第9話-2
ちょっとした確認リハーサルだと思ってたのに結構気疲れしてしまったのか、その後、椿姫、瑠璃さん、マネージャーの箱水さんと四人で夕食を摂って部屋に帰った頃には、もうくたくたになっていた。
ちなみに部屋は椿姫とのツインルームで、瑠璃さんたちとは別の部屋だ。
しかもここはビジネスホテルではなく普通にちょっと高そうなホテル。
もう後は寝るだけと言うか、もう何もしたくない。
「結莉ちゃん、お風呂行こ」
「あー、うん……」
あぁ、そうか、風呂に入らないとと渋々ベッドから起き上がる。
一応部屋にシャワーは付いてるけど、このホテルには大浴場を始めとした幾つもの風呂があるのだ。
結莉は着替えをタオルに包んで、椿姫と部屋を出て大浴場へと向かった。
……ん?
そこで気づく。
結莉、他人に裸を見られるのは実質初めてでは?
体育の着替えは見られても下着だし、健康診断で生乳見られたのは医者相手なのでノーカンだし。
ただ、まぁ、いずれそう言う機会は来る。
例えば水泳の授業とか始まったら着替えで完全ガードするのも面倒臭いし、二年になったら修学旅行だってある。
それ以前に友だち同士で温泉とか行く機会があるかも知れない。
だから、まぁ、見られること自体は許容しよう。
ただ、見られると言うことは見ると言うことでもあり、現役女子高生でかつ声優の卵でもある美少女・椿姫の裸を見てもいいのか? と結莉の中味である33歳おじさんが警鐘を鳴らす。
それって犯罪じゃないのか? と。
「……いや、考え過ぎか」
少なくともガワは結莉も女子高生。
つまり合法! ……だよな?
「あっ、あそこだねー」
と考えてる内に大浴場のある階へと到着してしまったので、結莉はもうこれ以上考えないことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
時間帯のせいか大浴場は割と人が居たので、椿姫に誘われて結莉たちは空いていた貸し切り風呂の方に入った。
直径2m弱の円形の浴槽が置かれている風呂。通称『個室風呂』、実質『カップル風呂』だ。
さて、そこに入って早々と言うか脱衣してる時点からずっと視線を感じる。
感じると言うか明らかにガン見されている。
椿姫の視線が結莉に刺さりまくってる。
「な、何? さすがに見すぎじゃない?」
浴槽に浸かりながら聞くと、椿姫が答えた。
「結莉ちゃんって、おっぱい大きい割には乳輪は普通だね」
「なっ……」
いきなり美少女JKから『乳輪』とか言うワードが出るとは予想してなかったぞ。
せいぜい「おっぱい大きいね」程度だと思ってたよ。
まぁ、でも実はそれはやり直して最初に風呂に入った時に俺も思ってた。
ほら、よく言うだろ?
風船に○を描いてふくらませると○も大きくなる。つまり巨乳は乳輪も大きいって。
でもあれって本当に正しい説なのか?
俺はその説にはなんか胡散臭さを感じるんだよなぁ。持ち出した一例で丸め込まれてる的な。
とは言え結莉の乳輪が大きくないと言うか普通サイズなのは、単に神様の特別サービスかも知れないしな。
実際に「特別におまえの乳輪は普通サイズにしてやろう」なんて言われたら爆笑する自信あるけど。
いやそもそも、だったらこんなデカ乳にされたこと自体がノーサンキューなんですけど?
バストサイズの分を身長に回して欲しかったんですけど?
「て言うか、私の乳をまじまじと見ないでよ……」
「見るだけじゃなくて、これから揉むつもりだけど」
「揉まないで!」
「私のも揉んでいいけど」
「……そろそろ本気で確認しておきたいんだけど、姫ちゃんは女の子が好きな人なの?」
前々から薄々と感じてはいたけど、そろそろきちんと確認しておく必要性に迫られたぞ。
「それは難しい問題だね」
いや、即否定してくれよ!
「今、私に好きな男性はいなけど、将来的には男性と結ばれると思う」
なるほど。そこは結莉とは違うな。
結莉としては将来的にも結莉が男と結ばれるビジョンは浮かばないけど、椿姫の場合は、単に現時点では付き合いたい男、自分に見合う男がまだいないってだけか。
「それはそれとして、目の前に大きいおっぱいがあったら揉んでみたくなるのは男女関係無いよ」
くっ、確かにその理屈はわからないでもない。わからないわけではないけど……。
「いや、姫ちゃんだって結構胸あるでしょ? 自分のを揉んでて?」
「私、Eだよ。結莉ちゃんはIカップでしょ?」
「えっ!? 言ったっけ?」
前に椿姫に聞かれたときには確かGカップだと答えたはずなのに。
ちなみに嘘を吐いたわけではなく、元々持ってたブラがGだったので聞かれた時は本当にGだと思ってただけで、ブラを新調する際に実はIカップだと判明しただけだ。
「ノリちゃんに聞いたよ。結莉ちゃんはGって言ってるけどIあるって」
あー、それかー……。
コスチューム作るので正確に測られたから典子が気づいていたのは納得がいくけど、よりによって椿姫に教えるなよ。
「だから結構違うと思うんだ。あ、モチロン私のも揉んでいいから」
くっ、こいつ撃たれる覚悟有りで撃とうとしてやがる……。しかし……。
「それでえっちな雰囲気になっちゃったらどうするのさ?」
最初は戯れのつもりだったのに……とか、エロ漫画とかではあるあるだろ?
