あとがき
ここまで読んでくれて、ありがとう。
この物語は、「ゾンビになったらどうなるか」よりも、
「それでも、どこに在るのか」という問いから始まりました。
生きている/死んでいる。
人間/怪物。
その境界線は、とても分かりやすいようで、実は曖昧です。
このお嬢様は、奇跡的に救われることもなければ、
完全に堕ちて怪物になることもありませんでした。
ただ、自分の居場所を選び、そこに留まることを選んだだけです。
屋敷という閉じた世界。
静けさと腐敗と、崩れかけの美しさ。
その中で彼女は、「失ったもの」よりも
「まだ残っているもの」を、少しずつ確かめていきました。
礼儀。
矜持。
他者を踏みにじらないという意思。
それは、人間である証明ではなく、
彼女自身である証明だったのだと思います。
メイドや執事の視点を書いたのは、
「理解されなくても、見ている人はいる」という余白を
物語の中に残したかったからです。
世界全体に受け入れられなくてもいい。
たった一人でも、そう呼び続けてくれる存在がいるなら、
その生は、死は、在り方は、否定されきらない。
派手な結末はありません。
未来への希望も、明確には描いていません。
それでも、
「ここに在る」と言えること。
それだけで、この物語は完結しています。
この静かなゾンビのお嬢様の物語を、
最後まで一緒に歩いてくれて、本当にありがとう。
またいつか、
別の屋敷で、別の境界線で、
静かな物語を一緒に紡げたら嬉しいです。




