高校1年生編 1章 第5話 ベロニカ
次回は3月21日投稿予定です。
聖光高校の屋上は開放されており生徒も出入り自由で、屋上で昼休みに食事をとる生徒もいる。
ただ意外にも、その数は少ない。さらに今日は星辰しか人影がない。
屋上のフェンスの前にいくつかのベンチが設置されており星辰は、その一つに腰掛けている。
「……」
星辰はここで食事を終えると考え事をするのが常であった。
話しかければ誰にでも気さくに対応してくれる少年だが、この時の星辰に話かける者はいない。この考え事をしている時の星辰には影があり、話しかけづらいのだ。
だが例外もいる。
「あ、やっぱり、ここだった。星辰」
考え事をしていた星辰を呼んだのは、この高校の制服を着た女生徒だった。金髪と言うより黄色と言った方がしっくりくる髪色をしている。髪型はツインテールで、身長は170センチ程度だろうか。スタイルも良く、何より美少女と言っても良い顔立ちをしている。
「ベロニカ」
話しかけられた星辰は声をかけてきた少女を見た。
「ねえねえ。いつも言ってるけどさー。こんなところでぼっち飯してないで私もと一緒に昼ご飯食べようよ〜。今日はまだ食べて無いからさ〜」
そう言いながらベロニカと呼ばれた少女は星辰の隣に腰掛けてきた。
「ごめん。僕はもう食べちゃって……」
「ええ〜。じゃあ私がここで食べるよ」
「え、でも、いつも見たい友達と食べれば……」
「たまには星辰と食べたい。良いでしょ? それとも私のこと嫌い?」
「え、あ、いや、そんな事無いよ」
「じゃあ良いよね。いただきまーす」
ベロニカは持っている弁当箱の蓋を開けると中身を食べ始めた。
(この娘苦手だ……。大事な仲間なんだけど)
このグイグイくる少女に、流石の星辰も戸惑っていた。
「星辰、ちょっと聞いても良いかな?」
ベロニカは食事しながら星辰に質問した。
「え、うん。何かな?」
「なんで家が金持ちなのに、ここでぼっち飯食べてるの? ご飯だって学食のパンやおにぎりじゃ無くて、もっと良い物食べれるでしょ? お屋敷のメイドに弁当作ってもらうとかさ」
「え? 別にこれと言って特に理由は無いけど? ご飯を作ってもらうのも、なんだか申し訳ないし……」
「ふーん? じゃあ質問変えようか? いつもさ何を考えてるの?」
「えっと、それは……」
「当ててあげよっか?」
話を濁そうとする星辰を放ってベロニカは話を進めた。
「……アクイラって女の事を考えてるとか?」
「!」
「図星か。星辰は嘘下手だもんね」
「……」
星辰は少し顔を俯かせた。
「みんな心配してるよ。ニーナもルベルもさ」
「ルベルも?」
「そう。『心配なんざしてない』って言ってたけどさ。あれは心配してる顔だよ。私には分かるんだよ」
「そうか……。みんなに心配かけてたのか……」
「私もだよ。星辰」
ベロニカはそう言うと自分の身体を星辰に近づけてきた。
「あ、ありがとう」
星辰はベロニカが近づくと戸惑った。照れると言うより、やはり苦手なのだ。
「あと、ついでに聞くけどさ」
ベロニカはそう言って、今度は星辰の顔に自分の顔を近づけた。
「え、まだ何か?」
「前から聞きたかったけど、アクイラって女、星辰の彼女? 恋人?」
「ええっ! ち、違うよ。大切な仲間だけど……」
「じゃあさ。私を彼女にしてよ」
「えええ! だってそれは……」
「一回振られたくらいで私は諦めないよ。それにアクイラは行方不明なんだろ? だったら私と……」
そう言ってベロニカはさらに顔を星辰の顔に近づけた。
「ちょ、あ、そうだ。教室に戻らなきゃ。ベロニカ。ごめん。僕用事があったんだ」
星辰は咄嗟立ち上がり、そう言って屋上から校舎に入っていった。
(ふう。あの娘は本当に苦手だよ)
星辰はそう考えながら階段を駆ける様に降りていった。
「惜しい。でも、まあ、良いか。チャンスはいくらでもあるし。今まで私が落とせなかった男の子はいないんだから」
ベロニカはそう言うと妖艶な笑みを浮かべた。