「……アリかも」
「アリなの!?」
「結莉ちゃんとならいけそうな気がする」
「気がするのかー」
「そう言う結莉ちゃんはどうなの?」
「……」
んー、正直、百合には興味無いんだけどなー。
でもこれってなんか百合とは違う気もするな。
むしろこれを百合と言ってしまうと百合好きに激怒されそうな気すらする。
「……単にえっちなことをするだけならイケる気がする」
「でしょー?」
気がすると言うか、いつもは自慰でやってることを他人にされるとどれくらい違うのかはむしろ凄く興味があるぞ。
「じゃあ……しちゃう?」
そう言った椿姫の艶っぽい表情に、ごくりと唾を飲む。
しかし……。
「ダ、ダメだよ! 明日のことがあるし!」
「あっ、そっかー」
こらこら、肝心にことを忘れるんじゃない!
「じゃあ、とりあえず、それはおあずけだね」
そう言って椿姫は可愛らしく笑ったのだった。
……ん? 『それは』?
「うん、それはそれとして、おっぱいは揉ませてもらうから」
「ふえ?」
椿姫が襲いかかって来る気配を察した結莉は慌てて背中を向けてガードするも、背後から両脇腹を通って入って来た椿姫の手がそのまま下乳へと滑り込む。
こんなデカい乳を腕でガードするなど、どだい無理な話だった。
「あっ、こ、こらっ!」
抵抗は無意味と言うか、さすがに本気で抵抗するつもりまでは無かったので、ゆるんだ腕のガードを突破した椿姫の手が結莉のデカ乳をガッツリと掴んだ。
「うわ、すっごっ♪」
そう言って結莉の乳を揉みしだく椿姫。
「も、もうっ!」
勿論、力任せにではなく優しく、しかし、指が乳に埋もれるほどしっかりと揉まれている。
この辺、女同士だと加減は承知してるってことだよな。
やり直し前に彼女と初めてエッチした時、がっついて強く乳を揉んでしまって「痛い」と窘められた失敗を思い出す。
ちなみに椿姫は結莉の背後から密着してるので、椿姫のそこそこある乳が俺の背中に押しつけられていた。
高校生の頃の俺だったら即勃ち案件だ。
「うわ、どうしよこれ、すごくイイ。ずっと揉んでたい」
「ダ、ダメに決まってるでしょ……」
と言うか、これちょっとマズいかも。
乳を揉まれること自体は実際のところ感じるとかは無くて、ただ「あぁ、揉まれてるなぁ」ってくらいだ。
あれは多分、恋愛感情ありきでの「感じる」なんだと思う。
ただ、さすがに揉まれ続けていると、揉んでる掌で乳首が擦られて固くなり始めてきたぞ。
このままだと、こっちが我慢できなくなってしまうかも知れない。
部屋はツインなので後でこっそり自慰することもできない。これでは生殺しになってしまう。
「は、はい! もうおしまいっ!」
結莉は強引に体をぐるっと回して椿姫の腕から逃れた。
椿姫の方も強引には迫って来てなかったと言うのも大きい。
「しょーがないなー。今回はこれくらいで勘弁してあげるよ」
「いや、次回とか無いから」
……多分。
「じゃあ私のおっぱい揉む?」
そこで椿姫は胸を張って言った。
巨乳でこそないけど形の良い美乳がぷるんと揺れる。
「それでおあいこにしようって魂胆は正直どうかと思うな」
「え? じゃあ揉まない?」
「揉むけど」
「揉むんかーい」
ボケの椿姫に逆に突っ込まれてしまったが、椿姫ほどの美少女の乳とか今後二度と揉む機会は無いかも知れないので、ここは逃すべきではないと結莉の中の俺が囁いたのだ。
うん、ダメだな、このおっさん。
と言うことで、椿姫は「さぁ、どうぞ」とばかりに乳を向けているので、結莉はそれを両手でそれぞれ優しく包むように触れる。
そりゃ結莉のに比べたら半分以下ってだけで結構あるから、男の掌ならまだしも女の掌だと包みきれない。
「あっ、正面から揉まれると、ちょっと恥ずかしいかも」
いや椿姫がそう差し出したんやないかと内心ツッコミつつ無視して続行。
乳に当てた掌をそのまま軽く回しつつ下から持ち上げるように揉む。
うむ、実にイイ乳だ。結莉もこれくらいが良かったと痛感するほどに。
乳自体よりも肌のつやつやもちもち感が特に素晴らしい。
「んーっ、やっぱりコレだよ。私みたいに大味なのと違って断然イイ」
そうそう、「大は小を兼ねる」にも限度と言うものがあって、正に「過ぎたるは及ばざるがごとし」だ。
「結莉ちゃん、またおじさん臭いこと言ってる……」
すまん。
今の結莉は臭いどころか完全に中味おじさんモードになってるんだ。
「それに、なんか揉み方がいやらしい……」
繰り返すが今の結莉は普段の頑張って『桜庭結莉』であろうとしてる結莉と違って、完全に中味のおじさんが操作してるので仕方ない。
とは言え、ここらが潮時か。
「うん、堪能した。ありがと」
そう言って結莉は椿姫の乳から手を離した。
「え……もう、いいの?」
と言うか、これ以上はヤバい気がする。
現に椿姫の目がとろんと潤み始めてきているし、漏れ出てる吐息も色っぽくなっていた。
それに結莉としてもそろそろ揉みしだきたい衝動を抑えられなくなってしまう。
互いに揉んで揉まれてわかったんだけど、本当に椿姫とならイクところまでイケてしまうかも知れない。
「うん、のぼせちゃうし、もう上がろ」
そう言って結莉は椿姫の手を取って、大浴場を後にしたのだった。




