第5話-1
椿姫の悩みを聞いてから数日間は特にこれと言うことも無かったので、ざっとかいつまんで語らせてもらう。
翌日の水曜日。
生理は四日目で、かなり軽くなってきたのは終わりかけてるのか保健医から貰った薬が合ってたのか判断が難しいところだけど、とにかく楽になったのは良いことだ。
乳の張りも収まって普通に戻ったと思う。
放課後、珍しく椿姫が同好会に行こうと言ってきて、結莉の体調も戻りつつあったので顔を出すと、椿姫は早速、航や部長に、とあるソシャゲのことを色々聞き始めた。
なんでも昨夜から始めたんだそうだ。
これはもしかして仕事と関係あるのか? と思いつつも結莉は黙っていた。
これで水曜日は終わり。
続いての木曜日。
これもう生理は終わったんじゃないか? って感じだったけど念のため装備はして登校。
体育の授業は、もし途中で具合悪くなったら抜けると言う条件で出席したけど、問題無かった。
放課後は昨日に続いて椿姫が航たちとソシャゲをやってて、結莉は若干の疎外感。
瀬戸先輩が気を遣ってくれて二人でコンソールゲームを遊んでた。
帰宅すると、例の下着専門店から結莉のブラが届いた連絡があったと母親から聞かされた。明日用事のついでに母親が受け取りに言ってくれるそうだ。
これにて木曜日も終わり。
そして金曜日。
完全に生理は終わって100%通常稼働の結莉復活! したけど、だからってバトル物じゃないんだから特に何かあるわけじゃ無い。
普通に高校生活を送って放課後はまた椿姫と同好会に行って……と、そこでイベントフラグが発生した。
「明日、辻蔵くんの家に遊びに行くことになったんだけど、君たちもどうかな?」
「えっ……」
結莉は思わず絶句した。
高校の知り合いが航の家に遊びに行くだと……?
それは前回には無かった展開だぞ……(正確には中学の時のオタ友が遊びに来たことならあった)
「私はレッスンで長野にいないので、すみませんがパスです」
結莉が絶句していると先に椿姫が答えた。
椿姫の事情は部長としても折り込み済みだっただろうけど、それでもハブるわけにはいかないので聞いたのだろう。
「あっ、はい、私は大丈夫です」
なんとか平静を取り戻しつつ答えた結莉。
「では僕たち三人は駅で待ち合わせて行こうか」
「いえ、私は直に行った方が近いと思うので」
「ん? 桜庭くんは辻蔵くんの家を知っているのかい?」
あああああぁぁぁっ!! ヤバぃぃぃっ!! ついうっかりぃぃぃ!!
「えっ、あっ、帰りのバスが一緒だった時に、だ、大体の方角くらいはっ。だから辻蔵くん、正確な住所を教えてね!」
実際、駅まで出るのは椿姫とも航とも一緒で、そこから各々、更に別のバスに乗ったり自転車に乗ったりで別れて帰ってたのだ。
「なるほど。では辻蔵くん、グループチャットに住所を投げてくれたまえ」
結莉は慌てて誤魔化したけど、これ本当に誤魔化せたのか?
幸い椿姫は結莉たちの会話よりソシャゲの方に夢中になってたのか、つっこんでは来なかった。
「あ、はい」
早速、航がチャットに住所を貼ると、即マップに反映される。
「そう言うことで、明日の13時に辻蔵くんの家に集合だ。私と瀬戸くんは駅で待ち合わせて行くから、桜庭くんは直に行くということで」
「わかりました」
結莉は内心汗ダラダラでそう答えるのが精一杯だった。
◇ ◇ ◇ ◇
その日の夜。
実は敢えて語らないようにしていたのだが、今日は結莉の体に異変が起きていた。
正確に言語化するのはなかなか難しいのだが、雑に言うと「なんだかムラムラしてる」状態だったのだ。
エロ漫画とかでよくある媚薬を盛られたのとかとは違うぞ?
