浸かる。お湯をすくって肩に流しかけていたのだけれど、前方から「ふふ」と妙な笑い声が聞こえてきた。エイダはニヤニヤしていた。


「何なの?」


「別に」


「どう見ても『別に』って顔じゃないけど」


 ニヤニヤし続けているのも気になる。わたしが指摘すると、エイダは「ごめん、ごめん」と笑いながら謝った。


「わたしに2つ上のお姉ちゃんがいるんだけどね、恋多き人で。近くでそういうの見てたら、わかるんだよね。好きな人ができたときの雰囲気とか。もしかしたら、マキ、好きな人と会うんじゃないかなあって。ため息、いっぱい吐いているし」


 残念ながら、エイダが言うような好きな人ではない。それでも、人と会うのは間違っていなかった。


 エイダには隠していたけれど、昨日、団長さんから手紙が来た。貴重な休みを利用してシャーレンブレンドから2日ぐらいかけて、ガレーナまでやってくるというのだ。


 会うのは久々だから、そわそわしているように見えたのかもしれない。ここはちゃんと誤解を解こうと思った。


「確かに人と会うけど、好きな人ではないよ」


「えー、本当に?」


「うん、本当」


 団長さんはわたしに告白してくれたけれど、どうしても受け入れられなかった。だから、わたしと団長さんの関係はまるで変わらない。


「おかしいなぁ。わたしの勘は結構、当たるのに」


 エイダは首を傾げている。湿気を含んだ髪はいつもよりくるくるしていた。


「好きな人ではないけど、大事な人には変わりないかも」


「大事な人?」


「うん。わたしを助けてくれた人だから」


 異世界に来て、奴隷になりかけたわたしを助けてくれた。乱暴な扱いを受けたときは「この野郎」と思った。だけど、だんだんシャーレンブレンドで過ごすうちに変わった。団長さんと会話することが楽しく、こうやって離れるのが淋しく感じるようにもなっていた。


「やっぱり、好きなんじゃないの?」


「好きじゃないから」


 しつこいエイダに否定するのも嫌になってきた。「好きじゃない」と言うたびに胸の辺りがもやもやしてくる。まるで嘘をついているような気がしてくるのだ。


「本当に?」


 もう否定したくない。このままだと話は終わらない気がして、たまらずわたしは腰を上げた。「もう、出る」とだけ告げたら、「ちょっと待ってよ〜」と言ってきた。わたしは怒っている振りをして無視した。

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