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大事なもの 前編

ある夏のことだ。

僕は幼馴染みと共に帰郷していた。僕と幼馴染みは田舎出身で高校入学とともに上京したのだ。電車に揺れて三時間、バスに乗って一時間のそれなりの長旅であったが幸い話し相手には困らなかった。

地元で都会の忙殺とは無縁の緩やかな日々を過ごし、学校の課題も終え、遂に明日で再び上京となった日に幼馴染みから連絡があったのだ。一緒に遊ぼうと。


「…で遊びがこれか」

遊びとは近所のガキんちょ達を交えた虫取り大会だった。確かに小さいときにはよくそういうものもしていたが…

「いいじゃない。久しぶりにこの子たちとも会えたのよ?」

「いやまあ確かにそうだが…」

僕が四月に上京してから四カ月経った。上京する前はコイツ達とよく遊んでいたものだ。

「…まあいいか」

僕としても遊ぶのには賛成だ。帰郷の最終日が遊び尽くしというのも悪くない。

「おっしゃー、ガキども!得物は持ったか!今からこの村の森林部に潜むモンスターの討伐クエストに出発するぞ!各自着替え、食料を持ったな!?なら出発だー!」

「ただの虫取り大会なんだけどね…大仰すぎるよ」

かつてないノリを見せ、少年時代に戻ったような気になる。子供たちはおぉーと乗り気を見せ、幼馴染みは冷静にツッコミを入れていた。そして森に入っていくーー


虫取り大会は日が傾き始めるまで行われた。都会と違いここには沢山の自然が残っている。後世まで残したい日本の原風景だ。だが都市開発が進み、この風景も消えつつある。この村も次第に消えてしまうのだろうかーー

ということは一切考えずに僕はゲットした虫をガキんちょ達に見せびらかしていた。セミやバッタはもちろんカブトムシやクワガタといった甲虫類までもレパートリーは豊富だった。ガキんちょ達はすげーとかかっこいいーなどの驚嘆を漏らしていた。年甲斐もなく本気になってしまった。

「僕も大概子供だな~…っとそれにしてもあいつ遅いな…」

森を見た。夕暮れが森を赤く染め上げている。ひぐらしの鳴き声が物悲しく木霊していて、夏の終わりを告げ、嘆いているように聞こえた。いや、それは僕の心だったのかもしれない。

すると森の奥から一人の影が見えた。茂みをガサガサ鳴らして慌ただしく走っていた。

「ご、ごめーん!遅れちゃって!」

僕は毒気を抜かれ、呆れの溜め息をついた。

「…なんだってそんなに遅いんだ……って何だよその束」

彼女はああこれ?という風に持った束を掲げた。それは緑色の草花だった。黄色や赤などの不純物色はいっさい含まず、ただ緑の濃淡だけで構成されていた。

「んーー?これはね……」

はい、と束を渡される。何だこれは?

「誕生日プレゼント」

「………あぁ」

そういえば。今日は僕の。

「忘れてたの?」

「いや……」

忘れてたわけではない……と思う。ただ特に意識していなかっただけだ。ガキの頃みたいにプレゼントを渇望する時期はもう過ぎてる。そもそも貰えるとも思っていなかった。

「皆もあるのよ、ね、皆」

にーちゃんこれーあげるー、これおれの小遣い全部使ったんだぜ!、…あげる、など小言と共にいろいろなプレゼントを貰った。

「ま、マジで……皆ありがとな…」

僕は子供たちの頭を撫でていく。男の子は微妙に嫌がっていたが無理矢理にでも撫でた。僕自身そうしたい気持ちだったのだ。

「ねー私はー」

「お前はガキか…」

彼女は普通に要求してくる。頭を低くしてんっと突き出してくる。

「しょうがねぇな…」

頭に被った麦わら帽子を取り、撫でる。彼女はんぅと可愛らしい呻き声を上げ、目を細める。

「……サンキューな、お前が考えてくれたんだろ。それくらいわかるぜ」

彼女は僕の方に首をぐるっと回転させ、目を見張っていたが、やがて、

「…どういたしまして♪」

と言った。

夕日は傾いており、急いで村に戻り子供たちを送迎した。といって徒歩でだが。ついでに遅くまで出歩かせたことも親御さんに謝罪した。全員顔見知りだったので特に何も言われなかったが。

そして僕と彼女は並んで帰途についた。


そして再び帰る日。今の僕の家は都会のマンションだ。田舎のきれいな空気を名残惜しみながら村のバス停まで来た。出迎えには双方の両親に加え、近所のおじいちゃんやおばあちゃん、それに昨日の子供たちまでいた。昨日のお礼を告げて、バスに乗り込んだ。乗り込んでからも見える限り手を振り続けた。隣をみると彼女も同じようにしていた。僕ら二人は顔を見合わせて笑った。

バスは村の道路をゆっくりと走り出し、次第に家々が見えなくなった。夏休みが明けてまたこれからめんどくさい授業が始まると思うとすごく憂鬱になった。村で過ごした時間がものすごく貴重なものに思えてくる。実際貴重なわけだが。二人はこれからの新たな学校生活に希望と憂鬱を持ちながら思いに馳せていた。

それは日常で、ありふれた光景で、特別なものなんか何もなく、ただ過ぎてゆくだけだった。だけど今はそれが心地いい。一般的な青春と言えるかどうか怪しいが少なくとも僕はそれが青春だと思っている。隣の彼女も、きっとーー

バスは既に山間部を走っており、くねくねとした蛇状のカーブが目立つようになってきた。時々真っ直ぐな道路も見受けられる。近くの看板には黄色のバックに『猿注意』と書かれているのが通り過ぎた。よく通るのかもしれない。運転手さんには十分注意してほしいものだ。僕らのためにも、猿のためにも。


だが、楽しい帰り路はここまでだった。


悲劇は、突然に、起こった。


ホント、唐突にーー

最近後書きになにを書いたらいいのかわからなくなりました。わからないというよりネタ切れですね、はい。ネタが無いのでさっさと終わりたいと思います。

御意見や御感想等御座いましたら気軽に投稿して下さい。

それではまた。

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