一風
―8月18日 PM03:28
「はぁ、そうなんですか。」
外はよく晴れている。窓から流れ込む風が、ねばっこく私の腕に絡み付く。
「…はい。せいぜい、あと1週間の命でしょう。」
…やっぱりね、前からそんな気はしてた。医者が私を見る目が、同情を含むようになっていたから。
…いつからだっけ。確か一ヶ月前くらい。
ってことは、この人そんな前から知っていたんだ。何も知らない私を見て、楽しんでたのかな。…多分違う。こんな人はそんなことをできるタイプじゃないもの。
にしても、この先生もよく他人のことに哀しそうにできるよね。もしかして、毎回こんなに悲しんでんのかな?、いくら医者だといって…。患者の意思は関係なしに、作られた『嘘の寿命』まで生きさせるタイプだな。…まぁいいや、早く帰りたい。
「じゃあ帰っても…」
「ですが!まだ可能性はありますよ!!少し値は張りますが−」
「いいです。どうせ点滴とか薬で1週間かそこら寿命を伸ばすだけですよね?それとも、生死の間をさまようんですか?……そんなお金、私にはないです。大体、この病気って楽に死ねられるんですよね。いいじゃないですか、それで。長く生きれたけど苦しみながら死ななきゃいけないのより、短く生きて楽に死ねたほうがいいと思います。」
「!……あなた、生きたいとは―」
「はっきり言って、思いません。では、それだけなので。失礼します。」
「あっ!………ちょっと待ってください。どうしてそんなに生きることを嫌うんですか?」
思いがけない一言に、私は思わず歩みを止めてしまう。
「…………あなたには関係ないでしょ!!」
それ以上追求されるのが嫌で、返事も聞かずに私は部屋を飛び出した。
いきなり部屋を飛び出した私に少し驚きながらも、後を追おうとはしない看護士。……偽善者。
見掛ける全ての人が、私のことを噂しているように思えた。
やっと着いた。私のちっぽけな家。ひとりでゆっくりできる、唯一の場所。疲れた体を癒すため、私は深い眠りについた…………
ぐちゃぐちゃですw