011 中世6
中世
別の話も、ということで、農耕定住民ではない民族について少し。
中世のある時期に、遊牧民が大陸中央部を支配する大帝国を築きました。
先日述べたように、遊牧民と農耕民はぶつかり合いつつも住み分けしていたのですが、遊牧民に強力なカリスマが現れたんですね。
もともと非常に高品質な軍事集団として機能する遊牧民ですが遊牧民同士で争っている間はそこまで危険ではありません。
数は力なんで。
農耕国の力は数です。
そして定住の強みとして、防衛施設がありました。
逆に、遊牧民の領域に攻め込むには農耕民にとっては補給の心配があります。必要とする資源が違うので向かった先で略奪できない。その上で機動力に手にの差があったので補給線も寸断されます。
どちらも深く攻め込むことは難しかったので住み分けが成立したわけです。
しかし、強力なカリスマが遊牧民たちをまとめ上げ、一つの国にしてしまいました。
広大な領土を治めるための制度も生み出されます。
「どのようなものだ?」
遊牧民の得意な馬を使った駅伝制が有名ですね。
類似の制度は古代から各地で存在はしていました。
幹線沿いに補給・休息拠点を用意して替え馬や輸送の引継ぎをできるという、まあ単純ではありますが実現が難しい制度ですよね。
補給拠点なんて、敵がいれば襲撃してくれと言うようなものです。防備を厚くすれば維持コストが跳ね上がります。
圧倒的な力を持ったものが君臨して管理しているからこそ可能な通信手段と言えますよね。
優秀な騎兵による駅伝制は広大な領域の支配を支えました。
支配面積としては歴史上最大になるのかな。2位かな? そういう規模の帝国を作り上げました。
圧倒的だったのはその機動力です。
成人男子全てが高い練度の弓騎兵と言える遊牧民は、一つの都市が襲撃されたという情報が隣の都市に届く前に次の都市に攻め込んだと言われます。
何の情報もない中、突然大群に囲まれる
遊牧騎兵より早く移動できる伝令なんていなかったということです。
遊牧帝国は交易によってあらかじめ地理など情報を調べ、伝令を狩り、襲撃を行います。
城を攻める場合は農耕民の徴用兵を使いました。
野戦では優れた騎射能力で機動力と射程による絶対的な優位で戦場を支配します。
仮に籠城で耐えても、救援はこないし来ても野戦で勝てない。
都市内に汚物や疫病にかかった死骸を投げ入れるなどの戦術も使われたそうです。
そうして定住民から略奪し、下した都市からは税を取り、交易の利益を巻き上げました。
支配者となった商人という見方もできますね。
一方、馬の力に依存する面があったため、森林や湿地は不向きでした。それが支配域の限界の理由の一つだったと言えます。
遊牧帝国による広大な領域の支配は、大陸の異なる領域を繋げるという結果を生みました。
各地で生まれた技術や概念を伝えたのです。こういった技術の吸収も遊牧帝国の力になったのですが、同時に、遊牧帝国の影響を受けた国々にも伝播することになったわけです。
そして、遊牧帝国の衰退は思ったより早く始まりました。
まず、遊牧民の相続文化が分かう相続であったことが原因の一つと言えます。
農耕民は土地を分けて相続することをたわけと呼んでダメな例として戒めていたのですが。
遊牧民の財産は生き物であったということが分割相続文化となった理由じゃないかと考えています。
人と、馬と、羊ですね。
まあつまり、継承者争いが起きたわけですね。
次に、収益モデルの問題です。
遊牧民は攻めて略奪してそれを分割するという慣例で動いていたのですが、地理上の限界まで伸長して支配下に置くとそれが止まります。そうなると内輪もめが始まりますよね。
そうやって最大の面積だった帝国は代替わりで分裂していきました。
いくつかの文化圏をつなぐという成果を維持しつつ、遊牧民は遊牧民の領域で活動をしつつ、農耕民の領域で融和したりもして。
そして、遊牧民がつなげた様々なものが、さらに遊牧民への反撃のきっかけにもなって行ったんですが、そんな知識や技術よりも先に、大いに影響を与えたものがありました。
気候などの環境も影響していたんですがそれはまあ置いといて。
様々な場所を繋げることで最も警戒すべき危険があります。
なにかわかりますか?
