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槍とカチューシャ  作者: カーネーション


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第52話『団長の昔話』

 メイドの仕事について聞きたかったのに、気づけば、話題は団長さんの昔話へと移っていた。それをわたしに話してどうするんだという気持ちはあったけれど、聞いてみると思いの外、おもしろかった。


 幼い頃の団長さんはさほど体は大きくなかったそうだ。それでも健康体で病を寄せつけない丈夫さは、昔からだったとか。しかも木の棒をぶんぶん振り回すような、やんちゃな男の子だったらしい。お気に入りの木の棒にガルーと名前をつけていて、周りから笑われていた話もしてくれた。


「あの団長さんにも幼い頃があったんですね」


 しみじみ呟いたら「それはそうですよ」とジルさんに笑われてしまった。確かに、誰にも幼い頃がある。当たり前だ。ということは、ジルさんにもあったのだろう。


「ジルさんはどんな女の子だったんですか?」


 気になってたずねてみたのだけれど、それを受けてジルさんは瞳を丸くさせる。驚かせたのかもしれない。そう思っていたら、瞳は細められて「ふふふ」と口元に微笑を浮かべた。


「わたしもジェラールのように落ち着きのない子どもでした。木登りをしたり、川で泳いだり、屋根に上って星を眺めたり、あまり女の子らしくはなかったですね」


「想像できないです」


 今のジルさんからやんちゃな女の子は想像できない。もっと、慎ましく礼儀正しいお嬢様のような女の子なら想像できるけれど。


「そうですか? この歳になっても、たまに馬の背に乗って、野を駆けたくなることがあります」


 馬に乗って野原を駆けるジルさんを想像してみると、格好良いかもしれない。


「馬に乗ったジルさん、見てみたいです」


「そんな大したものではありませんよ。それでも見たいとおっしゃるなら、一緒に遠乗りに出かけませんか?」


 まさかのお誘いだった。でも、お城から出ることはかなりあこがれる。騎士の馬の上よりかはマシだろう。断る理由が見つからなくて、「はい、もちろんです」と勢いよく答えた。


「嬉しいですわ。しかしながら、あの男が許すかどうか。それが問題です」


「あの男?」


「ジェラールです」


 ジェラール――団長さんがなぜ出てくるのか、その時にはわからなかった。でも、後日、お茶会の席で団長さんの許しをもらおうとしたら、「絶対にダメだ」と言われた。


「どうしてですか?」


「どうしてもこうしてもならんものはならん」


「理由くらい教えてくださいよ」


 頭ごなしにダメだ、ならんと言われてもこちらは納得できない。訴えたら、団長さんは眉同士がくっつきそうになるくらい顔をしかめて「ならんからだ」と答えた。


「だから、ならんってどうしてですか? わたし、知ってるんですよ。わたし以外の異世界人はお城の外に出てるって。つきそいがいれば、街に出てもいいはずです」


「誰がそのことをバラした?」


 リータだ。お城から出たことがないわたしに向かって、どれだけ街が素晴らしいか、聞かないのに語ってくれた。わたしより年下のリータが街に出られるのに、なぜわたしはダメなのだろう。


「ジルさんも一緒なのにどうしてダメなんですか?」


「あいつは護衛として心もとない。せめて騎士団の騎士が同行しなければ……」


「夏希くんとか」騎士団の騎士なら真っ先に夏希が思い浮かんだ。


「あいつは騎士として独り立ちしていない」


「それなら、アーヴィングさ」


「ダメだ!」


 まだ言い切っていないのに。


「じゃあ、誰かいます?」


「……俺だ」


 見てみろすごいだろうと言わんばかりに、にやりとする団長さんだけれど、わたしの感情は冷めていた。

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