そこまでではないんだけど『なんかエロい気分になってる気がする』と自覚できる程度で。
調べたら生理の前後で人によっては性欲が高まることがあるそうで、それなのかも知れない。
つまりは普通に自然なことなので、これは受け入れるしかない。
さて、ここで前の人生の俺を振り返ってみると、半月自宅に帰れなかった末に逝って、やり直し転生した。
つまり少なくとも半月は『処理』をしてなかったわけで、それにやり直し分を+すること一週間。
つまりつまり三週間以上は『処理』をしていないと言うことであり、これは若者どころかおっさんで考えてもマズいのではないか?
つまりつまりつまり、これはごく自然な流れであって、要するに何が言いたいかと言うと──
「結莉はこれから性的処理をする!」
風呂上がりにタンクトップ&ショートパンツ姿で、ぐっと力んで宣言した結莉。
本当は風呂に入る前にしときたかったところなんだが、その余裕は無かったのでさすがに無理だった。それは仕方ない。
でもどうせ明日は土曜日。
航の家に行く予定も午後。
なので万が一に何かあってもどうにかなるだろう。
もうやるなら今しか無い。やるっきゃ無い。俺はやるぜ。
と言うところで一つ問題が。
実際、どうやるのかと。
さすがにこの結莉は処女だろうし、まだ15歳なので道具など使えないし、そもそも持ってもいない。
それにエロ漫画だのAVだので見る行為を鵜呑みにはできない。あれはあくまでもフィクションだ。
そこで俺は思い出した。
彼女と付き合ってた頃、俺は飲み過ぎたせいか息子がふにゃふにゃで使い物にならなかったのに彼女はやたらとシたがったので、俺は頑張って愛撫だけで彼女を満足させたことがあった。
そう、それだよ!
つまり俺が結莉を愛撫すればいいわけだ。
唯一の難点は自分にキスはしようが無いと言うことだけだろう。
いや、具体的に想像するとおっさんに食われる女子高生と言う図になってしまい非常にマズいので想像しないでいただきたい。
とにかく方針としてはそう言うことだ。
「よし」
結莉は部屋の灯りを常夜灯にしてベッドに入り、仰向けになる。
そしてゆっくりと優しく結莉の顔を撫でる。
耳も、首も、肩甲骨も撫でる。
敢えて胸は避けてお腹も撫でる。
「……微妙だ」
なんか予想と違って、全然上がって来ない。
やはりキスできないのは大きいのか?
しかし指を唇に見立てて結莉の唇を撫でてもピンと来ない。
「……仕方ないな」
結莉は上半身を起こしてベッドの縁の座る体勢になる。
仰向けだと乳が広がっててイマイチ揉みにくいからだ。
そう、こうなったらもうこのデカ乳に賭けるしか無い。
結莉は下から持ち上げるように乳を揉み始めた。
「……なんだこれ」
タンクトップの上からなのがいけないのかと思い、めくり上げて再度揉んでみる。
「なんだこれ」
おいおい、女性が乳を揉まれただけで感じるなんて妄想だと自らの体で実証してしまったぞ?
ただこの柔らかくて重い物を揉んでいると言う感想しかわかず、揉まれてる側の視点でも「あぁ、揉まれてるなぁ」と言う感情しかわかない。
ホントなんだこれ。
このデカ乳は男を喜ばせるの特化で、持ち主には何も得が無いのかっ!?
いや実際のセックスなら多分違うんだろうけど、少なくとも自慰には役立たんぞこれっ!?
