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異世界インタビュー ~転移者の世界の歴史  作者: ほすてふ


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020 近世6

 前回、なんとなくいい感じのように言っているように聞こえたようなのですが、これから真の地獄が始まるので、誤解なきようお願いします。


 ええ。


 それは置いといてですね、今回はもう一つの革命、産業革命についてお話しします。


 これも先日も少し触れた科学革命に端を発する、あるいはその成果とも言えるものです。

 物事をそのまま見つめ、分析し、考察していくことで、産業において重要な、力学についても研究が進みます。


 力学というのは物体に働く力とか、運動、その相互の作用について突き詰める学問です。

 例えば者が落下するとか、投げたものがどういう軌道をえがいてどんな速さでどれだけ飛んでいくとか。壁を押したのに自分が動いたとか。そういう現象から法則を見出し、そして応用するのが力学です。


 てこの原理などは古代から知られている力学の応用ですよね。


 この学問から生まれたのが機械動力で、機械動力が達成したのが自動化です。それが産業革命をもたらしました。


 古来人間が行ってきた様々な作業を効率化、省力化することは行われてきました。

 水車などはその成果ですよね。

 穀物を粉にする作業を水流を利用した動力で自動化したものです。


 自動化がもたらす効果は絶大です。

 なんといっても、人間が管理すれば、自動化装置は複数並行して稼働させることができますから。効率化が進むと1基でも人間がやるより効率的になっていきますしね。


 人間が行っていた作業を検証し、機械に置き換える発明がたくさん生まれました。


 そして中でもカギとなったのが水蒸気を使った動力機関でした。

 水が蒸気となって体積が大きくなることを利用した動力で、石炭を焚いて水を熱することで稼働させます。


「石炭を使えば費用がかかるであろう?」


 単純にその費用を補って余りある動力を取りだせたんですね。初期のもので馬の数倍から十数倍。

 馬を輸送に使う場合を考えるとどれくらいのものかわかるでしょうか。この世界での馬が自分の世界のものと同じ生き物かはわかりませんが。

 自分の世界では1頭から4頭程度で人や物が乗った馬車を引いていましたね。


 この機関の利用先は、輸送機器と自動機械の動力です。

 船、陸上輸送機器として鉄道、そして自動機械としてはまず紡績、織機に利用されました。衣食住の一つですね。


「鉄道とは?」


 鉄で作ったレールの上を進む車ですね。馬の何倍もある機関の力を効率よく使うための機構です。

 同時期に鉄、それも鋼鉄の大量生産にも成功していまして。


「詳しく述べよ」


 大型の繰り返し利用可能な精錬施設と初期加工施設が開発されただけですね。

 これも科学革命の成果です。

 鉄の性質についての研究と力学の研究から得られた知見です。

 細かいことはちょっとじゃなく専門外なので……。石炭を蒸し焼きにしてより高熱を得られるようにしたとか、耐熱煉瓦の高品質化があったとかそれくらいしかわかりません。


 で、鉄の価格が暴落しまして。

 地面に鉄を置いといても盗まれないくらいになったので、鋼鉄のレールを通し、道を維持整備するより効率的な道を作ったんです。それが鉄道。

 あ、もちろん警備とかもしてたと思いますけど。

 鉄の道を、鉄でできた車両が蒸気の機関で効率的に進むわけですね。


 より小型の自動車も生まれました。これは既存の道路を走行するもので、機関の小型化と荒れた道路への対策、そして事故対策が鉄道に比べてより要求され、輸送量は鉄道に負けました。しかし、鉄道を敷く必要がなく小回りが利くことで並行して使われるようになります。


 陸上の輸送が発展したのに対し、水上の移動もまた大いに発展します。

 鋼鉄製の船を、蒸気の機関で動かすようになりました。

 風にも人力にも依存しないことで労力を大いに減らしました。しばらくは帆船と競い合い、両方使う船もありましたが、そのうち技術開発で動力船が優位になり、置き換わっていきました。