そう、感染症ですね。
遊牧帝国による世界の接続は、恐ろしい死の病を大陸中に拡散したのです。
駅伝制がまさに仇となりましたね。
人がすばやく移動できることは非常に有益な技術です。
しかし、感染症の潜伏期間が、えなんです?
「潜伏期間とはなんだ」
あ、えーと流行り病、疫病、感染症。
非常に恐ろしい災害ですが、これは自分の時代では大体原因がわかってました。
わかっていても防ぎきれないので毎年のように死者が出ていますが。
詳しくですか。
ええ、もちろん。
感染症はなんらかの方法で人から人へ感染する病です。その危険度はピンキリですけど、危険なものは命を奪う上、感染力が非常に強いなんて恐ろしいものもありますね。
自分の世界での理解は、目に見えないほど小さな生物が無数に存在しており、それらのうち悪性のものが悪さをしているのだというものです。
そういう小さなものを見ることができる高度な顕微鏡が開発されたことで証明されています。
この小生物は我々と共生しているものもありまして、何でもかんでも悪いものではありません。
チーズや酒などの発酵作用にも関わっています。
基本的には苗床を利用して増える生き物です。
病の小生物は、人間など生物を苗床として増える中で、人体に害があるものを指すわけですね。
感染の方法にも差がありまして、体液、粘膜感染、接触感染、空気感染などがあったと思います。ほかにもあったかも。
病をもたらす小生物の生存力の問題で、空気中を漂っても死なない小生物が原因だった場合は、感染した人がいればどんどん広まるのはわかりますよね?
ほかの感染経路は生存力の程度の差ですね。
湿ってないと生きられないから、くしゃみと一緒に広がるがつばが乾けば死ぬ小生物。
人体から離れるとすぐ死ぬから接触しなければ大丈夫な小生物。
食べたらだめな物とか、血液が体内に入らなければ大丈夫な物とか。
小生物ごとに違います。
で、潜伏期間でしたね。
病の小生物が人体に侵入したあと、増えて害を与える、発症するまでの期間のことです。
例えば潜伏期間一週間だと、感染しても一週間元気なままですが、一週間後発症して症状が出るわけですね。
その場合、一週間の間に他に感染を広げている可能性があるわけです。
感染しても発症しない人もいます。人体には病気に対抗する機能があるので、それが勝てばですね。
それでもほかの人への媒介をしているかもしれません。
駅伝制のような高速で人を移動させる技術は、知らないうちに感染症をばらまく可能性があるわけです。
「感染を抑えるにはどうすればいい?」
発症してからでは遅いです。
普段からとにかく清潔にすること。きれいな水で手洗いとうがいを行うこと。
これが基本で、結構な効果があります。
あとは病気ごとの感染方法によって対応が変わるのはわかりますよね?
そしてすでに発症したものは隔離して、その病気の感染方法と潜伏期間に合わせて、感染した可能性がある人も隔離して様子を見る。
空気感染なら同じ空間にいた者全員とかです。
はい。
もちろん、社会に大いにダメージを与えることになりますね。生産活動も止まりますし。
だからこそ、強力な疫病は社会を挙げて正しい対策をしなければ抑え込みはまあ無理ですよね。
疫病の抑え込みで生まれる損害を補填できなければ国が亡ぶこともあるでしょう。
だから、病気の感染方法と潜伏期間、感染ルートの特定が大事なのかな。
厄介なことに、この小生物は結構変質するんです。
似たような症状でも、潜伏期間が長くなったり短くなったり、最終的な致死率が高くなったり低くなったり。
そして、人の密度が高い場所ほど感染の危険がありますし、人が少ない場所で流行すれば全滅することもあります。
なんにしてもケースバイケースなので、基本的な感染の構造を把握して、可能な対策をするしかないかな。
一度かかったら二度かからない性質の病気であれば、あえて弱い病気にかかっておくという予防方法がありましたけど、正しい対応がしっかり根付いてないと死者が増えると思います。少なくとも自分は指導できないんで間違ってもやらせようとしないでもらいたいです。高度に専門的な技術なので。
※記録者注
疫病の仕組みの裏付けを急ぐこと。
お気に入りと評価してくれたらうれしいな。




