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槍とカチューシャ  作者: カーネーション


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第79話『仏様の部屋』

 朝一で、わたしはリーゼロッテ様の部屋の前に立っていた。緊張はひしひしと感じている。水を飲んだはずなのに喉はからからだ。試しに「あー」と声を出してみたら、かすれていた。落ち着くように深呼吸してみて、一息を置く。とりあえず、行こう。


 ノックをし、返事をいただいたところで部屋に失礼する。リーゼロッテ様は背もたれに体を預けることなく、まっすぐに座っていた。どんなときも気を抜かず、使用人の前でも使用人なリーゼロッテ様だ。


「マキ、おはよう」


 挨拶を先越された。本来ならわたしが先に挨拶をしなければならないのに。


「お、おはようございます、リーゼロッテ様」


 これ以上もたつかないように気をつけながら、リーゼロッテ様の机に近づいた。彼女の瞳は瞼の奥に隠れていて感情は読めない。それでも、朝の紅茶に口をつけていることから、邪魔をしたわけではなさそうだ。1段階で安心して、次の段階で再び緊張する。


「お嬢様のことで、リーゼロッテ様にご報告したいことがあります」


「何でしょうか。話してごらんなさい」


 リーゼロッテ様が机の上で手を組む。話を聞いてくださる体勢に落ち着いたようだ。


「お嬢様の体を蝕んでいるのは本当に病なのでしょうか?」


「病です。お医者様もそうおっしゃっていました。……あなた、何が言いたいのです?」


「えっと、その」練習はしてきたはずなのに、肝心なときに頭から抜けてしまう。


「まさか、お嬢様の病について、知っていることでも?」


 うわ、痛いところを突かれた。それでも、話すきっかけは作ってもらえた。


「実はその、お嬢様からあることを打ち明けられました。聞いたはいいものの、どうしたらいいか、わからなくなってしまって、ここに参りました」


 リーゼロッテ様はやれやれという感じで椅子から立ち上がると、机から周りこんでわたしの目の前まで近寄ってきた。


「あなたがわざわざここに来るとは余程のことではないでしょう。さあ、話してごらんなさい」


 わたしはお嬢様から聞いた話をそのまま伝えた。伝えると、リーゼロッテ様はいちいち驚くこともなく、落ち着いていた。


「そうですか、お嬢様が……なるほど、わかりました」


「信じていただけるんですか?」


「ずっと仕えてきたわたくしが、お嬢様を疑うことなどありません」


 それもそうだ。わたしよりも長くお嬢様に仕えてきたリーゼロッテ様だ。きっと、いろんなお嬢様を見てきたのだろう。


「しかし、証拠が無ければ、告発の仕様がありません」


「証拠ですか」


 でも、そんなもの、どうやったら見つけられるだろう。毒が入れられた皿も綺麗に洗われただろうし、お嬢様の証言だけでは何とも言えない。


「見つける方法は“あれ”しかありませんね」


「あれ?」


「突撃ですわ」


「突撃?」


 全然、意味がわからない。わたしを置き去りにして、リーゼロッテ様は仏様のように微笑を浮かべた。


「あなたもついてきなさい」


 まあ、ついていきますけれど。わたしはもやもやしたまま、リーゼロッテ様と距離を取りながら部屋を退出した。

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