6章 第32話 解放された能力
次回は12月19日投稿予定です。
「ウルラお姉ちゃん? 本当にお姉ちゃんなの?」
「そうだ。私だよ。コルム」
ウルラは涙目になりながらコルムの顔を見て言った。
「お姉ちゃん……。本当にお姉ちゃんなんだね」
姉のウルラが本物だと安心したのか、今度はコルムがウルラに抱きつく。
「コルム……」
ウルラもまた、コルムを強く抱きしめた。
「本当にコルムちゃんを呼び寄せるなんて……」
「まるで奇跡だな……。お陰で俺たちのサイコパワーはスッカラカンだが……」
ニーナとルベルは、よろけながら地面に膝をつき、そして座った。
「バ、バカな……。おのれ、小僧!」
その様子を見たクスカは星辰に敵意を向けた。
「あいつ、獅子の咆哮の効力が消えてるのか?」
「僕のサイコパワーも消費したから……。でも、ありがとう二人とも。そこで休んでいて」
星辰は二人を労うと歩き始めた。
「星辰君どうするの?」
「決まってる。あいつを逮捕する」
ニーナの質問に星辰は少しだけ厳しい顔をした。
「だが、お前もサイコパワーを失っているんだろう?」
「まだ、戦えるくらいはあるよ。それよりも二人はウルラとコルムちゃんを守ってあげて」
「ああ、分かった……」
「ルベル君。でも……」
「今の我々では足手纏いだ。黙ってみているしかない」
ルベルの言葉にニーナは黙って頷いた。
「お姉ちゃん。あの人は?」
星辰を見たコルムがウルラに聞いた。
「あ、ああ。あいつがお前を、超能力でお前を地球に呼び寄せたんだ」
「あの人。体の大きさは違うけど、私の夢に出てきたアクイラお姉ちゃんと一緒にいた……」
(やはり、そうか。でも、今の星辰あの竜となっているクスカは……)
「お姉ちゃん。大丈夫。あの人は負けない」
ウルラの不安を感じたのか、確信をもった声でコルムはウルラに話かけた。
「コルム……」
「ほんの少しだけど夢であの人が戦っているのを見たよ。そう。ものすごく強かった。あんな奴じゃ、相手にならないよ」
「そうか。そうだな」
ウルラはそう言ってを再度抱き寄せた。
(コルムは超能力者だ。見た夢は多分、ただの夢じゃない。じゃないが……)
ウルラは不安が拭えなかった。
星辰はゆっくりと歩いていき、クスカの目の前で歩みを止めた。
「よくも私の道具を……」
クスカは怒りの目をぐるりと星辰に向けてきた。
「お前にとって、コルムちゃんは道具か?」
「そうだ」
「お前自身が、銀河警察に物扱いされていたのに?」
「だから、なんだ? あんな小娘、道具扱いにしてなんだと言うんだ? 大事にしてやっていたんだ。感謝して欲しいくらいだよ」
「あいつ……」
ウルラは鬼の形相でクスカを睨む、
「もういい……」
星辰はそう言って、右手を広げて顔の前まで突き出した。
「なんだ? サイコキネシスか? 私にはそれは効かないと……!?」
次の瞬間、クスカは吹き飛び先程とは別の建物にぶつかった。クスカが当たった建物が瓦礫と
化した。
「おのれ、このガキがぁ!」
瓦礫からクスカが飛び出し、そのまま星辰へと襲いかかった。
(速い!)
ルベルが目を見張る速さでクスカは星辰に近づいていき星辰を殴りつけた。
今度は星辰が吹き飛ばされ後ろにあった建物に激突した。
「バカめが……。大人しくしていれば楽に死ねたものを。あの衝撃では死んでいなくても、無事ではあるまい。ハッハッハッ」
星辰の様子を想像して高笑いするクスカ。
「おい」
「なんだ。な、何!」
クスカは後ろから不意に声をかけられ振り返ると一人の少年が立っていた。星辰である。
(こいつ? なぜ? いや、怪我をヒーリングで治して、テレポートしてきただけ。冷静になればなんてことはない)
一瞬の動揺をクスカは静め冷静になった。
「驚かせおって……。だったら捻り潰してくれる!」
クスカはそう言って星辰の腹部の辺りを殴り、そのまま地面へと叩きつけた。
アスファルトの道路が、その威力で凹みひび割れた。
「これで終わりと思うな!」
その怪物はそう言うと星辰を両の手で何度も殴りつけた。その衝撃で周辺が小さな地震が起きた様に揺れる。
「星辰君!」
ニーナが心配した様に星辰の名を呼ぶ。
「ニーナ心配するな」
「ルベル君? でも……」
「大丈夫だ。効いちゃいない」
「はあッ。はあッ。はあッ」
星辰を殴っているはずのクスカは肩で息をし始めいる。
「もういいのか」
星辰はスッと立ち上がる。
「あ、ああ……。バカな」
クスカは動揺して数歩後ずさった。
「終わったなら、今度は僕から行くぞ」
星辰はそう言うとクスカの顔を右手で殴りつけた。
「あ、アグ!?」
その威力にクスカはよろめきその場に崩れた。
「紅鏡星辰……。なんて奴だ。私たちはあんな奴を捕まえようとしてたのか……」
その星辰の力にウルラは震え始めた。
「アクイラの怪我が星辰君を覚醒させたの?」
「少し違うだろうな。多分、封印されていた本来の能力が解放されたんだ」
ニーナの疑問にルベルが推測ではあるが答えた。
「確か星辰君のお母さんは遺伝子を操作して、星辰君の能力を封印した……」
「そうだ。父さんや月影さんに理由を聞いて、それなりに納得していた。ただ、そこまでやる必要はあるのかとも思っていたが……。だが、あいつのサイコキネシスを見て少し腑に落ちた。仮に、あのレベルのサイコキネシスを幼児の時に発動させていたら、地球人なら大勢死ぬ」
「だから星辰くんのお母さんは、星辰君の能力を封印した」
「そうだ。子供の時に無邪気に能力を発動させるだけで大惨事だ。だが、その能力も解放された」
「星辰君の本来の力……」
「こ、こんなことが、この私が……」
クスカ地べたに手をついて屈辱に震えていた。
星辰の力は彼を圧倒していた。