「んもーっ!」
ちょっとヤケになって乱暴に乳を揺すった時にそれは起こった。
「っ!」
たまたま小指が乳首をかすめた瞬間の感覚。
これはまさか……。
「っ、あっ、これっ」
試しに人差し指の腹で乳首を撫で、こすり、弾くと、みるみる乳首がキュウッと立っていく。
「こっ、これだっ!」
そうだよ、最初から性感帯を責めればよかったんだよ。なんて単純な話だ。
ちょっとカッコつけてムード的な方から入ろうとした俺が馬鹿だった。
とにかく火は点いた。
結莉は、その火をじわじわと強めていく。
そうして火は炎へと変わり、結莉は手をゆっくりと股間へ移動していった……。
◇ ◇ ◇ ◇
頭が真っ白になるほど夢中になり過ぎたせいで肝心なところを端折ってしまい申し訳ないが、気づいたら正に精根尽き果ててベッドにうつ伏せに倒れていた結莉。
その表情は、達成感と、そして疲れとで、変な恍惚の笑みを浮かべていた。
途中でショートパンツが邪魔になって脱ぎ捨てたのは良い判断だったけど、今の結莉の姿、下半身だけ裸の変態状態だ。
あ、これって女体化初日にあった光景だな。
「ま……まぁまぁ、よかったんじゃないかな」
誰に言うでもなく、そう漏らす。
ただ、女の方が男より100倍感じるってやつ、あれはちょっと大袈裟かもな。
さすがにそこまでじゃないと言うか、そんなには変わらなかったぞ?
いや、自慰だけで語るのは早計かも知れないけどさ。
「とにかく……もう、寝よう……」
結莉は一旦ふらふらと起き上がって、ティッシュで股間を拭き、ショートパンツの濡れてしまった所もちょっと拭いてから穿いて、ベッドに入った。
しかし……。
「……ヤバい。まだムラムラする。むしろさっきよりムラムラしてる。この結莉スケベ過ぎるっ!」
早めにベッドに入ったので時刻はまだ23時。
ほ、ほら、これはアレだよ。
レベルが低い内は雑魚敵を倒すだけでもすぐレベルが上がって楽しいでしょ? あれみたいなもので、つまり……。
「しょ、しょうがないなー」
そうして結莉は2ラウンド目へと突入して行った。
ちなみに、結局その夜結莉が眠りについたのは1時過ぎだったことだけを伝えておく。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝。
憑きものでも落ちたかのような気分爽快な寝起き。
やはり適度な運動が良質な睡眠に繋がるんだな。
とか、きれいごとで誤魔化すなよ俺!
まったく、いいトシして何やってんだよ俺!
はい、さすがにやり過ぎたと反省してます。
いやー、女体は女体で良いものですね!
これで生理さえ無ければなぁ……。
さてそんなわけで、朝どころか時刻はもう12時を回り、いよいよ航の家に行く時間だ。
実家には元々いずれ行ってみるつもりではいたんだけど、あくまで外から眺める程度のつもりだった。
だって今の俺は結莉であって航ではないから、それは仕方ない。
それがいきなり家に上がれるチャンスがこんなに早く来ようとは奇跡か。
勿論、俺がいた17年後も両親は健在だったけど、ここ最近は盆も正月も無い生活で全然会えてなかったから懐かしいな……。
会って泣いちゃったらどうしよう。今から気をつけとかないと。
本当は親より先に逝ってしまった親不孝を謝りたいところなんだけど、そこは航の人生をこれから少しでも良い方向に改変するってことで許して欲しい。
「よし!」
とりあえずお出かけとなればそれなりに気合を入れた服装にするものであり、結莉は、上は青いタートルネックセーター。下はハイウエストで膝上丈のプリーツが入った黒いキュロットパンツで決めてみた。
ちなみに届いたばかりのIカップブラも初装備だ。
どや!
……まぁ、無難なところだな。
でも今さらながらに気づいたんだけど、結莉ってフトモモも割とむっちりだな。どこまでゲームキャラ体型するつもりなんだよ……。
なので当初は長めのスカートを穿いてみたんだけど、なんか微妙に似合わなかった。
結莉にガーリーなのはあまり向いてないのかも知れない。
それと長めのスカートをやめたのは、航の家までは徒歩だと20分くらいかかりそうなので自転車で行こうと思ったってのもある。
おっさんな俺は自転車に乗るどころか持ってすらいなかったけど、高校生と言えば自転車だよなぁ。懐かしい。
「じゃあ、行って来るね」
結莉は母親にそう言って小さいショルダーバッグをたすき掛け、いわゆるパイスラして、玄関を後にした。
 




