012 中世7
先日は世界が繋がることでいろいろな新しいことが起きるという話をしました。
遊牧民が世界を繋げた事とは別に、いつかちょっとだけ触れた宗教の聖戦でもそういうことがありましたね。
ともあれ、持ち込まれた者の影響について少し触れていきましょう。
まず感染症ですが。流行しました、ものすごく。強力な死の病が。
人口が三分の一になったとか三分の一減ったとか半分になったとか。
これはもうとんでもない被害です。
身分を問わず上から下まで死にました。
原因はいろいろ言われてます。
まず感染症への知見の不足です。
宗教の教義にありませんでしたのでね。
宗教の教義が全て、というのは新しい脅威が現れたとき手が出ないのが困るところです。否定するだけですまない物であればとくに。
清貧の教えが、衛生観念を劣化させ、コストのかかる入浴文化を衰退させたこと。
鼠が病を媒介していたことと、そのことになかなか気づかなかったこと。。
魔女の使いとして、鼠を狩る人との共生動物である猫を排除したこと。
都市や交易の発達による人の出入りも原因となりました。
潜伏期間が結構長かったこともまずいことだったのでしょう。2、3週間……20日前後? みたいな話だったと思います。
それだけあればかなり遠くまで移動できますよね。
当時は様々な原因説が提唱されましたが、病をもたらす小生物が見つかったのはずっと未来のことで、事実に近い説も仮説の域を出ませんでした。
しかし、発症者から離れるべしという経験則が広まっていたらしく。
ある意味正しいんですけど。
「潜伏期間か」
ですね。
すでに感染した人間が、感染者が多く出た都市を離れたわけです。
移動は感染症の味方です。
田舎までしっかり広める助けになってしまいました。
この人口激減が当時の社会が変わる大きな原因の一つとなったことは否定できないでしょう。
労働力の減少。
当時の主要産業は農業です。農地を耕す人口が大きく減り、耕されない土地が増えました。
宗教や権力への疑念。
大災害に対し有効な対応をできなかった当時の指導者に対する信用にひびを入れました。
主要産業従事者の環境が大きく変わったことは社会構造の変革を促します。
これは多くのことに共通する考えなんですが、需要と供給というものがありまして
物事の価値を決める要素ですね。
需要。あるものが必要とされるということ。
供給。それを提供すること。
需要が大きく供給が少なければ価格は高騰し、逆なら暴落します。
例えば、殿下は異世界の知識が必要ですが、供給できるものが自分、わたししかいないので、殿下にとって自分には相応のコストを払って保護する価値があるわけです。
例えば、穀物の収穫期の直後は穀物が多くあるので供給が過剰となり穀物の価値が下がりますが、収穫期前は穀物をみんなが食べて少なくなっているので穀物を売る人が減り、つまり供給が少なくなるので高騰する。
商人が物の価格を決めるのには先日の加算で決まる部分もありますが、この要素からもきまるわけです。
売る側だけではなく、買う側の都合ということですね。
必要なら少し高くても買います。
すぐ必要でなくても安ければ買おうかなと言う場合もあります。
どんなに必要でも、価格が高すぎれば買うことができません。価格が高すぎれば無価値と変わらないわけです。
今回の場合、耕したい土地があまり、農民の労働力という品が不足している状態です。
感染症が発生した農村から農民が倒産したり、全滅したりしました。
行き先がなくて都市に集まればワンチャンスあると考えた人々で都市の人口が回復したりもしました。
農民の価値が上がるというのはどういうことかというと、つまり発言力が上がるということです。
報酬を多く与えなければならないとか。
税を少なくしなければならないとか。
なぜそうしなければならないかと言えば、農民がさらに逃げるからです。
ほかの領地でも農民が足りないので。
より良い領地にたどり付けばそこの領主が新しい畑を与えてくるしかくまってくれrんですね。
それほど土地が余っていう状態でした。
拘束して強制労働をさせればいい、とそう考えた領主もいたようです。
はい。
反乱ですね。
農民は不満が限界突破すると反乱を起こす生き物です。別に農民に限りませんが。
社会の基盤産業の従事者で人口も多いので、農民反乱で滅ぶ国もあります。大帝国が滅ぶ原因上位に入るくらいですね。
起きないように見張りを置いてもコストがかかります。
鎮圧してもますます農民が減るし。
よその領や国が農民を引き抜こうと工作を仕掛けてくるかもしれません。
減税、土地所有など労働環境の改善の圧力は止められない流れになりました。
結果として、農民に優しい領主が勝ち残ります。
そして条件が悪い土地は放棄され、人口減の悪条件を補うために創意工夫の圧力が生まれます。
一方で、同時期に流入したものがあります。
印刷です。
簡単に言えば効率的な版画で、活版印刷という技術なんですが、歴史で必ず勉強するほど重要な技術です。文字一つ一つを金属のハンコにして、組み合わせてひとつのページを作り、大量に印刷するんですね。組み替えれば様々なページをTくりかえることができるわけです。
印刷に向いた植物紙の量産と合わせて、書物の量産が始まりました。
書物は知識の塊です。
それが量産されるということは、知識の価値が下がるわけです。
初めにこれで印刷されたのは、宗教の教義をまとめた書物でした。
自分の時代でも世界一印刷されていた本と呼ばれる需要のある書物です。
宗教の教義を独占していたのは宗教権威です。
発祥当時の言語を学んで読み解かなければその教えを理解することはできませんでした。
そうやって勉強した宗教者が人々に教えを説いていたのです。
しかし、暗い世相の中、人々に宗教の恩恵をより広めようと印刷技術を開発した人がいて、さらに当時使われている言葉に翻訳して書物にした人たちがね。
宗教権威の原点と言える書物が、当時の各国の言葉に翻訳されて広まりました。
こうして、多くの人が、当時の宗教権威が非常に腐敗していたことを知ってしまったのです。
ここから宗教改革という運動につながり、数十年続く戦争の端緒となりました。
宗教書に書いてあることだけを信じて、宗教権威による後付け部分に反発する新しい派閥が生まれまして、紆余曲折ありながらも力をつけました。
最終的には旧来の派閥も体制の見直しが行われ、新たな派閥とは仲良くはないですが共存する流れになります。時間はかかりましたけど。
その過程で、宗教派閥の争いに乗じて世俗権力の再編も進みました。
最終的には世俗権力である国家の都合で争っていた場所があったりですね。
そうして宗教の力は相対的に減衰していったのです。
これも社会構造の変化の一部ですね。
※記録者注
転移者の世界の宗教は我々の世界における宗教とは異なることを改めて留意すること。
お気に入りと評価してくれたらうれしいな。




