第1話 出航
遅くなりました。書き直しました。
最初のと若干違いますが、ご了承ください。
第1話 出航
艦長
「両舷前進原速」
操舵手
「ヨーソロー」
『キティホーク回航艦隊』の先頭を航行する海上自衛隊イージス艦〔きりしま〕の艦橋で同艦の副長(兼船務長)である山田敏志二等海佐は厳しい顔をして海を眺めていた。
「不満そうだな?」
突然、後ろで指揮を執っていた艦長の小野田昭造一等海佐が声をかけてきた。
山田
「艦長…」
小野田
「顔に書いてあるぞ。『なんで我々がこんなことしなければならないのか!』とね」
山田
「…申し訳ありません」
小野田
「いいんだ。お前のほかにも不満を持っている奴は大勢いるだろうよ、俺みたいにな。」
山田
「…」
小野田
「だがな、例え他国の艦でも、この国を守ってくれたことに変わりはしないんだ。だからこそ、せめて俺たちが送別してやる義務がある」
山田
「艦長、自分が間違っておりました。自分にもシーマンシップがあります。あんな些細なことで腐っていた自分が恥ずかしくなってきました」
小野田
「そうだな…」
「なんだか、雲行きが怪しくなってきたな…」
海上自衛隊特別護衛艦群の司令官、木村源吾朗海将補が誰に言うでもなくつぶやいた。
確かに、出港時にはそれほど多くなかった雲が、今は空一面に厚く広がっていた。
しかも、あれほど凪いでいた波も次第に高くなってきた。
「観測班や気象庁の発表では、高気圧の影響で回復に向かうと言っていたのですが…」
艦の航行に関する職務を取り仕切る航海長の木島吉史一等海尉が木村のつぶやきに真面目に答えた。
小野田
「…何か、イヤな予感がするなぁ」
木島
「か、艦長!いきなり何を言い出すのですか!?そんなのとあるわけな…!!」
小野田艦長の一言を何かの冗談だと思った木島が言い返した直後、〔きりしま〕からわずか1㎞先に落雷が落ちた。
山田
「こいつはただ事じゃない…!」
山田が驚きながら窓の外を見た。
すると今度は、あろうことか〔キティ・ホーク〕に雷が落ちた。
いや、正確には、光の柱が曇天から伸びていき、〔キティ・ホーク〕に届いた瞬間、それこそ核弾頭が炸裂したのではないかというほどの閃光が辺りを包み込んでいった。
10分後、あれほど厚く覆っていた雲は、今ははけで薄く伸ばしたようなほどになり、波も穏やかになっていた。そして…
その海域にいた8隻の軍艦も跡形も無く消え失せていた。
もう間もなく春休みに突入します。
次話以降も乞うご期待して下さい。