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50音順小説

長崎県について調べてみました。 50音順小説Part~な~

作者: 黒やま

Featuring 長崎。

「なかなか良かったですよ富山(とやま)君、よく出来てました。では次長野(ながの)君。」

「はい、宮城(みやぎ)先生。僕は今回の夏休みの自由研究で長崎(ながさき)県について調べました!」

長野少年の発言にクラスの雰囲気はざわついた。

「なんで自由研究でそんなの調べてるんだよ、ふつうは朝顔の研究とかだろ。」

先程発表した富山少年は真っ先に口を出した。

「そうそう、大体やるんだったらお前長野なんだから長野県について調べればいいじゃんか。」

次いで石川(いしかわ)少年が口にする。

「チッチッ分かってないな。一般人は北海道(ほっかいどう)とか沖縄(おきなわ)なんてありふれた

 観光地を調べるだろうがツウは一味違うんだよ。」



ここは夏休み明けの某小学校5年2組。

現在夏休みの課題であった自由研究の発表をしていた。

「観光名所の多い場所ばっかり調べてもつまらないだろう。それに今は地域活性化が叫ばれてるしな。

 ほら、B-1グランプリとかさ。だから俺もそれに協力して地域の活性化をってね。」

「とか言いながら、本当のところは単に都道府県テストで長崎だけ書けなかったのが

 悔しくて調べてたらハマッちゃっただけのくせに。」

「うっうるさいな。千葉(ちば)、余計なこと言うな!」

隣の席の少女千葉に本音をつかれとまどった長野少年は黙らせようとしたが

全員に聞こえた後だった。

「図星か、まぁ長野は単純明快だからな。」

「というか長崎は地形が特殊で分かりやすいだろう、なんで長崎を間違える。」

さんざん酷いことも言われたにも関わらず事実なので返す言葉もない。

「まぁまぁ落ち着いて。とにかく時間も限らていることだから長野君、進めてくれるかな?」

「はい、宮城先生。」

宮城教諭に先を急がれると長野少年は毅然とした様子で前の方へ歩む。

長野少年は学会で発表するかのようにコホンとひとつ咳払いをする。

「では、僕の発表をお聞かせする前にみなさんはどのくらい長崎について

 ご存じであるか気になりますね。誰か何でもいいのでおっしゃってみてください。」

「はい。」

「はい、宮崎(みやざき)さん。」

指名され挙手した少女宮崎は眼鏡をクイと上げ彼女の豊富な知識を振りまいた。

「まず、長崎県は九州の西端部に位置し県庁所在地は長崎市です。

 廃藩置県以前は肥前(ひぜん)対馬(つしま)壱岐(いき)の三藩に分かれていました。

 外国との貿易に関しては1550年以降葡萄牙(ポルトガル)との交易を行い

 その際日本への布教を目的として来航したイエズス会のフランシスコ・ザビエルにより

 キリスト教が西日本を中心に勢力を伸ばしていきました。

 だから教会なんかも多いですし。

 有名なキリシタン大名としては大村(おおむら)純忠(すみただ)有馬(ありま)晴信(はるのぶ)なんかがいますね。

 江戸時代以降は長崎は天領=幕府の直轄領となり南蛮貿易の中心地として発展していきました。

 しかし鎖国が行われるようになると貿易可能な港は出島に限定され和蘭(オランダ)(シン)との

 貿易のみをするようになりました。ちなみに現在出島は国の史跡に指定されています。」

「ありがとう、宮崎さん。さすが委員長とでもいうべきかな、教科書に書いてあることそのものだよ。」

「おいおい、長野はこれよりすごいこと言えるんだろうな~。」

富山少年はニタニタしながら教壇に立つ長野少年を見上げる。

「黙れ富山、その憎まれ口を叩けなくしてやるからな。」

長野少年と富山少年の間には火花が散っている。

「では長崎の名産品や行事について・・・」

「はーい!はーい!」

「どうぞ、他に言いたいことがあるんですか。香川(かがわ)君。」

今すぐにでもメタボと判断されそうな体を無理やり机といすの間に押込めて

窮屈な姿勢からまっすぐ上へと手を挙げている香川少年はよだれを垂らしている。

「食べ物のことならオイラにお任せ~。」

「いや、それは僕が話そうと・・・」

長野少年の話などお構いなしに香川少年は話を進める。

「やっぱり何と言っても長崎ちゃんぽん!もやしのシャキシャキ感にこってりしたスープがたまらない。

 今や全国展開しているチェーン店も存在しているくらい長崎を代表する郷土料理。

 デザートとしてはカステラだね、ポルトガルから伝来された菓子を日本風に改良したのがカステラ。

 カステラからはずしたあとの紙を舐めるのが恒例行事だよね。

 そして最近注目されているのが佐世保バーガー、あのボリューム感がオイラには良い!

