表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

足に従う散歩

作者: しらま
掲載日:2026/04/14

学校に向かっている。

窓の外は変わらない景色だ。

いつもの様に単調な色。


高校に上がってから、電車登校になった。

最初こそワクワクした気持ちもあったが、慣れてくると苦痛以外の何物でもない。


高校の最寄り駅に到着したらしく、大勢の同じ制服を着た生徒が降りて行く。

ホームに溢れる人。


人。人。人。


それはまるで洪水のように、人を飲み込んでは巨大化してゆく。


憂鬱だ。

マッスルメモリーの力のみで立ち上がる。

楽しかった頃に獲得した習慣。

それをフル活用し、学校への道を辿る。


だが今日は何故だか、足が向かわなかった。

学校が嫌いな訳では無い。なのに何故か足が回れ右をして、好きな所へ行こうと誘ってくる。


まるで目的地があるかのように。重力の方向がそちらへ少し傾いたかのように感じる。


こうなってしまえば学校へ向かうことは不可能だ。

足が反乱を起こしたとなれば、従う他ない。


足が反乱を起こしたのに、どうして学校へ行けと言うのだろう。


なので足に従う事にした。

足はまず、同じ制服から隠れることを選んだ。


私は動悸が酷くなってきた。


足は隠れる場所をしらなかったので、 諦めて、人通りの少ないであろう道に入って散歩することを選んだ。


私は先生に連絡するべきかを悩んだ。

学校はたいして問題ではないものだと思い始めた。

第一連絡したところで何といえばいいのだろう?


足は脳みそと仲良くするする事を選んだ。

足が運び、脳が報酬を出すのだ。

だが大半は横領されていた。 この私に。


祭り囃子が聞こえてきたので、そちらに向かおうと言った。 足は賛成した。


囃子の近くまで来た。

どうやらお祭り男か何かが練習していた音だったらしく、建物の中から聞こえた。 足は深く考えなかったが、脳みそは落胆した。


足は横断歩道を待とうか悩んだ末、横断歩道が無い方向に向いた。


歩道橋を上りたくなったので、もっと歩くことにした。


歩道橋には種類がある。大きさはもちろん。自転車などへの配慮具合もちがう。


電話がかかって来た。

鬱陶しいので電源を切った。 私はスマホを見たくなかったので、むしろ好都合だった。


しばらく歩くと、不意に地球が丸い事に気がついた。


どうやら海だ。 もう来ることは無いであろう海岸で、砂浜だ。


散歩には、隠しゴールのようなものが存在することに気がついた。


明確に定義されないどこか。 その存在に気がつかれ、散歩は悔しそうに笑った。


だがここでは無いようだった。 ならばもっと歩くまでだ。


もしかして、と思い砂浜への階段を下りてみる。

大雨の時以外に沈むことがあるのか分からないような、乾いた四角い消波ブロックの、カプセルホテルのようなちょうどいい隙間に入る。


違った。だが気分は最高だ。


ならば、と 学校のある山の上に行ってみることにする。

前から気になっていたのだ。


そう思い、砂浜の階段を上ると、木が生い茂り、灰色の鳥居を持つ古い神社が見えた。

遊んでいる間に移動していたらしい。


どうにも招かれた気がして入ってみると、腑に落ちるような感覚がした。

どうやらここが。此処こそが、私の散歩の目的地だったらしい。


丁度目にはいるようなところにあったベンチに座る。


この場所こそが、求めていた場所だ。 とベンチが言っているかのように、空気も、時間も、光でさえもゆっくり進んでいる。


もう二度と来れないのだろう、と直感で分かる。


偶然出会った場所は、もう偶然には出会えない。

次はこれを求め、期待して来る。


そういうものなのだ。


家に帰れば怒られるだろう。

学校に行けば怒られるだろう。


今はそれもどうでもいい。

私が時間で、光で、大気だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