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異世界インタビュー ~転移者の世界の歴史  作者: ほすてふ


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010 中世5

 前回は小規模旅商人の話をしたので今度は別の視点から見ていきましょう。


 商人の都合でモノの価格が決まります。

 しかし、それでも対価を用意できなければ買えませんよね。

 そうなると商人も困ります。他の売り先を探さなければならないし、移動するならまた人件費をはじめとする費用が積み上がり、より高額になって売れなくなります。


 ですが、もっと困るのは、必要なのに買えない側ですよね。

 例えば不作が起きた領主が外部から穀物を買い入れようとしたのに対価を用意できなかったとします。

 借金も限界までしていてこれ以上は断られます。

 しかしこのままでは領民1000人が飢えて死ぬ。


 さて、立法、司法、行政を握っている領主は何をするでしょうか。


「そなたが答えさせたいのは、権力を使って接収するということか? それとも、借金を帳消しにする命令を出すことか? 付き合いのある領主を頼るという、外交での対処という答えを求めてはおらぬのだろう?」


 まさにそれです。


 領主は領内において絶対権力者でした。

 商人は彼らに逆らうことはできません。


「だが、そんなことをする領には商人は近寄らなくなるであろう」


 それもまたその通りです。

 中世以前から、商人は武力に屈すること、権力に屈すること、数多く経験してきました。

 貸し付けた借金を帳消しにされる命令が国から発せられることは古代からありました。


 領主など、権力者の立場で考えると、少数の商人と、それ以外の多数、どちらが大事かと言う判断を強いられるわけです。

 なお、宗教は商人否定派。

 さらに、商人は領の外からくる、身内ではない相手です。


 ほかにもあるでしょうが、様々な要素から、どちらかしかなければ商人は切り捨てられる側となります。

 なんといってもカネを全部取り上げれば無力ですからね。

 それでも儲かるからと湧いて出てくる。


 権力者からするとあさましく卑しい存在に見えるのも無理はないです。


 商人にとって、カネは領主にとっての領地と領民と収穫物とを合わせたような存在です。

 常に領地をかけた戦をしているのと同様なんです。

 勝てる時は大きく稼ぎにいくし、負けそうなら損切りをして妥協する。そういうことができる商人が生き残るわけです。


 ではそんな商人の側は絶対的な権力者に対してどう振る舞うでしょうか。


「ふむ。戦と言ったな。商人は情報を扱うとも。敵は分断し、味方は集中せよ、か。そうだな、商人同士の相互扶助。連合。より上の権力者との癒着。あるいは乗っ取り。そうだ。賄賂は商人の常套手段であったな。そして、あらゆる手を使って生き残り力を求めるか」


 おお、まさにそれです。

 戦いの心得は多くのことに応用できます。

 商人は生き残りのために情報を扱う必要があるので同様の考えに辿り着いたものが生き残っていったのだと思います。

 商人にとって、同業者は敵ですが、より強力で共通の敵が権力者です。商人は権力者の定める枠の中でしか活動できないからです。

 ほかにも盗賊などの武力を使う相手。

 それから天災や戦なども商売の邪魔になりますよね。


 競争しながら商人以外の相手から協力して身を守ろうとします。

 同時に、それらは商人の味方にもなりえます。

 そもそも、売り買いする相手がいないと商売は成立しないわけですから、敵と表現はしましたが、切り捨てられない味方でもあるわけです。


 領主などとも同じようですね。

 隣の領主としょっちゅう小競り合いしているにもかかわらず、敵国が攻めてくれば王のもとでまとまって戦いますよね。

 倒せばいい相手ではなく、どううまく味方にするかがカギになるような相手というわけです。



 そんな相手に商人が使う常套手段。おっしゃる通り、賄賂ですね。そして癒着。

 権力者もお金は欲しいですから、自分に従順な商人を使ってお金を集めさせれば便利。ですから、特定の商人を優遇し手優位を作り、稼がせて上納させる共生関係が生まれます。

 ほかにも、ギルドをつくって力を合わせてほかの力に対抗するということもありました。都市の商業を独占して新規参入を防ぐということはよくありましたね。もちろん権力者には賄賂を送って味方にします。

 おカネを必要とするものとなら、誰であれ組める可能性があるのが商人です。


 都市を商人が支配するという例もありました。

 癒着するよりも自身が権力者になるほうが効率的と言えますよね。

 もちろん、そうなるのはよほどのことがなければ難しいことだったでしょうけど。


 そうやって商人は力をつけていきました。


「もしや、そなたの世界では中世という時代の次は商人の時代になるのか?」


 あ、そうですね、紆余曲折あった後ですが、そう言っておおきく外れてはいないと思います。

 迂遠な言い方だと思うかもしれませんが、全部話を聞いてから判断してもらえたらと思います。

 断言するのは自分の知識が正しいか自信が持てないのでちょっと。頭のいい人たちでしっかり分析して判断してほしいです。


 歴史はどんどん複雑になっていくんです。わかっていることが増えることもあるし、発生する情報自体も加速度的に増えていきました。

 自分にできるのは知っていることを吐き出すだけです。



 ひとまず当時のことに話を戻します。


 商人の伸長に対し、既得権者、つまり領主たちは対応を迫られることになります。

 便利な道具がいつの間にか自分たちに意見を言うようになり、要求してくるようになり、なんなら自分たちよりも力を持つようになってくるのです。

 しかし、商人はあまり土地に執着しませんでした。

 領主たちの力の源である土地にです。この場合の土地というのは農業を行って作物を取るための場所という意味ですね。

 これはなぜでしょうか。


 答えの一つはそんなに儲からないからです。


 はい。

 商人にとって、土地から生まれる産物そのものはそれほど魅力的な稼ぎではなかったのです。商材として商業活動のネタとしては利用価値があったものの、土地の管理コストに対して生まれる利益はそれほど魅力的ではなかった。


 ほかの答えとしては、領主たちが激しく抵抗するからです。

 商人たちにとっては稼ぐ手段の一つでも、領主にとっては数少ない収入源であり、力の根源です。絶対に手放せない最後の砦。

 これは商人たちにとっては取得コストを跳ね上げる強力な要素になりますよね。

 取得にも管理にもコストがかかり、他の領主からは明日は我が身と敵視されるかもしれない。

 ですから、無理をして手を出すほどの魅力がなかったわけですね。

 当然ですが、たやすく手に入るなら商人たちも手を出すでしょう。

 そういう例もあったと思います。

 領主家を乗っ取るような話はあったんじゃなかったかな。


 それから、農村よりも都市にいるほうがはるかに商売の機会が多いという点があります。

 人間の数が多く、物資が多く消費されることでそれだけモノが必要とされます。

 田舎を管理するのにかかる時間を、都市で商業活動に費やすほうが稼げるわけですね。

 さらに、商人同士の競争もありますから、より儲かる場所から離れたくないですよね。

 稼ぎが商人の格であるとすれば、田舎で小さな商売をするような商人は木っ端ということです。つまり土地を得られるほどの力がない。


 これはつまり、都市に力が集まっていくということも意味します。

 商人が持つ力が。


 そして相対的に、領主の力が小さくなっていくということでもありました。と、こう繋がってくるわけです。


 次は商業についてもっと踏み込むか、それとももっと別の社会の要素に触れましょうか。




 ※記録者注

 商人の伸長はもっと深く分析するべきか。

 商人の時代が来るというのは。

お気に入りと評価してくれたらうれしいな。

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