 でも個人的に長崎のソウルフードNo.1は皿うどん。はぁおなか減った。」

「ぼっ僕の言おうとしたことが・・・。」

「じゃあイベント関連は俺が話そうかな。」

「やっ山口(やまぐち)!」

親が旅行会社に勤めている爽やかイケメン山口少年は香川少年の後をついで話し始めた。

「まぁ、長崎県のお祭りでいえば長崎くんちが最も有名だろうね。長崎くんちは長崎おくんちとも

 言われててね、長崎市の諏訪神社の祭礼なんだ。あっ、ちなみに諏訪神社の本社は長野県諏訪市に

 あるんだ。こう見ると長野君と長崎県にも関連があったってことが分かるね。

 話を戻すと日本三大くんちの一つであり南蛮文化を色濃く残す秋の行事ってとこかな。

 あとみんなが知ってそうなのはハウステンボスとか。一言でいうとオランダの街並みを

 再現したテーマパークって感じ。ドラマや映画のロケにも使われていて数年前までは赤字続きで

 存続が危ぶまれたけど現在はまた人気の観光地として人も増えてきたんだ。

 ハウステンボスは天皇・皇后夫妻やあのアメリカの有名シンガー兄妹も

 訪れたことがあるくらい有名な場所だよ。2010年からは冬の時期にイルミネーションを

 行ってるんだ。ほかにも様々なイベントがあって恋人や家族連れにはうってつけだよ。

 それにもうひとつこれはあまり知られてないけど長崎ランタンフェスティバルってのが

 あってね、もともとは長崎の中華街に住んでいた華人が旧正月に行っていたのを長崎市全体での

 お祭りにしたんだ。1万個以上のランタンが輝かしく長崎の街を照らすんだ。

 それはとてもとても綺麗なんだ。ぜひ一度は行ってもらいたいね。」

彼の説明にクラスの女子のほとんどが得も言えぬ溜息をついていた。

それをよそに長野少年は皆に背を向けて一人なにやら一枚のメモ用紙を見て焦っていた。

「あと調べたことが残ってるのは偉人、有名人だけ・・・。

 よしっ、みんな聞いてくれ!これから僕の本領発揮だ。

 ではこれから話すのは長崎県の著名人を・・・」

「なら私も長野君のお助けに入りたいと思います。」

奈良(なら)さん!ちょっとそれ以上はご勘弁を。」

少女奈良はわざと長野少年の方は見向きもせず棒読みで続ける。

「長崎県は多くのスポーツ選手を輩出しています。

 日本プロレス界の父と言われた〇道山や個人総合2連覇を成した体操の内村〇平。

 野球に関しては引退後タレントや実業家として活躍している新〇剛志なんかがいます。

 俳優さんでは〇所広治、〇生祐未なんていう大物から仲里依〇の若手までいます。

 歌手でいうとE〇I〇EのT〇KA〇IROとか三〇明宏がいます。

 そして長崎県で一番の有名人といったら福山〇治をおいてほかにはいないでしょう。

 歌手としてだけではなく俳優も務め大河ドラマでは主演の坂本竜馬(さかもとりょうま)を演じました。

 坂本竜馬も長崎にゆかりのある人物で日本最初の商社亀山社中(かめやましゃちゅう)を長崎県に設立した

 人物でもありそれはのちの海援隊(かいえんたい)の前身で薩長同盟(さっちょうどうめい)を結ぶ大きな鍵となりました。以上。」

「あぁ・・あぁ・・・」

「で、長野よ。みんなの知っている長崎県の知識は出尽くしたようだ。」

誰も挙手しなくなった教室で石川少年が長野少年に告げた。

富山少年は笑いをこらえられないようで腹を抱えて必死で押さえている。

「まさか自分が調べたこと全部言われちゃったとか・・・」

「そっそんなわけないだろ!僕のグレイトな発表をとくとご覧あれ。」

少女千葉にまたもや図星をつかれ思わず虚勢を張ってしまった。

クラスの目は長野少年をとらえている。

長野少年が何も言えずにいると宮城教諭が助け舟を出そうとしたが富山少年に止められた。

「大丈夫宮城先生。長野ならきっと今までのよりすんごい発表してくれるよ。」

余計プレッシャーをかけてくる富山少年をにらみつけるが

そんなことをしてもいいアイデアは浮かんでこなかった。

こうなったならば最終手段、奥の手を使うしかなかった。

「お・・・」

「お?」

「お腹が痛いので保健室行ってきます!!」

それだけ言うと誰も言葉を発する前に長野少年は教室のドアを開け廊下を突っ走っていった。

それはどうみても腹痛で保健室でいく児童には見えなかった。

日本を今一度、洗濯いたし申し候。

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