表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界インタビュー ~転移者の世界の歴史  作者: ほすてふ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/13

005 帝国3

 宗教の話をしましょう。

 え、いや、宗教の話が好きなわけではなく。

 話の流れとして結構影響大きいよなと思いついたので。


 結論から述べますと、国にとって宗教は不治の病のような存在です。


 はい。病です。

 国を蝕むけれど治すことができない病気。


 先日、宗教について触れたときには、生活の知恵と言いましたね。

 しかし、帝国の時代には別の状態になっていました。

 民族のものだった宗教は、複数の民族を統合した帝国では時代遅れのものとなっています。

 一部の宗教は教えを変えて生き残ったり、新しい宗教が生まれたりもしました。


「教えを変えるとは?」


 民族の宗教だったものが、より広く多くの人を対象にする者になったり、他の宗教をより強く排斥したりするようになったりですね。

 活動域が広がれば、はじめの教えがミスマッチを起こすようになります。地域、時代、社会構造が違ってくるので。


 そして、帝国に適した宗教が選ばれて、国教となる。いくつか生まれた帝国で、それぞれそのようになりました。


「そうなる根拠があるのだな」


 自分の考えになりますが。

 群雄割拠を経て大帝国が生まれると、国にとって理想的な民の気質が変わりますよね。

 争い合う他国があれば、戦争に否定的でなく、兵として活躍する人材と、そんな人材を後押しする気風が必要です。

 しかし、そうでなければどうでしょうか。

 敵がいないのに国内が武力を尊ぶ気質のものであふれていたら?

 支配者にとって都合がよいでしょうか?


「いや。反乱を警戒することになるであろう。先日の話に合った、法治の帝国なども、まさにそうだ」


 まさにその通りで、平和なら民の気質は穏健で、飢えに従う気質である方が都合がいいですよね。

 しかし、民の気質というのは容易に変わりません。何世代かかかります。

 なので成立直後の帝国は血の気の多い臣下や民に苦労します。


 そういう時に現れるのが宗教です。

 穏やかに真面目に生きて偉い人に従いましょうというような内容の宗教があったらどうですか。

 支配者としては採用したくなりませんか。

 民がそういう教えに従うのであれば、国の気風も落ち着くことが期待できます。


 さらに、一つの宗教に統一すれば、一体感も得られます。

 国全体の一体感、仲間意識は、外敵への抵抗だけでなく、治安の安定に寄与します。


 そういった理由で国教とされるのが一つ。


 もう一つは逆の道筋です。


 宗教は信者の奪い合いです。

 これは国同士の群雄割拠と同じようなものです。世俗の利害とは別に宗教的な利害で争っているわけです。

 しかし、宗教は国の枠を超えて広まることもできます。世俗の利害と宗教の利害は別だからですね。

 そしてそんな宗教ほど、帝国の国教になりやすくなります。

 まず、そういう宗教は信者が多い。信者となる条件が幅広いから国を超えて広まるわけです。さらに信者を増やそうとする姿勢がある。

 信者が多い宗教はを抱える国は、その宗教の意向を無視しづらくなりますよね。

 宗教を旗印に反乱でもされたら困りますし、なんなら国の首脳が信者であるかもしれません。

 国から便宜を受けた宗教はより勢力を増しますから、国教にまでなる場合もあるというわけですね。


 どちらの場合でも、宗教は帝国に適応し、あるいは帝国は宗教に適応して共存するでしょう。



 さて、その後、時代が変わるとどうなるでしょうか。


 例を挙げて考えてみましょう。

 宗教の力を借りて民を大人しくさせることに成功してから、外敵が現れたらどうでしょうか。

 国としては戦うための戦力とそれを支える気風がまた必要になりますね。

 しかし宗教の側は教えを変えるわけにはいきません。


 環境や時代のミスマッチがまた起きるわけです。

 戦のことに限りません。


 全知全能とされる神の教えにない植物が遥か遠方の地で発見され、持ち込まれました。

 その植物は栽培が容易で栄養価も高く、荒れ地でも育つ有益な作物ですが、神の教えの中にないことを理由に、長い間悪魔の植物として栽培が禁止され、これを導入できていれば避け得た飢饉で大勢がなくなる、そんなこともありました。


 なにがいいたいかといいますと、宗教の利害と国の利害は違うということです。

 短い期間であれば有利に使えることもあるかもしれませんが、何百年も続けば技術や社会の発展で状況が変わり、現実の利益と相反することもあるのです。


 その一方で、宗教がなくなればいいかというとそういうわけでもないのです。

 今話している時代からはずっと後のことですが、宗教を教えないという社会実験が行われたことがありました。

 その街では精神が不安定なものが多くなり、治安が非常に悪いという結果が出たのです。

 実験のやり方が正しかったのかはわかりませんが、ひとまず宗教が人間の精神安定と治安に寄与する部分があることは確からしいと考えられています。


 それで不治の病と評したわけです。


「宗教は人間にとっては必要だが国にとっては邪魔であるというのか」


 国は合理性によって運営されなければなりません。なぜなら、競争相手がいるからですね。それは敵国であったり、内乱であったりします。

 宗教が生まれた環境から社会が変わっていくほど、宗教の教えからは合理性が失われていきますよね。

 宗教が自身を変えることは難しい。長く続けば続くほどそうなります。

 国も制度を改めるのは難しいですが、滅ぶような事態を前にすればできることもありますし、一時的な措置として例外を認めることもできる。


 さらに。

 権力を持つと腐敗するのが世の常です。全員が腐敗するわけではありませんが、ある程度の割合で現れます。少なくとも自分の世界の歴史では。

 腐敗というのは組織から見ると無駄、余計なコストですよね。

 強大な帝国は当然腐敗します。

 そんな帝国に庇護される宗教も腐敗します。

 国は自身の腐敗に対してアプローチ出来ますが、しかし宗教の腐敗に対してはどうでしょうか。

 別組織ですから手を出すのは難しいですよね。


 というか、国以上に帰属意識が向きかねない組織が存在するというのは、実際邪魔ではないですか?

 利害が一致している間はいいんですよ。

 将来そうでなくなる可能性が高いです。

 技術の発展、新たな発見、人間が進歩する限り世界の前提がいつか変わります。


「宗教を嫌っておるな?」


 そういうわけではないつもりですが。

 そうですね、次回は宗教の害を含めた次の時代の話に進みましょうか。



 ※記録者注

 転移者が語っているのは異世界の宗教についてであり、我々が崇めるかのお方とは関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