6章 第36話 ラートルの正体
次回は1月17日投稿予定です
「う、ぐう。よ、良く私が分かったわね?」
ラートルはハロスに首を絞められ苦悶の表情を浮かべている。
「僕を誰だと思ってる? そもそも君もターゲットの一人だったんだよ。クスカを殺したら忘れそうになったけどね。スパイ君」
「スパイ?」
スパイとの言葉を聞いたニーナが怪訝な顔をした。
「エバンさん。いや月影先生が言っていた。ラートルは銀河連邦警察がアルゴルに潜入させた捜査官では無いかと」
ニーナの疑問にルベルが答えた。
「ご名答。エバン君は勘もいい様だ。仰る通り、このラートル君は銀河連邦警察がクスカのもとに潜入させた捜査官さ。いわゆるスパイだね」
「そう、バレてしまったのね……」
ラートルはそう言うとフフと少し笑った。
「クスカやドロースにはバレなかった様だね。そこも奴は爪が甘い。いや、君がなかなかの演技力だったと言うことかな。随分と悪いこともやっていたみたいだし。まあ、新しいボスには、バレたけどね」
「でも、そいつは姉さまが倒したはずじゃ」
ウルラも疑問を口にした。
「こいつのファミリアは影を操る能力。長年使って、こいつ自身にも同じ影を操る能力が少しだけ備わってるのさ。それを使って逃げたんだろう。文字通り影武者だ」
「……」
ラートルは不敵な笑みを浮かべている。
「その笑いは少し不快かな……。まあ、今殺すから、良いけどね」
ハロスはそう言うと空いている手をラートルの腹に刺した。あっさりと。
「グハッ」
「ふっ」
ハロスはラートルの腹を貫いた腕を引き抜いた。
「そら」
そして、そのラートルをルベル達の前に投げ捨てた。
「何を……?」
「そいつは見た通りまだ死んではいない。だが、流石にもうすぐ死ぬ。その間に好きな事を聞いてみなよ」
困惑するルベル達に答える様にハロスは言った。
「なぜ、そんな事をする?」
「僕は気まぐれだからね。特に意味は無い。強いて言えば、その方が面白そうだからかな。命令はクスカとそいつを殺す事だけ。その他は知った事じゃあないよ。じゃ、今度こそバイバイ」
ハロスはそう言うと子供の様に手をふった。そして、振り返リ歩き始めた。
ルベル達は、その背中を呆然とした様に見つめている。
「フフ。へたったわね……。あの化け物相手じゃしょうがないか……」
ラートルは笑っている。傷は深く生きているのも不思議だった。しかし、このまま放っておけば死ぬだろう。ただラートルは自分の死ですら恐れてない様だった。
「おい」
「フフ。何かしらルベル……君。ヒーリングで回復してくれるの?」
「サイコパワーがもう無い」
「そうだったわね。残念」
「あったとしてもごめんだね」
「あら、そう。ますます残念ね」
「……お前は星辰を生み出す実験に参加していたのか?」
ある程度の話の後、ルベルは本題に入った。
「なぜそう思うの? データベースには私の情報はないはず」
「月影先生じゃあないが、単なる勘だ。まあ、お前の星辰に対する執着心が、微かな根拠だが」
「フフフ。正解よ……。ヤマカンも馬鹿にしたもんじゃあないわね。フフ」
「やはり」
「そう。私はアルゴルのクスカのもとにスパイとして潜り込むまでは星辰君を生み出す実験に参加していたのよ。星辰君がティグリス達と一緒にいなくなったと知って随分ガッカリしたわ。彼がどんな風に成長するのか観察出来ないもの」
「……」
ルベル達はラートルの言葉を黙って聞いている。
「でも、あのクスカがコルムちゃんを捕まえて、星辰君を探し出した時は、流石に驚いたわ。砂漠に落ちた宝石を見つけ出す様な物よ。普段、運命とか信じない私もこの時は運命じみたものを感じたわ。大した能力よ」
ラートルはそう言ってコルムを見た。
「ふん。コルムを見るな」
だがウルラがコルムの前に立ち視界を遮った。
「フフ。嫌われたものね……。別に良いけど」
「俺たちを……。いや、星辰をテーゲ星に飛ばしたのもお前なりの実験や観察の一種だったと言う訳か」
「まあ、そう受け取ってもらっても結構よ」
「ちっ。俺はおまけだったと言う事か。舐めやがって」
「成り行き状ね。まあ、怒らないで。ただアクイラちゃんは少しだけ違うの。まあ、女の子なら誰でも良かったんだけど」
「どう言う事だ?」
ウルラがラートルを睨みつける。
「テーゲ星に飛ばす時に、星辰君とアクイラちゃんの二人に暗示をかけたのよ。催眠術より強力なやつをね」
「暗示? それって一体?」
ニーナが口を挟む。
「お姉ちゃんが、あの人を好きになる暗示でしょ?」
「フフ。流石ね。コルムちゃんの言った通りよ。星辰君とアクイラちゃんに互いに互いを好きになる暗示をかけたのよ。アクイラちゃんには効果覿面だったけど、星辰君には今のところ効果が出ていないわね」
「な、なんでそんな事を?」
「なんでって……。星辰君は他人に恋することが出来ないからよ……」
ニーナの質問にラートルは少し苦しそうに答えた。




