第2話 未来からの使者
登場人物
山田敏志 (男)
海上自衛隊所属イージス艦〔きりしま〕副長兼船務長 二等海佐
弱冠27歳で二佐(中佐相当)に昇進したエリート中のエリート。
好きなもの 海 嫌いなもの 日本の平和を脅かすもの
小野田昭造 (男)
海上自衛隊所属イージ-ス艦〔きりしま〕艦長
その道20年のベテラン。鋭い戦術眼を持つ。
好きなもの 妻 嫌いなもの 酒
突然だが、読者のみなさんは『パラレルワールド』という言葉をご存じだろうか?(確認)
これはそのうちの一つ(作者にとって都合のよい世界)です。
まず、この世界の概要を説明します。
この世界は19世紀までは我々の世界と同じ歴史を歩んでいましたが、大日本‶皇国‶として戒告した日本は清(当時の中国)や朝鮮との融和政策を行っていた。
一方のヨーロッパでは、歴史通りに「サラエボ事件」をきっかけに欧州戦争(第一次世界大戦)が勃発するも、長期戦の兆しが見え始めた際、ドイツ帝国皇帝フリードリヒⅡ世が協商国と講和する英断を行い停戦した。
そして中国大陸ではソ連の南下政策による中国侵攻に対し、日本が中国軍を支援、国境線から一歩も引かない奮戦を見せた。
再び欧州では、世界恐慌の影響が残るところに、ドイツ‶公国‶の総統アドルフ・ヒトラーが史実と180度変わり、融和主義を唱え「人類解放宣言」を発表した。これに、日中朝の三国同盟を始めとした多くの国が参加した。
しかし、この発表による植民地の先住民等の反乱を恐れた欧米列強はこれを弾圧するため、全ての軍縮条約を凍結した。これに「自由多人種同盟(正式名称)」も対抗すつため、軍拡を再開した。
そして、後に歴史を変える『大日本皇国の長い一日』が始まる(前置きが長くてすみませんm(_)m)。
1937年5月15日 東京都 大本営
今年、海軍次官となった山本五十六中将は空軍設立の中心人物として軍部や閣内各所に根回しをしていた。
もっとも、空軍の戦力は既存の陸軍航空隊を海軍陸上航空隊と合わせて独立させるだけなのでそれほど予算は食われないだろうと予想された(まぁ、再編するのは結構骨が折れると思うが…)。
一方で、世界で初めて実用型航空母艦を建造した大日本皇国海軍が満を持して計画する大型航空母艦の建造予算とそれに乗せる航空兵の育成費も内閣の予算委員会で可決される予定だ。
しかし、そんな「航空主兵論」に強く反発する者たちがいた。
「大艦巨砲主義者」達である。
彼らは、それを象徴する超弩級戦艦の建造を計画し、あろうことかすでに建造準備段階にまでこぎつけたのである。
計画では、18㌅(46㌢)砲を搭載する超々々弩級戦艦と16㌅(40.1㌢)砲搭載のうえ、30ノットを超える超々弩級高速戦艦を、前者は呉と長崎で、後者は同盟国の中国・旅順の新造ドックで建造する予定だという。
―――戦艦なんぞ、時代遅れだということが話からねぇのかねぇ…。
悲しきかな、先見の明を持たない無能者に、山本次官は内心頭を抱えながら帰ろうとしたところ…、
事務員
「山本次官!!」
民間の事務員(この世界の大本営では、軍事機密に触れない事務管理を一般公務員に任せている)に声をかけられた。
山本次官
「どうかしたか、そんなに慌てて?アメリカ軍が攻めてきたのか?」
山本は冗談を言って、この血相を書いている事務員を落ち着かせようとしたが、逆に顔を真っ青にした。
事務員
「冗談なしにそのまさかかもしれないのです!」
山本次官
「な、何だとぉー!?」
そして次の瞬間、山本次官は踵を返して大本営内にある中央会議室に歩き出した。否、駆け出した。
山本次官
「敵艦隊は?!何十、いや何百隻いる?!」
事務員
「そ、それが…」
山本次官
「何だ?」
事務員
「たったの8隻だと…」
山本次官はそれを聞いた途端、口をアングリと開けたそうであった。
更新が遅くなり、申し訳ありませんでした。
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