高校1年生編 1章 第10話 石像になった少年
次回は4月25日投稿予定です。
人間が石になると言う事件が起きた現場は集合ポイントのすぐそばにあった。
集合ポイントが工事現場の資材置き場にあたる場所で、現場はその横にある建物を建てる箇所だった。
ただし工事が中止にいるためか、今は何も無いは更地なっている。かなりの広さだ。
その広い更地に一体の石像が建っており、その周りに何人かの人間が立っている。星辰達はその石像に向かって歩いて近づいて行った。
「伊丹刑事、芹沢刑事」
石像に近づき、その周りに人間の顔が見える位置までくると星辰は、そのうちの二人に声をかけた。
「おう、星辰の坊主か」
星辰に話しかけられた二人のうち、年嵩の男が星辰に返事をした。歳の頃は40歳前後で強面の刑事だ。
「伊丹先輩。相変わらず坊主はやばく無いですか? 紅鏡家のお坊ちゃんなんだし」
もう一人の芹沢と呼ばれた刑事は歳は三十前後で、刑事と言うよりお調子者といった風の男だ。
この二人の刑事は銀河連邦警察ではなく、警視庁の刑事だ。そのため格好も普通のスーツである。
「坊主は坊主だろうが。なぁ?」
「僕は構いませんが」
星辰はそう言うと少し微笑んだ。
「だってよ」
星辰の答えを聞いた伊丹は芹沢にいささか得意げな顔を向けた。
「星辰君が器大きくて良かったよ。やれやれ」
芹沢刑事は、それを少しうんざりした様な顔をした。
二人とも星辰達が銀河連邦警察である事を知っており、記憶は失ってない。
「悪いが、話を進めて頂きたいのだが……」
ルベルが焦れた様に話に割って入ってくる。
「悪いな。お前らに見て欲しいのはこいつだよ」
伊丹はそう言って顎を石像に向かってしゃくった。
星辰たち四人が伊丹がしゃくった石像に近づく。
「これは、何というか……」
シルウァーが驚きの声をあげた。その石像はおよそ石像とは思えない精巧さだ。
この石像が元は人間だったと言われると納得できる、奇妙な説得力がある。
「俺たちも、これを見るまでは半信半疑だった」
伊丹が今でも信じられないと言わんばかりに言った。
「まあ、二年前の大騒動が無ければ、これを見ても信じなかったかも知れないけどさ。僕たちじゃ手に負えないので、君たちを呼んだのさ」
「いささか不本意だがな」
伊丹は吐き捨てる様に呟いた。どうやら銀河連邦警察の手を借りるのは本来は嫌らしい。
「ファミリアの能力だね。これは……」
ベロニカが石像を観察しながら言った。
「今更だけど、人間を石に出来る能力があるファミリアがあるなんて、まるで魔法だね」
「進んだ文明は、もはや魔法と言っても良いかも知れんな」
星辰の言葉に答える様に、シルウァーが口を開いた。
「この石にされた被害者は相良大地。15歳。小さいけど、暴走族の頭だね。二日前に、ここで対立している別の暴走族のリーダーとタイマンしようとして、何者かに石にされる……」
「突然、石にされたんですか?」
芹沢の説明に星辰は質問を挟んだ。
「詳しい状況はこいつらに聞いてくれ」
伊丹が石像の裏にいた少年たちを指さした。人数は、こちらも二人だ。
一昔前のヤンキーと言った風情だ。二人とも星辰たち三人より、巨大なサイボーグであるシルウァーに驚いている様だ。
「彼らは?」
「この石にされた相良の族のメンバーだよ」
星辰が芹沢に聞くと彼は少年たちが何者なのか答えてくれた。
「なにがあったのか聞いても大丈夫かな?」
「ああ……」
星辰に質問された二人いる少年のうち、一人が口を開いた。何かに怯えている様だ。自分の所属する暴走族のリーダーが石にされたのだから、ある意味怯えるのも無理は無かった。
「あの日、大地の兄貴は俺たちと対立する族の頭とタイマンするはずだった」
少年は自分を落ち着かせれる様にゆっくりと話し始めた。
「大地の兄貴が勝ったら俺たちにもう手は出してこない。兄貴が勝ったら俺たちが、あいつらの傘下に入る事がタイマン前に決めたルールだった」
「なんで、そんなルールになったんだ? 勝った方が負けた方を傘下にするでいいんじゃ無いか?」
ヤンキー少年の話の途中でルベルが割り込んだ。
「兄貴はあいつらが嫌いだったからな、俺たちはあいつらとつるむ気は無かったんだ。逆にあいつらが欲しかったのは、うちのチームじゃねえ。大地の兄貴さ」
もう一人のヤンキーがルベルの質問に答えた。
「どう言う事だ?」
「大地の兄貴は、ここら辺で一番喧嘩が強いんだ。だから……」
「そいつを下につける事が出来れば、箔がつくと言うことか……。しかし、こいつそんなに強いのか? 確かに図体はでかいがな」
「確かにこの子、身長は大きいね。星辰やルベルと同じくらいかな?」
ベロニカが、そう言いながら石像を見上げた。
「デカくて腕っぷしが強いだけじゃねえ。兄貴は倒れねえんだ」
「倒れない?」
ヤンキーの少年の言葉に星辰が反応する。
「ああ、兄貴はどんなに殴られても、いや素手だけじゃない、バットや鉄パイプで殴られても倒れた事がねえ」
「どんな攻撃をくらっても怯まず相手に向かっていくんだ。そうそう、怪我だってすぐに治っちまう」
大地の事を語る少年たちは、まるで自分の事の様に得意げな顔した。
(打たれ強い上に怪我の治りが早い……)
(こいつ、ミュータントか? いや、まさかな……)
星辰とルベルは相良大地の打たれ強さが少し気になり始めていた。地球人の中にも、突然変異の人間がいる。
そう言ったミュータントは打たれ強かったり、怪我の治りが常人より早い者がいる。
もし仮に彼がミュータントだったら、暴走族やヤンキーなどは敵ではないだろう。
「ねえ、この子が強いのは分かったからさ。話進めてよ」
ベロニカは話がそれた事に少し焦れた様だ。
「そうだな。話の腰を折ってすまない。話を進めてくれ」
「あ、ああ、分かったよ」
ルベルに話を進める様に促され、少年たちは再度大地が石像にされた時の話を再開した。




