はじめての社交界レッスン
「お嬢様、今日は社交界での立ち振る舞いを練習いたします」
朝の光が差し込む広間で、執事は真剣な眼差しで告げた。私は心の中でため息をつく。腐敗した体にドレスを纏い、優雅に歩くなんて、想像しただけでも無理そうだった。しかし、これもお嬢様として生きるための試練だと思い直す。
広間の床は大理石で、冷たく滑りやすい。私はドレスの裾を持ち上げ、慎重に足を運ぶ。しかし、足の関節はまだゾンビ体のままで、重心が安定しない。ドレスの裾が踏みつけられ、ひらひらと揺れるたびに、私はバランスを崩しそうになる。
「落ち着いて、お嬢様」
執事が静かに指示を出す。メイドが後ろで補助し、手を添えてくれる。そのおかげで何とか転ばずに歩けたが、思わず笑ってしまう。腐敗した体で優雅な動作をするのは、予想以上に難しいのだ。
「次は礼の練習です」
そう言われて、私は背筋を伸ばし、頭を軽く下げる。だが、首の可動域も鈍く、微妙にぎこちない。執事は目を細め、優しく指導する。「お嬢様、その角度です。少し右に体を傾けて、手の位置はもう少し高く」
私は必死に従うが、ドレスの裾が足に絡まり、またもやバランスを崩しそうになる。メイドがすかさず手を添え、私はなんとか立て直す。
練習が続く中、私は少しずつコツを掴んでいった。足の運び、手の位置、背筋の伸ばし方——腐敗した体でも、意識して動かせば、少しずつ優雅さが出てくる。鏡に映る自分の姿は、まだ完璧とは程遠いが、努力の跡が見える。それだけで、少し自信が湧いた。
「素晴らしい、お嬢様」
執事の言葉に、私はにっこり微笑む。腐敗した体とお嬢様の華やかさが交錯する中で、少しずつ調和が生まれている感覚があった。これから学園で、社交界で、どんな困難が待っていても、この経験が必ず役立つ——そう信じられる瞬間だった。
レッスンが終わると、私は深く息を吐く。汗ばむ額を拭いながら、鏡に映る自分を見つめる。腐敗した手、ぎこちない歩き方、それでも何とか形になっている姿に、私は小さな誇りを感じる。「ゾンビでも、少しずつお嬢様らしくなれる」
そう心の中でつぶやき、今日のレッスンを締めくくった。外には暖かい日差しが降り注ぎ、屋敷の庭の木々が朝の光で輝いている。まだ先は長いけれど、腐敗と華やかさの両立に向けた一歩を踏み出せた——それだけで十分だった。




