EP.2 女神
【どうしたの?ぼっとして】
横から聞こえる大人の女性の声に意識を向ける。
「来たか、セラトリス」
【それは当然。毎回確認するのは義務だから】
「ふう…」
俺は空を見るのをやめ、道のガードレールに腰を掛けた。
【で、今回は続くの?やめるの?】
白と黒の色が混ざった装いを纏い、全身キラキラと金色の光を放つ女性は、意地悪な笑顔で質問を投げてくる。
セラトリス…彼女こそ俺が時間を逆行できるようにした張本人。あの日、死に際の俺の前に突然現れた彼女は、自称「女神」だけど、聖なる力か魔なる力、どっちの立場なのか判断できないオーラを持っていて、本当に俺の味方なのかを疑う。しかし、過去に戻ってみんなを救える…それができるだけで彼女の存在はありがたい。
「…今さらやめられるわけがないだろう。今やめたら、997回も死んだこと全部無駄になる」
【そうだね。ごめんなさい。意地悪なこと聞いちゃった】
「その割に楽しそうにしてるのは気のせいか?」
【気のせいよ。うふふ】
「…はぁ、まあいい。それで今回はなんか手掛かりあったか?」
【私からは何も。あなたは?】
彼女の言葉で前回…997回のことを思い返す。
●
「そ…んな…この私が…」
俺は片手で邪神・ラグドシフェアの胸を貫き、彼女を空へ投げ出す。
そして右手に聖力と魔力を集め、内なる能力を組み合わせ、昇華させる。
終焉神技ーーケイオス・シュヴェーアト!
ラグドシフェアの背後に術陣が出現し、そこに鎖が光る空間から伸ばし、彼女を束縛した。
「く…許さない…絶対に許しませんわ!」
「邪神の許しなどいらん。冥府に落ちろ」
彼女の周りに百を超える黒と白二色混同の剣が囲み、そして、俺の意思で一斉に彼女へと飛んでいく!
ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。ぐさ。
邪神は全身に剣を受け、「核」も壊され、塵となって崩壊した。
「すごい…邪神をただ一人で…」
モルカリアは空に浮かぶレガスを尊敬の眼差しで見つめる。
「何~?天下の剣聖様、まさか大予言者様に惚れた?」
彼女の隣に同い年の碧髪の少女がからかうように話しかける。
フェーナ・アタント。他国所属の世界一の弓使い。「天弓」の二つ名を持つ彼女は、100キロ以外の敵も完璧に撃ち落とすという狙撃能力から、広範囲に敵を殲滅する技持ってることで、魔物と大規模戦争あった時に、よく手を組んで戦った数少ない私の友人。今回邪神の襲来に備えて、星願都市「ユーグ」に派遣する形で来た。
「な…違う!ただあの人の凄さに改めて感心したていうか…」
「はいはい…まあ、でも、分かるよ。あたしも彼に救われたもん。そして同時に何で彼はあそこまで強いのが気になった」
「フェーナ…」
モルカリアが見たフェーナの顔は、憧れに満ちてる。
(私…もしかしてそんな顔してる?)
自分の今の表情を気にしてる時に、上空からレガスの叫び声が響き渡った。
「気を付けろ!最後のが来るぞ!」
「…!」
最後。その言葉にこの場にいる全員が気を引き締めた。
やっと最後…と思って、気を緩める人、この場にいない。いちゃいけない。
その一瞬の気の緩みで命が失うだから。
ギリ…ギリギリ…
空間が割れる音が聞こえる。レガスがいる場所のさらに上、黒い空間が広がる。ただの空間ではなく、その中から漂う気配が、人を死へと誘うような感覚さえ覚える。
全員構えてる中、空間の中から「何か」が飛び出した。
「…避けろ!」
レガスの指示で、全員回避する行動を取った。
同時に「何か」が目で追いつけない速さでユーグを破壊していく。
100階ある高層ビルが簡単に両断し、広大な公園を一掃する。「何か」が通った場所は、残骸しか残らなかった。
モルカリアとフェーナは全力でやっと「何か」の攻撃を避けた。しかし体勢を立て直した彼女たちの目は、信じ難い光景が広がる。
「そんな…」
「ひどい…」
先まで綺麗で見慣れた景色は、ただの数秒で無残な姿に変わった。
何より、攻撃を避けることをできなかった仲間の死体…と呼べない程の肉片が、目に映る所に散らばってる。
仲間の死は何回もこの目で見てきたが、ここまで尊厳のない死を迎えたのを初めに目にする。
モルカリアは見上げる。この光景を作った元凶は、その空間の向こうにいる…!
「あらあら、触手相手でもただの数秒も持ったないの?ガッカリだわ」
空間の中から悠然とした声が響く。
「やっとのお出ましか…」
レガスは険しい顔で声の主を見つめる。
彼女はそれを気にせず、ゆっくりと歩き、レガスと対峙する。
「こんにちは、人間。そしてさようなら」
最後の邪神…今度こそ決着を付ける…!