EP.7 剣聖・モルカリア④
「傷が…治った?」
モルカリアは信じられない顔で見つめる。それは単純に敵の傷が自然に治ったからだけではない。
そもそもラグド種も再生能力あるのは確認済みだ。その大本にある邪神も再生できるということは不思議ではない。
彼女が驚いたのは、聖剣で切られた相手が、まさかの無傷の状態に戻ることだ。
「大丈夫だ」
「…レガス?何を…」
「俺に任せろ」
俺は手をモルカリアに向けて、魔力で「道」を作り、彼女の意識の深層へ潜る。
透明の体ーー「精神体」になった俺は、モルカリアの精神の中にあるものを探す。
温かい海に抱擁されてるような感じに、一時だけだが、俺はほっとした。
「あった…!」
さほど時間かからず、俺はそれを見つけた。
聖剣に負けない程の光を放つ水晶ーーモルカリアが今まで会得した能力の集合体だ。
俺は手を水晶に翳す。その瞬間、彼女が持ってるスキル、称号、あらゆる情報が流れ込む。
その中でも、
<身体能力強化><剣聖><聖剣の使い手><邪神を倒したもの><根源の扉に立つもの>
俺は彼女にとって一番大事の能力を取り出す。能力は四角い形に形成し、俺は術でそれを再構成する。
五つの力が融合し、一際強い輝きを放つ。
俺はその状態を確認した後、素早く彼女の意識から離脱した。
●
ラグドエリザは動きを止まった二人を見て、笑い出した。
【何してるの?まさかアタシに怯えた?】
その挑発の言葉に、二人は変わらず、何の反応しなかった。
【アタシを無視するの?いい度胸だわ。じゃあ今度こそ殺してあげるね】
ラグドエリザは右手に空間を開け、その中から触手を取り出し、鞭のようなものを形成する。
【でも、簡単に死ねると思わない方がいいよ。先、アタシが受けた屈辱、百倍にして返すから。きゃははははははは!!!!!!】
人の心に恐怖をもたらす笑い声と共に、ラグドエリザは鞭をモルカリア目掛けて振う!
長さ2メートルぐらいしかなかった鞭は、彼女が振った瞬間、十メートル…からさらに伸び、彼女の右にある建物全部、紙のように切り裂いていく。
モルカリアに攻撃が届きそうな時ーー
ガン!
金属がぶつかり合う音が鳴り響いた。
モルカリアは、レガスを庇うような形で寸でのところ、聖剣で鞭を止めた。
(アタシの攻撃を…止めた?)
ラグドエリザは疑問に思うが、すぐに答えが分かった。
「ふっ…僅か2秒の間とは言え、意識を手放すのは怖いな。でも、これで…」
レガスは隣にいるモルカリアを見る。彼女の体から先と違う感覚のオーラが漂い、今に爆発しそうな様子だ。
「下準備ができた」
終焉スキルーー「星の守り手」、発動。
レガスの言葉と同時に、モルカリアの体から突然凄まじい力が溢れ出し、狂風を巻き起こす!
「はあああああああーーーーーー!!!!!!」
モルカリアは一瞬でラグドエリザの鞭を壊し、そして力のままに彼女へ突進し、さらに無数の斬撃を叩き込む!ラグドエリザも彼女の意図を予測したのが、すぐに新しい鞭を形成し、モルカリアの攻撃を全部難なく防いだ。強大の力が衝突したその余波で、周りの建物が吹っ飛ばされ、地面も抉られた。
だがモルカリアは勢いを止まらず、彼女にぶつかり、そのまま北のゲートへ推し進める!
…先の一瞬で、中心部がもう廃墟になった。そのまま戦い続ければ、このユーグは人が住めない死の大地になるだろう。今は住んでる人もうそんなにいないけど。
モルカリアもそれを理解してるから、無理にでもラグドエリザを外に押し出した…彼女達の姿が見えなくなった。
いくら強化されたとはいえ、今のモルカリア一人で邪神を相手にするのが荷が重い。急いで追い付かないと。
俺は不安を抱えたまま、ユーグの北ゲートを出た。