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槍とカチューシャ  作者: カーネーション


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第15話『交流』

 着替えを終えたわたしたちは、ぞろぞろと大移動して、最終的に談話室へとたどり着いた。ジルさんが言うには「これから取り調べをいたします」ということらしい。一人ずつ呼び出しを食らって、談話室から別の部屋に移動するシステムだ。


 ――そもそも取り調べって具体的に何するの? と考える。やっぱり、どうやって来たのかとか、どこの国から来たのかとか、そういう話だろうか。


 とにかく、日本の片隅にあるボロアパートの階段を踏み外したために、わたしはこんな世界にやってきてしまった。それくらい話せばいいだろう。


 大人しくソファに腰をかけて、順番を待つ。その間に、世話係の人たちがお茶を入れてくれる。深い赤色をしたお茶はイチゴのような甘酸っぱい香りもあって、もしかしたら、果実が入っているのかもしれない。あんまり飲み慣れなくてカップに口をつけないでいると、金髪美女が小首を傾げていた。


 金髪美女の細くて可憐な指がカップの取っ手を支えている。小さな唇をカップのふちに寄せる仕草が様になっていて、「綺麗」とため息がもれそうだ。


 ペットボトルのがぶ飲みが主流のわたしには到底、真似できそうにない。でも、比べるだけ無駄だ。あっちは英国(勝手に決めた)の上流階級(これも勝手に決めた)で、こっちは日本の一般市民。


 変な気合いを入れてカップの取っ手を掴み、勢いよく口をつけて傾ける。そうしたら、めちゃくちゃ熱かった。自分が猫舌だとすっかり忘れていたのだ。


 1人消え、1人消え、どんどん談話室のなかの人が消えていく。そんなこんなで、とうとう金髪美女とふたりきりになった。


 こうして黙っているのもつまらないし、少し話もしてみたい。そう考えて、彼女が英国の上流階級だとしたら、英語がしゃべれると行き着いた。つまり、少しは話ができるかもしれない。わたしが英語を聞き取れれば、もっと良かったのだけれど。


『あなたの名前は?』


 いくら英語を使う機会が少なくてもこのくらいは覚えている。


 どうか、通じますように。そう思って彼女の動向をうかがった。待ったのに彼女は口を開こうとはしない。カップをソーサーの上に戻し、うつむきかげんになる。どうもわたしの英語が通じなかったらしい。残念だ。諦めかけたとき、『わたし』と震える声がした。


 彼女の細い指がソーサーを差し出す。そこに人差し指でアルファベットが書かれる。『フィナ』で指が離れた。


『そう、フィナね』


 覚えやすそうな名前で安心した。フィナはうなずいてくれる。


『あなた、は?』


『マキ』


 名字のほうを告げると、フィナは小さく笑った。わたしもフィナの真似をしてソーサーの上に『マキ』を書き出す。彼女が『マキね、わかった』と嬉しそうに答えるから、こちらも意味もなく『フィナ』と呼びかけた。フィナは微笑んでくれた。

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