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槍とカチューシャ  作者: カーネーション


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第70話『洗濯日和』

 部屋を出た後は簡単な朝食をとるために、エイダと一緒に料理室へと向かった。今日はキャベツとベーコンの入ったシンプルなスープ、ハーブパンのセットだった。美味しそうな香りが空腹にまで染み渡って、ぐうと鳴ってしまう。


 朝食を受け取っても、わざわざ使用人室に戻って食事をとるのはかなり面倒くさい。だから、その場で済ませるのがいつものことだった。


 部屋のすみっこに立てかけられた木箱を椅子代わりに裏返しにして、エイダと並んで朝食を食べる。パンをスープですくって口に運んだエイダは、顔一杯に笑みを浮かべた。


 「本当に美味しそうに食べるね」と言ってやれば、「だって、美味しいんだから仕方ないでしょ」とふてくされたように返されてしまった。


 エイダの言うように確かに美味しかった。料理人の見習いの子も半年間で大分、腕が上がったのかもしれない。彼に対して「ごちそうさま」と一緒に「美味しかったよ」と付け加えれば、屈託のない笑顔をもらった。


 食事を済ませた後、いよいよ使用人の仕事がスタートする。


 お屋敷の部屋の天井は高く、ホコリを落とすためのはたきが届かない。ベッドが天がいで守られているのは、ホコリや虫を防ぐためだ。天がいは昨日の午後のうちにつけ替えておいたし、今朝は汚れたほうの布を外へ運び出して洗濯をするだけでいい。


 エイダと息を合わせて、布をお屋敷にある井戸へと持っていく。大きな桶に井戸水を運ぶだけでも一苦労だ。わたしが井戸水をすくいあげる間、エイダは天がい布を素足で踏みつけながら汚れを落としていく。何度か水を流してはまた踏みつけるのを繰り返した。


 洗った布は大きく横に広げて、木々の間に張った縄に吊るしていき、あとは等間隔に布団ばさみを挟んでいけば終わりだ。


「ふはぁ〜、疲れた」


 そう言ってエイダは、虫がぴょんぴょん飛ぶ草むらでも気にせずに寝転がる。あまりにも心地よさそうな顔をするから、わたしも習って隣に倒れてしまったりする。


 陽射しの足りない朝の空気はいまだに冷たいくらい。解放された足の指の間を風がまたいでいった。


 今日の仕事ははじまったばかりだけれど、ずっと詰めているだけでは疲れてしまう。時にはこういう息抜きも必要だ。それをエイダから教えてもらった。


 ――だとしても、欠伸が出てきた。瞼を下ろしたら眠ってしまいそう。向こうから忍び寄ってくるゆったり感を振り払うように上体を起こした。エイダにもそろそろ次の仕事を促そうとしたら、どこか遠くて叫び声が聞こえたような気がした。


「エイダ、何か、騒がしくない?」


「え? 何が?」


「お屋敷で何かあったのかも」


 脱ぎっぱなしの靴下と靴を拾い、エイダに投げた。靴に足を突っこみ、勢いよく立ち上がった。


「ちょっと、マキ!」


 エイダを待っていられずに、駆け出そうとした時、前方から髪の長い女の子が駆け寄ってきた。その女の子の顔が誰なのか認識できたとき、思い切りぶつかってしまった。

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