001 序文
しんさくです。よろしくおねがいします。ほすてふ。
この記録は異世界から転移してきたと称する人物に殿下が聞き取りを行った記録である。
転移者の世界の情報から有益な知識を吸いだすためのものであり、筆者は記録者として同席した。
転移者の要望である。記録を残すこと、第三者を同席させること、殿下と第三者の間で改めて情報を検討すること。
転移者の話が主であり、話の流れを残すため、殿下のお言葉も一部記録し、カギカッコで表記するものとする。
前段
「そなたの望む環境を用意した。さあ、続きを述べよ」
はい。どーも、記録係さん、よろしくお願いします。あ、そういうの要らない? そうですか。ええ、条件を付けた理由からですね。
それは第一に保身で。というのも自分が知る限り、自分の知識を伝えるだけだと、殿下の毒にしかならないので。殿下に損害を与えたということで命の危険にさらされたくないからです。
「異世界の知識が余の毒になると?」
物理的に事故が起きて大損害が出るか、うまくいきすぎて状況が独り歩きして数年後に破滅するか、自分の世界で世界を変えるような発見や発明をした人物、組織、国のどれもがそういう末路をたどった例が無数にあったんですね。自分の世界の有能な人物たちがそういう目にあっているので、自分のニワカ知識を自分の世界における知識の背景を理解せずに使えば同じようなことになる可能性が上がるように思います。
「余に使う能力がないと?」
いえ、殿下の能力について何も知りませんので一般論です。
しかし、破滅した者たちの中には歴史的に屈指の頭脳であったり、日の沈まない国と呼ばれたような大国もあったので。
最低限、自分の世界の歴史、思想などの背景を把握してもらって複数の頭脳で入念に検討してもらいたいなと。失敗する可能性は低いほうが自分にとってもね。首が繋がるでしょうし。
「歴史?」
そうですね、知者は歴史に学び愚者は経験に学ぶみたいな言葉があったような気がするので。
え、頼りないですか?
その頼りない知識を利用しようとすれば失敗の可能性がより上がると思いませんか。周辺情報や前提情報をそっちで検討してもらう方が絶対マシな結果になりますよ。
幸いと言いますか、自分の国ではある程度の世界史を義務教育で教えていました。
「義務教育とは何だ? いや、字面から大まかな推測はできるが」
確かめて詳細に確認する姿勢はいいですね。とてもも安心できます。
義務教育は、親は子に9年間学校に通わせる義務を負うという制度です。6歳から15歳。この知識も結構危険な知識ですね。
何が危険か? 殿下の立場なら下層民に知恵を与えることの危険は教えられてるのではないですか?
自分の世界ではある時期から危険を利益が越えたらしいですね。
「無策に導入すれば、そうだな、控えめに見て、反乱が起きるだろうな」
そうですね、そういう事例もあります。
一見問題なさそうだったとしても、異世界の知識です。見落としがあるかもしれません。それは殿下や筆記係のかただけでなく、自分もそうです。専門家じゃないし、専門家であってもあやしいところでしょ。
なので、少しでも危険を減らすために背景情報を、少しでも多く伝えたいと。自分が思ってもない価値のある情報もあるかもしれませんし。
そしてしっかり研究してもらって活用してもらいたいと、そういうわけです。
「護身のために、余が失敗する可能性を減らしたい、そのための下敷きというわけだな?」
まさにそんな感じです。
「よかろう。ではそなたの世界の歴史を語るがいい」
最大限努力します。
お気に入りと評価してくれたらうれしいな。