 そして自動装置ですが、あらゆる分野に進出していきます。

 技術的に届かない物も、技術が追いつき次第実装されていきます。


 とはいえ初めは先ほど述べたように生産の効率化に使われていきました。

 おカネ持ってて増やしたい資本家とかいうひとたちが現れてきていましたからね。


 結果として、生産力は何十倍も増えました。


 費用が10増えても収益が100増えるならば元が取れて余りあるわけですから、こぞって自動機械化が進みます。

 作りすぎて売り先に困るほど増えました。

 旧来の産業が滅ぶほど増えました。


 地獄の始まりですね。


 家で手作業で作られていたものが、機械を集積した施設、工場による機械工業と呼ばれる体制が生まれます。


 ほかにも、機械化、効率化というのは必要な労働人口を減らすということです。

 必要量が変わらない物を効率的に生産した場合、問題が二つ。

 過剰生産と失業者ですね。


 過剰生産すればモノの値段が下がります。

 物が安くなることはいいことのように思えますが、もともとそれを生産していた人たちにとっては大打撃です。

 そしてこぞって自動化機械化していった事業者も、予定していた収益を得られないわけですね。

 そして誰もいなくなる。


 というわけにはいかないので、外に市場を求めたわけです。外国に買わせたわけですね。植民地とか。

 それにも限界はありますから、生産調整も行われました。国が介入したり、事業者たちで組合を作って調整したりですね。


 滅ぼされそうになった既存の産業からも反発がありました。

 既得権益を圧倒的な力で蹂躙したわけですから、これまでお話しした例とも似たところがありますよね。


 安い綿布が流通して毛織物の需要が消し飛んだとか、類似の産業にも波及しました。

 既得権益というのは基本、権力者と癒着しているものですからこの争いも様々に解決されました。反対運動とか暴動とか、住み分けとかですね。


 そして失業者です。

 これまでやっていたことがカネにならなくなった人が大量に生まれました。


 ある作業を簡単にする道具が後家殺しと呼ばれたこともありました。当時その社会では未亡人の貴重な収入になっていた作業を効率化したことで人手が不要になってしまったと。それで食べていけなくなったという逸話から付けられた異名です。


 効率が何十倍になるというのは、必要な人手が何十分の一になるということなのです。

 それはほとんどの作業者が収入を失うということ。

 これは決定的な社会構造の変化につながりました。


 あぶれた人手の多くは、それまでの経験が通じない世界に入るしかありません。

 とりあえず都市に出れば何とかなるかなということで、都市に人が集まりました。

 これまでも年に人が集まることがありましたが、ここでもそれが後押しされたわけですね。


 そして今、必要とされているのは工場労働者でした。


 機械化、自動化はその時々の技術力で限界があり、人の手を必要とする分野も残っていたのです。

 そして、工場に人を集めて作業するのは、機械化できない分野でも効率を向上させることが分かったのです。


 さらに、分業、作業を細かく分けて一つ一つの工程を分けてそれだけを行う流れ作業によって、実用レベルに必要な技術習得にかかる時間が少なくて済むという工夫も生まれたんですね。


 見習いでも一つの工程だけ練習すればソコソコの品質のものを作ることができるということです。

 これは、機密保持にも役立ちました。

 みんなバラバラなことをさせておけば、全体像を把握している人を少なくできますから、拉致などで技術を奪おうとする対抗者へのセキュリティとして機能します。


 製品に最初から最後まで責任を持ちたい職人にとっては不評でしたが、たくさん作って儲けたい事業者や投資家は導入を進めました。


 こう言ったことがあらゆる分野で行われるようになります。

 これから、制御が難しい自由経済という地獄がはじまったのです。


「国が制御すればいいのではないか」


 そうした例もありますし、完全に国が支配する体制の国ものちには出ましたね。

 ですがこの時期は黎明期で、世界の変化の加速に、政治が追い付けていなかった。


 こうして世界は新しい階層を生みました。

 労働者と資本家です。

 うまく時流に乗って資本を作り、投資に成功して力を得たものが、新たな特権階級となっていき。

 労働者は不満をためつつ食いつないでいくことになりました。


 この資本が大正義という状況・思想は資本主義と呼ばれ、今後の世界をけん引していくことになります。

 そして、先行した国が技術を独占し、圧倒的な有利を得ることになりました。

 海洋帝国が支配を広げた原動力の一つでもあります。


 こうしていくつかの革命を経て、世界は加速していきました。その行き先は豊かな天国か果てしない地獄か、自分がいた時代ではまだ結論が出ていません。




※記録者注

 個別の詳細について質問を別紙にまとめておくこと。

お気に入りと評価してくれたらうれしいな。

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